勇者対策会議
『勇者対策会議』
カツンと、指し棒でそんな太字が映るホワイトボードを魔王が叩く。
「勇者がここまで迫ってるわ」
凛とした声で魔王が言った。
銀糸のように繊細なセミロングの髪。
鋭く先が尖った耳。
赤い瞳。紫の唇。
ふくよかな動きに合わせ揺れる胸。
グラビアアイドルのように魅惑的なボディーラインを、露出度の高い服装で包み込み、血で染めたような深紅のマントを羽織る。
正確には魔王というには語弊がある性別だが、この際細かいことを気にしてはしょうがない。
魔王女、魔姫と呼ぶのも語感が悪い。
そんな少女と呼んで差し支えない顔立ちの魔王と、その部下である四天王達が集まるは、長方形の机が中心に置かれた会議室のような部屋である。
四天王達はそれぞれパイプ椅子に座り、魔王はホワイトボード前に立っている。
「ようやくEDも間近ですねー。ここまで何時間くらい掛かってます?」
“風”の四天王。涼風がニコニコと微笑んで言った。
部屋の中だというのに、緑の髪をそよ風になびかせている好青年である。
「プレイ時間だけなら二十八時間よ」
「ほう。結構早いじゃねえか。普通は五十時間手前くらい掛かるモンなのによ」
“地”の四天王。岩塊が地鳴りのような声で言った。
筋肉が岩のように隆起する、オッサンである。
「プレイ時間的には……ね。やり直す時間含めたら六十時間は掛かってるわ」
「全滅にしては掛かり過ぎってカンジじゃな〜い? まさかセーブし忘れたりとかしてたり〜?」
“氷”の四天王。氷姫が軽い口調で言った。
水色の髪を持ち、雪の結晶をモチーフにしたアクセサリーをあちこちに身につけている若い娘である。
「ええ。セーブ忘れも数回あったみたいだけど、大半を占めてるのは全滅からのやり直しね」
「だが、それにしては時間が掛かりすぎている。レベル上げしてれば全滅は減るだろう。それによる時間のロスもなくなる」
“火”の四天王。業火が冷静に言った。
全身を赤い格好で纏め、顔にあたる部分はまるで大怪我をしてるみたいに包帯で入念にグルグル巻かれており、目の部分しか覗かせていない男だ。
業火の指摘に、魔王は頭痛がしたかのように頭に手を当ててため息を吐いた。
「レベル上げはしてないわ」
「それは」「むぅ…」「マジ?」「そうか」
一同は驚きの声を上げて、業火が代表するように言った。
「で、今のレベルは?」
魔王は至極言いにくそうに、天を仰いだ後、
「二十八。平均で」
ひゅー、と冷たい風が部屋を吹き抜けた。
涼風でも氷姫の所為ではない、不思議な風であった。
呆気に取られ、誰も次の言葉を発しない沈黙を破ったのは氷姫であった。
「てか、勇者達って今こっちに向かってるわけっしょ? そんな低いレベルで、ありえるわけ?」
魔王は、指し棒でカツンとホワイトボードを小突く。
すると瞬時に白と黒字を映していた液晶画面が変わり、魔王の居城に続く道である荒野が映し出される。
天然の要害ともいえる、左右に広がる高い壁のように崖の間、城へと続く幅の狭い道を進むアリのような点が四つ、高い位置より映っていた。
その黒い点を中心に、ズームアップされていくとそれは四人の人間であることが分かる。
勇者、戦士、魔法使い、僧侶。それぞれ勇者から♂、♂、♀、♀、の実に基本に忠実な構成を成したパーティが、一列を作って行進していた。
もう一度、液晶を小突くと画面はホワイトボードに戻った。
「あと、十五分ってとこね。あの辺りの魔物に全滅しなければの話だけど」
魔王が言った。
「あの辺りは適正レベル四十ですからね」
微笑を称え涼風は肩をすくめた。
「てゆ〜かさ、どうやってここまで来たわけ? 雑魚なら逃げればいいけどさ、ボスはこうはいかないでしょ。今レベルが二十八の勇者が倒せるとは思えないけどぉ。ボスは何をやってたんだかねぇ」
と、氷姫は前と斜め前に座する岩塊と業火に視線を向ける。この二人がボスを担当するダンジョンの適正レベルがそれぞれ、三十二と三十六なのである。更にボスなのでそのレベルにプラス三はないと苦戦は必至だ。
「勇者のレベルは二十五ね。途中加入の魔法使いが平均上げてるから」
魔王が訂正を入れ、岩塊が心外そうにしかめっ面を作る。
「ふん、オレの時ぁな、その魔法使いの風の魔法があるからな、勇者他は回復に専念できるからレベル低くても問題ねえんだよ」
岩塊は魔法、特に風にはめっぽう弱い。幾ら本気を出してないという設定とはいえ、勇者側からしてもツマらない戦いだっただろう。
岩塊の弁明を聞いて、視線は業火に集まる。涼風が、
「業火さんの言い分を聞きましょうか? あなたの場合は、弱点を突かれてもそれだけで何とかはならないはずですが?」
やや含みのある微笑みを作り言う。
業火は言いにくそうに、包帯から見える瞳を左右に動かしてから、
「……水龍の壷を使われた」
ボソりと言った業火の言葉に一同は息を飲んだ。
「アレって〜、アタシの聖域で特定の地域しか住んでない魔物が落とす超、超、ちょ〜〜〜う、レアアイテムなんだけど? なんでアイツらが持ってんの? てゆーか、何でそこで使っちゃうわけぇ!?」
氷姫がブルーの目を一杯に開いて驚きを表している。ちなみに水龍の壷というのは、使用すると水龍が加勢してくれるというまんまなアイテムである。水龍のレベルは五十で能力も高く、業火の弱点である水の攻撃を得意としている。つまりは天敵。
「中々運がいいみたいね。けど、この城は運だけじゃ無理な話だわ」
魔王は不敵な笑み――ではなく頭痛がしているかのような苦い表情をしている。
「ここで詰まられた挙げ句飽きられたら、次の勇者が誕生することがなく、延々とEDもなくこのまま、今の勇者が存在し続けることになって、報酬もでない……由々しき事態ね」
「勇者がEDまでたどり着かないと、報酬でませんからねー。世知辛い世の中です」
さほど深刻ではなさそうに涼風は相変わらずスマイルを浮かべている。
氷姫はつまんなさそうに組んだ手を頭に置き、背もたれに体重を預けながら、
「じゃさ〜、アタシらのほうで勇者達の強さに合わせちゃえばいいんじゃない? 手加減しちゃってさ〜」
その発言に魔王の目が鋭くなる。
「氷姫、それは駄目よ。そんなことをしたら、代々の魔王が試行錯誤を重ねて、できたバランスを否定することになる。たかだか無謀な幸運勇者一人のために崩すわけにはいかないわ」
熱く語る、魔王から伝わる覇気に、氷姫は姿勢を正してから、
「すいませ〜ん、失言でした」
素直に頭を下げた。心から謝る気持ちがあったかは定かじゃないが。
「だがよ、このままだとほぼ確実に勇者は俺たちにたどり着く前にやられるか、たどり着けても、涼風にやられるのがオチだぜ?」
「僕はもちろん手加減はしませんよ。それが礼儀というものですし、何より本気を出せる唯一の場ですからね」
「魔王様、どうなさるつもりなんだ?」
業火が言うと、一斉に魔王へと視線が集中する。魔王は、カツカツとホワイトボードに映った黒字を叩き、
「それを考えるための会議よ」
案一。
「要はレベルを上げさせればいいわけですよね」
まず提案を切り出したのは涼風だ。
「そうね。けど、積極的にレベル上げに精をだしてくれたらこうはならなかったのよね」
「だけどさ〜、レベル上げさせようにもこの辺りの魔物だと、勇者達が全滅する確率が高いし、一戦に時間掛かって効率悪いよね〜」
「戻ろうにも、一度この大陸に踏み入れたら、魔王様が張った結界によって戻れないからな」
「だとよ涼風。全く深く考えてないお前らしい軽々しい案だな」
「脳筋のあなたには言われたくないですね。何もこの辺りに出る魔物を狩れと言ったわけじゃないですよ。銀色のアレをけしかけたら、と思いまして」
銀色のアレという発言に、涼風以外考えこむ。真っ先に思い当たったのは魔王だった。
「それって、経験値が高くて、すぐ逃げるアレのこと?」
「そうです」
「でもアレってさ〜、ここら一帯にはいないんじゃないの?」
「ですから、特例としてこちらに来てもらって勇者と戦ってもらうわけです。アレなら勇者達も勝てますし、もっとも効率のいい名案だと思いますが?」
涼風は自信に満ちた微笑を称え、魔王へと視線を送り、案が通されるのか判断を求める。
「却下」
即断。
「せっかく代々の魔王が決めた出現場所を、いくら特例としても変えてしまうのは問題があるわ」
案二。
「別にさ〜、わざわざ魔物狩らせてレベル上げさせる必要なんてないでしょ」
次の案を切り出したのは氷姫だ。
「はあ? また、手加減とか言い出すんじゃないんだろうな」
「ガンちゃんみたいに脳ミソまで岩じゃないんだから、二度も言う訳ないじゃん。アレを使うわけよ。楽にレベルが上げれるアレをね」
楽にレベル上げれるアレ、をシンキングタイムを与えて楽しんでる氷姫以外が考え込み、涼風が真っ先に思い当たった。
「アレとは、舐めたら途端にレベルが上がるなんとも不思議なアメのことですか?」
「そ、それを宝箱にでも大量に入れて勇者に与えれば、無駄な時間も掛からずにレベルが上がって、勇者もアタシらもバンザイじゃない」
名案とばかりにニッコリと笑う氷姫の耳に届いたのは、業火の呆れをはらんだため息だった。
「それは無理だろう。全く、小娘らしい何も分かっていない軽薄な案だな」
氷姫はキッとスカイブルーの瞳を鋭利な氷柱のように細くして業火を睨む、
「アタシの案に文句あるわけ? どうせ自分が浮かばないからって僻んでるだけじゃないの? ねえ、魔王様?」
「業火の言うとおり、難しい話ね。却下だわ」
氷姫は不満げに口をとがらせ、
「え〜、どうしてさ? イイ案じゃん」
「そのアメ、今年は不作で数が少ないうえ、値段も張るし、ウチの経済状況じゃ大量に買うのは厳しいわね。城の倉庫からかき集めたって勇者達を適正レベルまで上げれる量じゃないわ」
案三。
「地道にレベル上げさせときゃいいだろ」
岩塊が言った。
「それが無理だからこうして悩んでいるわけでしょう? まさか忘れたわけでもないですよね? さすがにそこまで脳の許容量がないとは思えませんし」
岩塊はこめかみに青筋を走らせ、
「てめぇ……」
涼風に射抜くような眼光を向ける。
「冗談です。それに付け足すような考えがあるんでしょう? 何もなく言ったならただのバカですし」
皮肉めいた涼風の言葉に、ググ……と呻り、怒りで漏れ出す力により椅子がガタガタと震えたが、岩塊は小さく息を吐くと怒りを抑え込んで、
「ああ、確かに言葉が足らなかったな。オレが言いたいのは、回復の泉の場所を増やしてレベル上げさせろってことだ。それなら魔力のペース配分も考えずに一戦に全力で戦えるだろ。全力なら勝率も上がるってわけだ」
「却下ね」
魔王は即断する。
「効率も悪いし、勇者が迫ってる状況で新しく回復の泉を設置するのは無理な話だわ」
案四。
「要はレベルを上げさせなくともたどり着ければよいのだ」
四天王の知性派を気取る業火が満を持してそう切り出した。
「おいおい業火、それは難しいんじゃないか? 雑魚は突破できても本気の俺が控えてんだぞ? レベル上げずには無理って話だろ」
業火はフッと鼻で笑う。包帯で窺いしれないが口元も笑っているであろう。
「それがあるから話しているんだ。少なくとも岩塊は苦せずに突破は可能だろう」
「アンタの回りくどい言い方が気に入らないのよね〜。さっさと本筋に入ってよ」
「性格なんでね。先にもあったが、岩塊の弱点は風の魔法だ」
「確かにそうだが、本気のオレはそれだけで倒されるほど甘くないんだがな」
「そうですかね。簡単に倒されそうですが」
「涼風の言う通りかもしれないが、それでも適正レベルじゃない彼らは、岩塊のストーンメテオで簡単に全滅してしまうだろう」
氷姫はツマらなさそうに欠伸をして、
「……長くなる?」
「だが、僧侶のマジックシールドを唱えておけば、」
「なるほど。それなら威力が四分の一になりますから耐えれますね」
「ああ。ソレ以外には岩塊は単体への物理攻撃しかない。馬鹿力だから威力はあるが、勇者のガードフォースで防御力を上げれば赤子の一撃程度になる」
岩塊は舌打ちをした。
「まずはそれらを唱えて態勢を整え、魔法使いは絶えず風の魔法。ダメージは劣るが戦士はウィンドスピアで攻撃するのが効率がいい。勇者と僧侶は回復を担当しつつ魔法効果が切れないように気を付ければ十中八九、勝てるだろうな」
「さっさと本題に行けよ、軍師さん」
ケッ、と岩塊は悪態を付く。
「要は、対応さえ分かっていれば勝てる確率は上げられるということだ。我々が待つ部屋の前にはセーブポイントもある。二、三度全滅しても問題ない」
「それって〜、勇者達がその対応が分かってないと駄目じゃん」
「話は最後まで聞くもんだ小娘。分からないならその対応策を分からせればいい。それぞれの部屋の前にソレが書かれた立て札でも置いてな」
「それを勇者達が見てその通りにしてくれれば、僕たちは敵ではないということですか」
「ああ」
「僕たちの攻略法は貴方が書くとして、貴方自信はどうするんです? 自分で自分の対策を書くつもりなんですか?」
「それはお前達に任せる。……いや、小娘と岩塊だと不安か。涼風、頼む」
「ガンちゃんはともかく、アタシは結構弱点分かってんだけど〜。ワンワン鳴くあの動物とか」
氷姫はイタズラっぽい笑みを浮かべながら、業火を見る。
「……ゴホン。で、魔王様どうだ? 名案だと思うが」
氷姫の視線を避けるように業火は魔王を見て聞いた。
魔王は、少し考えるように目を閉じてから、
「却下」
案を棄却した。
「部屋の前にそんな立て札があるのも不自然でしょ」
案五?
室内の空気は淀んでいた。
四天王それぞれが出した案は、議長のような立場の魔王により全て突っぱね返され、誰も新案を出すこともなく、沈黙していた。
魔王は指し棒を弄びながら考えてるフリをし、涼風は考えてるのか分からない微笑を浮かべているのみ。
氷姫は足を机に投げ出す姿勢でケータイ端末をいじり、岩塊は腕を組み大欠伸をひとつ。
業火は、苛々を募らせ早いリズムで足で床を叩いていた――が、不意に椅子から立ち上がると、魔王へと体を向け、
「こうも案を破棄するからには、魔王様にはさぞかし名案があるのだろうな?」
言われて魔王は、顔をヒくつかせ、一歩後ずさり、明らかな動揺を体現しながら、
「……あ、あるわよ。当然でしょう」
と、胸を張って明らかに強がりだと分かることを言った。
「それはそれは。聞かせてもらいましょうか」
「そーそー。きっと、アタシらの案を凌駕するスンゴい案なんだろうな〜」
「そいつは楽しみだ」
わざとらしい期待を含んだ四天王の視線が魔王へと注がれる。
魔王は束になった視線を受け止めることなく、僅かに顔を背け、
「…………」
黙り込み考え込む。
脳内では白紙の前で悩み苦しむ自分の姿が映る。
一向に浮かばない案を、どうにかして絞りだそうと、悩んで、悩んで、悩んで――そして、
「あるわけないでしょ。考えてないんだから」
開き直った。
「ほらね。所詮は前の魔王様が失踪したからなっただけの急増魔王よね〜。偉ぶることしかできないだけじゃん」
「前魔王様の失踪には同情しますが、それと別として、何も考えてないというのはいささかどうかと」
「自分は考えず、もっともらしくオレらの案は却下するとは大した魔王様だ」
「常々魔王の世襲制には疑問に思っていた。親譲りの強さはともかく、他は全くなってはいない。これでは力だけの岩塊と変わらない。そもそも年端もいかぬ小娘に魔王が務まるわけがない」
口々に浴びせられる、非難の波に押されるように魔王は「うっ」と呻いて身じろぎ、一歩二歩と後ずさり、背中がホワイトボードに当たり、止まった。
四天王は揃って席に着いているが、まるで追いつめられたかのように魔王は危機迫ったように表情を硬くする。
魔王は思考する。魔王の威厳が危ういこの状況を逆転する一手を。言葉、行動、どれをどうすればいいのかと、考えて、考え、考え抜いて、
「し、仕方ないじゃない! 突然お父様が『もう魔王メンドクサい。あとは頼む(探さないでねと言うデフォルメ魔王イラスト付き)』って置き手紙を残していなくなったんだから!」
キレた。
「そもそも、仮にも私の部下なわけでしょ!? 魔王を敬うとかはないの?」
「ありませんね」「あるわけないじゃん」「ねえな」「ないな」
異口同音に四天王は返した。
「…ちょっと、酷すぎないソレ?」
魔王が暗い影を背負いながら苦笑するのを四天王は無視し、
「勇者達が迫ってる状況だ、この際だ、力で決めるべきだろう。勝者の案を採用し、ついでに魔王の椅子も貰うというのはどうだ?」
業火の提案に他三名は一様にニヤリと笑う。
「それは面白そうですね」
「このままだと一生決まりそうにないし〜」
「最初からこうすべきだったんだよ。腕が鳴るぜ」
「ついでで勝手に魔王の座を賭けないでよね……ま、私もそのやり方は嫌いじゃないけど」
魔王も含め全員やる気である。
涼風は掌上に小さな竜巻を作り。
氷姫は耳にかかる髪を払う。雪のイヤリングが揺れた。
岩塊は筋肉アピールをしている。
業火は熱気を体に纏い、周囲が歪む。
魔王も気を高める。
部屋に満ちる気に耐えきれなくなった液晶画面がピシリと蜘蛛の巣のような亀裂を走らせる音がゴングになり――
一斉に動いた。
同時刻。魔王城城門。
勇者を今や遅しと待ち受ける門番が二人いた。
「今、揺れたな」
「疑問符を付ける必要もない大きな揺れだったな」
「上の階で何かあったようだな」
「多分、魔王様と四天王が集まってる部屋じゃないか?」
「仲悪いからな。あの方々は」
「まあ、集まって平穏に終わるとは思っていなかったが。いつものことだな」
「だな。俺らは門番で良かったよ。同じ階にいたら巻き添え食ってたかもしれんし」
「同感だ。だが、あの五人の実力は拮抗しているからな――魔王様がやや抜き出ているか――全員無傷で済むはずがないよな……」
「かといって俺らが止めに入ったら返り討ちだ。放って置くしかない」
「だな――お、ようやくお目見えになったみたいだぞ」
一時間後。四天王涼風の部屋。
「……ようやく現れましたか……ゲホッゴホッ! ですが……ハァハァ……ここを通るのは無理ですよ。…………僕の本気をお見せ――ブハッ!(吐血)――しましょう……」
そこには満身創痍の涼風が今にも倒れそうな状態で待ちかまえていた。
勇者は無事にEDを迎えることが出来た。