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救国の女神は本の続きを書く。  作者: さんまぐ
救国の女神が追いやられた土地を開放するまで。

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第26話 救国の女神はアルティの使命を知る。

メーライトから名前を呼ばれたアルティは、血まみれなのに喜んでメーライトに飛びつくと、「嬉しいよ!」と言う。


メーライトは満更でもない顔でアルティを受け入れるが、元々は詐欺師なのでアーセワは更に気を引き締め、「アルティ、神様が汚れてしまいます。ダンジョンコアを持ち帰ったなら、宰相に見せましょう」と意見をした。


また睨みつけてきて、「うるせーな」くらい言われるかと思ったが、アルティは「了解、じゃあ、そこでお願い聞いてね。神様」と言うと、風呂に行ってしまう。


残されたメーライトについてしまった魔物の血を拭きながら、アーセワが「神様、ある程度の距離感は保ってください」と言うと、「…うん、…そうだよね」とメーライトは言っていた。


1時間後にワルコレステ達が待つ会議室に集まるメーライト達、そこには万一に備えてアノーレやアルーナ、アナーシャにアーシル、アジマー、アーセスの戦闘職達も参加させていて、アーセワは最悪制圧と同時にアルティをメーライトに消させる算段までしていた。


「使徒様達が集まると壮観ですな」と言って現れたワルコレステと、ワルコレステに付き従う腹心達を見もしないアルティ。


アーセワが注意を兼ねて「アルティ、ダンジョンコアを神様に渡しなさい」と指示をしたが、アルティはダンジョンコアを片手に、メーライトに「神様、その前にお願いの話がしたいよ」と言う。


「アルティ?」

「皆が見てるところがいいんだ。ダンジョンコアはここ、ボスモンスターの死霊騎士は神様が授けてくれた魔法の力で焼き払ってきたし、持ち帰って崩落したダンジョンに追い討ちまで放ったからもう安心だよ。だからお願いを聞いて?二つ目」


アルティはまた人喰い鬼の首を見せてきて「ほら、これが生きてたら春には大変だったけど、死霊騎士の後で疲れてても、アルは倒してきたんだよ?」と恩を着せてくる。


「お願いは何?」

「神様と友達になりたいから、神様じゃなくて名前で呼びたいなぁ」


これにはアーセワ達が黙っていられずに、「立場をわきまえなさい!」、「おいお前!」、「アルティ!ダメだよ!」、「神様は神様だよ!」、「不遜な…」と口々に言うが、アルティは無視をしてメーライトに「お願い」と言う。


「ダメって言ったらどうなるの?」

「いじけちゃうし、遠くに行って、穴掘ってこのコアを入れてくる」


冗談でも笑えない。

ワルコレステが仲裁のように、「メーライト様。お許しになられては?」と口を挟むと、メーライトはアーセワ達を見た後で「いいよアルティ」と言う。


「やった!メーライト!大好き!」と喜んで、メーライトに抱きつくアルティは、首をまた一つ消して、「首は後二つ。最初に言ったけど、一つはお友達になって」と言った。


それくらい何の問題もなく「いいよ」と言うと、アルティは首を消してニヤリと笑い、「じゃあ最後はね」と言い、少し溜めると、突然「このダンジョンコアを頂戴?」と言った。


メーライトは聞き間違いを疑い「え?」と聞き返す。


「ダメ?」

「ダメだよ!何に使うの?」

「アルには使命があるの」

「使命?」


今までの使徒にはなかった会話。

皆、原作の設定、メーライトが生み出した世界観に沿っていて、アルティが書かれている【詐欺師の冒険】の原作、メーライトが加筆した文章の中にも使命なんてモノは無かった。


「それって何?ダンジョンコアを使わずに、それはできないの?」

「できるよ。でもこれも欲しいの」

「とりあえず使命を教えて?」


アルティはワルコレステ達を見ながら「復讐」と言った。


また聞き間違いを疑ったが、それを打ち消すように「復讐だよメーライト」とアルティは言う。


アルティはメーライトに抱きつきながらアーセワを見て、「アーセワぁ、アンタなら気付いてたし、気になってたよね?」と聞く。


「ダンジョンコアの話が出てから現れた本。しかも内容は探検家で冒険者、しかも魔物も出てくる世界で、魔法まで出てくる。戦闘用の使徒の為の本」


アーセワは聞きながら、自身が怪しんだ事を言い当てるアルティの言葉に囚われていた。


「メーライトが私たちを呼べる条件は、メーライトが登場人物の気持ちに寄り添えて、人生を紡げるか。後は、作者が魂を込めた命懸けの本」


アルティに抱きつかれながら話を聞くメーライトは、言いようのない不安感に襲われてくる。


「本来は死にかけの老人や病人に頼って何かを書かせる?でもそれだと能力足らずの可能性もある」

「ダンジョンコアの奪還が可能な能力を生み出せる本?」

「そんな本がそうそうあると思う?」

「この本の作者はさ、文字通り命懸けで書いたんだよ」

「最初は意味も知らずに、助かる為にね」


一言ずつ、染み込ませるようにメーライトに言い聞かせるアルティ。


「アルティ?それは?」

「アルデバイトの街に、詐欺師の男が居たんだよ。本当は詐欺師なんてやめてたの。でもお医者様だった弟が第二陣の移送隊で殺された。元々は弟をお医者様にしてあげたくて、お金が必要だから詐欺師になったの。でも殺されたんだ。メーライトのお友達のバナンカデスの父親のせいで」


アルティの単語チョイスは、メーライトを的確に混乱させるもので、アーセワが真剣な顔で「アルーナ!アーシル!神様をこちらに!」と声をかけると、アルーナ達がアルティからメーライトを奪い取る。


突然アルティから引き離されたメーライトは混乱気味の顔をしていて、そのアルティは不服そうに、「あらら。その動きからして、アルは何でもやれるけど、剣はアルーナに、魔法はアジマーに敵わない感じかぁ」と言ってからメーライトを見て、「メーライトは優しいね」と言った。


「アルティ?」

「とりあえず聞いて。男は元詐欺師で、頑張って援助をして医者になった家族は死んでしまって、この新しいヤヅマーミ砦で途方に暮れていた。そこに来た騎士達は過去の罪で男をこの砦の地下に投獄するの。過去の罪で死刑になる事に関して、男は死ぬのは構わなかったけど、ただ死ねば死んだ家族は国を売った悪い連中の一味にされると聞いて、生き残る道を模索した。わかるよね?詐欺師の才能で本を書くの、評論家を呼んで、メーライトが私達を生み出せるような、感動する話を書く」


メーライトは聞いていて青くなり、ワルコレステは復讐の言葉の意味と、アルティが自分を見た意味を理解すると、「近衛兵!来い!」と言い、兵士を部屋に招き入れる。


老騎士も部屋に入ろうとしたが、ワルコレステがそれを止めると、近衛兵達にアルティを倒せと命じる。


アルティは近衛兵達を一瞥して鼻で笑うと、「バカだよね。魔物一つ満足に倒せないくせに、アルを何とかできると思っている」と言った。


「メーライト、私の作者はね。途中で評論家から教えてもらって、使徒を呼べる本は死んだ作者が魂を込めて書いた本だと知ったんだよ。だから、コイツらが最後に自分を殺す事に気付いた。最初はメーライトが不発に終わるように、魂を込めるのをやめようかと思ったけど。それをしたら次の本を書ける人間を出してくる。老若男女を問わずに、コイツらは自分達のために人を犠牲にする。だから魂を込めて私達に全てを伝えてくれたんだ。だからアルは全部知ってるよ」


メーライトは聞きながら震えてアーセワに抱きついている。


ワルコレステは自身の謀略が表に出て、本来ならメーライトとは戦後まで良好な関係を築いていたかったのに、道半ばで暴露された事に忌々しい気持ちになっていた。


アーセワが「アルティ!そこまでです!やめなさい!」と止めるが、アルティは「アーセワぁ?あんた本物のバカ?今お利口にメーライトの為に、そこの貴族と、この国の事を考えたよね?今はその時じゃないって考えたよね?」と言う。


「アーセワさん?」と不安気に聞くメーライト。


アーセワが何も答えられずにいると、アルティが、「メーライト、コイツらは生きてちゃいけない人間だよ。この先、この国が困るたびに“偶然”本が出てくる。そこから状況を打破する使徒が生まれてくるんだ」と言う。


「だけどそれはアルの作者みたいに、生き残れる嘘に騙されたり、家族を人質にされ、本を書かされてから殺される人間がいる。メーライトが全てを知って、犠牲と殺人の重圧に潰されたら、『メーライトの手は汚れてるから、もう後戻りはきかないから、このまま突き進もう』ってこの貴族達はやるよ」


メーライトはアルティの顔から目が離せなかった。


「それで、アーセワはその前に貴族を殺したと思うよ。今この人間を失う事は、この国には痛手だもん。だから春が来て、城を奪還したら殺したはずだよ」


メーライトは混乱していた。

アーセワでも

ワルコレステでも

そこら辺で立ち尽くす貴族でも構わない。


誰でもいいから嘘だと言って欲しい。

アルティの本が生み出された経緯を嘘だと言って欲しい。

ワルコレステに「違いますメーライト様」と言って欲しい。

アーセワに「大丈夫ですよ神様」と言われたい。


だが誰も何も言わない。

それどころか、ワルコレステは「ちっ、今はあの漆黒の使徒だ!その他はどうとでもなる!抜刀!」と騎士達に言い、騎士達は「女神様…、御免!」と言い抜刀をした。

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