エピソード8:初めての成功
十年と一ヶ月。
精密制御を、さらに極めることにした。
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「髪の毛よりも、細く」
それが、目標だ。
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毎日、練習する。
魔力の糸を、できるだけ細くする。
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最初は、髪の毛の半分が限界だった。
それ以上細くすると、崩れる。
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だが、諦めない。
毎日、何時間も練習する。
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「もっと、細く」
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十年と三ヶ月。
髪の毛の十分の一まで、細くできるようになった。
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もはや、肉眼では見えない。
魔力を光らせて、ようやく見える。
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「ここまで来た」
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この細さなら、色々なことができる。
複雑な模様を描く。
精密な構造物を作る。
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「可能性が、広がった」
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十年と六ヶ月。
複数の糸を、同時に操る練習を始めた。
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一本だけなら、簡単だ。
だが、二本、三本となると、難しい。
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意識を、分割しなければならない。
それぞれに、別の動きをさせる。
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「頭が、痛くなる……」
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だが、何度も練習する。
徐々に、できるようになってきた。
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十年と九ヶ月。
十本の糸を、同時に操れるようになった。
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右手から五本。
左手から五本。
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全てを、独立して制御する。
絡まない。
崩れない。
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「できた!」
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初めて、複数の糸を完璧に操れた。
これは、大きな成功だ。
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「これで、戦術の幅が広がる」
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十一年目。
糸だけじゃなく、点でも制御できるようになった。
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魔力を、針の先ほどの点に集中させる。
極小の点。
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これで、貫通力が上がる。
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岩に向かって、魔力の点を放つ。
小さな穴が、開いた。
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「鋭いな」
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点と糸。
両方を使い分けられる。
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「応用の幅が、広がった」
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十一年と三ヶ月。
次に挑戦したのは、魔力の圧縮だ。
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「同じ量でも、密度を上げれば威力が上がるはずだ」
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魔力を、ギュッと押し固める。
圧縮する。
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だが、難しい。
すぐに、元に戻ってしまう。
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「どうすれば、圧縮できるんだ?」
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十一年と六ヶ月。
ある日、閃いた。
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「魔力を、内側に折り畳むんだ」
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広がっている魔力を、内側に折り返す。
何層にも、重ねる。
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試してみる。
魔力を、折り畳んでいく。
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すると――。
微かに、密度が上がった。
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「できた……!」
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ほんの少しだが、圧縮できた。
確かに、密度が上がっている。
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「これだ」
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十一年と九ヶ月。
圧縮の練習を、続けた。
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最初は、二層が限界だった。
だが、徐々に増やせるようになってきた。
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五層。
十層。
二十層。
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「もっと、圧縮できる」
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十二年目。
五十層まで、圧縮できるようになった。
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魔力核が、小さく、硬くなった。
だが、密度は遥かに高い。
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「これで、威力が上がるはずだ」
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試してみる。
圧縮した魔力で、火球を作る。
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以前よりも、小さい。
拳の半分ほど。
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だが――。
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放つと、大木が一撃で炭になった。
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「……すごい威力だ」
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サイズは小さくなった。
だが、威力は十倍以上になった。
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「圧縮、すごいな」
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十二年と三ヶ月。
圧縮した魔力で、色々試してみた。
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火球の威力が、桁違いになった。
岩を、一撃で粉砕する。
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風も、強力になった。
木を、根こそぎ倒す。
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「強すぎる……」
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威力の制御が、難しくなった。
加減しないと、危険だ。
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「コントロールを、学ばないと」
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十二年と六ヶ月。
圧縮率を、調整する練習をした。
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用途に応じて、変える。
小さな火なら、低圧縮。
強力な攻撃なら、高圧縮。
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「使い分けが、大事だな」
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十二年と九ヶ月。
精密制御と圧縮。
両方を、マスターした。
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これで、魔法の質が、格段に上がった。
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「初めての成功だ」
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十三年目。
無人島に来て、十三年が経った。
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魔法の基礎と応用。
両方を、完璧にマスターした。
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「ここまで来たか」
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だが、まだ満足できない。
もっと、強くなりたい。
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「次の段階に、進もう」
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さらなる高みを、目指す。
それが、俺の道だ。
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