エピソード7:制御の壁
八年と一ヶ月。
五属性を使えるようになった。
火、水、風、土、雷。
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だが、威力が小さい。
火球は、拳ほどしかない。
水も、手のひら一杯程度。
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「これじゃ、戦えない」
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もっと強力にしたい。
もっと大きく、もっと速く。
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「どうすれば、強くなる?」
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考える。
魔力の総量を増やす、か。
それとも、制御を上げる、か。
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「両方、必要だな」
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八年と三ヶ月。
まず、魔力の総量を増やす訓練を始めた。
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魔法を、常に使う。
朝から晩まで、ずっと。
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火を起こす。
水を出す。
風を吹かせる。
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使えば使うほど、魔力が鍛えられる。
筋肉と同じだ。
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「限界まで、使おう」
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魔力が尽きるまで、魔法を使い続ける。
体が、だるくなる。
頭が、ぼんやりする。
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これが、限界だ。
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だが、諦めない。
毎日、限界まで追い込む。
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そして、回復したら、また使う。
その繰り返し。
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「きついけど、効果はあるはずだ」
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八年と六ヶ月。
確かに、魔力が増えてきた。
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魔力核が、明らかに大きくなっている。
以前の二倍くらい。
密度も、濃くなった。
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「成長してる」
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魔法の威力も、上がった。
火球が、人の頭ほどになった。
水も、バケツ一杯出せる。
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「いい感じだ」
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八年と九ヶ月。
だが、新しい問題が出てきた。
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魔力は増えた。
威力も上がった。
だが、制御が追いついていない。
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強力な魔法を使おうとすると、暴走する。
狙った場所に飛ばない。
爆発が、予想以上に大きくなる。
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「危険だ……」
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制御が、甘い。
力だけ強くなっても、意味がない。
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「制御を、鍛えないと」
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九年目。
制御の訓練を、本格的に始めた。
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魔力を、細く伸ばす。
糸のように。
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手のひらから、魔力の糸を伸ばす。
細く、細く。
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最初は、すぐに崩れた。
太くなったり、切れたり。
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だが、何度も繰り返す。
毎日、何時間も。
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「集中……」
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九年と三ヶ月。
ようやく、髪の毛ほどの細さにできるようになった。
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光る糸が、手のひらから伸びている。
美しい。
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「これが、精密制御の第一歩だ」
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この糸を、自在に操る。
曲げる。
捻る。
結ぶ。
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全て、意識だけで行う。
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「できるようになってきた」
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九年と六ヶ月。
精密制御ができるようになると、魔法が変わった。
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威力が、さらに上がった。
無駄がなくなったからだ。
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魔力を、効率的に使える。
同じ量でも、遥かに強力。
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「制御が、全てだな」
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そして、気づいた。
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「力だけじゃない。技術が大事だ」
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いくら魔力が多くても、制御できなければ意味がない。
逆に、制御が完璧なら、少ない魔力でも強力な魔法が使える。
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「バランス、か」
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九年と九ヶ月。
魔力の総量と、制御の精度。
両方を、バランス良く鍛える。
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それが、最も効率的だ。
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だが、また新しい壁が見えてきた。
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今の制御では、まだ限界がある。
もっと精密に。
もっと繊細に。
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「髪の毛よりも、細く」
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それが、次の目標だ。
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十年目。
無人島に来て、十年が経った。
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魔法の基礎を、完全にマスターした。
五属性を使える。
精密制御も、ある程度できる。
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「ここまで来たか」
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振り返ってみる。
十年前は、何もできなかった。
魔力を感じることすら、できなかった。
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だが、今は違う。
魔法を自在に操れる。
生活も、完全に安定している。
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「成長したな」
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だが、満足はできない。
まだまだ、弱い。
これでは、足りない。
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「次の十年で、さらに強くなる」
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精密制御を、極限まで極める。
魔力を、限界まで圧縮する。
そして、誰にも負けない力を手に入れる。
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「それが、俺の目標だ」
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十年の修行を終えて、ようやくスタートラインに立てた。
ここから、本当の修行が始まる。
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