エピソード4:孤独との対峙
一年目。
無人島に来て、一年が経った。
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生活は、安定した。
家がある。
食料も、毎日確保できる。
火も、すぐに起こせる。
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「生き延びることは、できるようになった」
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だが、新しい問題が浮上してきた。
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孤独だ。
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一年間、誰とも話していない。
誰とも、会っていない。
声を発するのは、独り言だけ。
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「……寂しい、のか?」
自問する。
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前世では、人付き合いが面倒だった。
一人の方が、楽だった。
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だが、それは選択肢があったからだ。
会おうと思えば、会えた。
話そうと思えば、話せた。
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ここは違う。
選択肢がない。
誰もいない。
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「これは、違うな」
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一年と三ヶ月。
孤独が、じわじわと押し寄せてくる。
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朝起きても、誰もいない。
昼も、夜も、一人だ。
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話し相手が、欲しくなる。
誰でもいい。
人間の声が、聞きたい。
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「……ダメだ」
頭を振る。
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考えても、仕方ない。
ここには、誰もいない。
五十年間、ずっと一人だ。
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「慣れるしかない」
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一年と六ヶ月。
対策を、考えた。
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独り言を、たくさん話す。
声を出すこと。
それが、重要だ。
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声を出さないと、喉が退化する。
会話能力も、落ちる。
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「毎日、声を出そう」
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何でもいい。
今日やったこと。
考えていること。
全部、声に出す。
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「今日は、魚を三匹捕まえた」
「天気が良かった」
「明日は、家を改良しよう」
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独り言を、ずっと話す。
変な感じだが、仕方ない。
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「これも、生き延びるためだ」
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二年目。
孤独に、少しずつ慣れてきた。
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最初は、誰かに会いたいと思っていた。
話し相手が、欲しかった。
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だが、今は違う。
一人でも、平気だ。
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「慣れたのか、諦めたのか」
どちらだろう。
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分からない。
だが、今は平気だ。
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「それでいいか」
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二年と三ヶ月。
ふと、鏡が欲しくなった。
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自分の顔を、見ていない。
一年以上、見ていない。
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「どんな顔してるんだろう」
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川に行って、水面を覗き込む。
揺れる水面に、ぼんやりと映る顔。
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髪が、肩まで伸びている。
ボサボサだ。
髭も、生えている。
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「……野生児だな」
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前世の自分とは、全く違う。
別人のようだ。
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「まあ、いいか」
見た目なんて、どうでもいい。
誰も見ないし。
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だが、髪は切った方がいいかもしれない。
長すぎると、邪魔だ。
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「石のナイフで、切るか」
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適当に、切る。
短く、肩くらいまで。
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「これでいいだろう」
誰も見ないから、適当でいい。
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二年と六ヶ月。
孤独は、もう気にならなくなった。
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毎日、同じルーティン。
朝起きて、水を飲む。
狩りをする。
家を改良する。
夜、休む。
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同じことの繰り返し。
だが、飽きない。
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「充実してるな」
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やることがある。
目標がある。
それだけで、十分だ。
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「孤独も、悪くない」
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一人だからこそ、集中できる。
邪魔されない。
自分のペースで、進められる。
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「これが、俺に合ってるのかもしれない」
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三年目。
無人島に来て、三年が経った。
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孤独に、完全に慣れた。
もう、誰かに会いたいとは思わない。
このまま、一人でいい。
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「五十年、一人でも平気だな」
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そう確信した。
孤独は、もう怖くない。
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むしろ、心地いい。
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「これが、俺の人生だ」
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一人で、生きる。
一人で、強くなる。
それが、俺の選んだ道。
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「後悔は、ない」
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だが、ふと気づいた。
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体の中に、何か温かいものを感じる。
微かだが、確かに。
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「……これは、何だ?」
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集中して、感じ取ろうとする。
体の中心。
丹田のあたり。
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温かい塊がある。
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「もしかして……魔力?」
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女神が言っていた。
魔法は、使える。
だが、初期魔力は最低ランクだ、と。
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「感じられるようになったのか」
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三年かかった。
長かった。
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だが、ついに感じ取れた。
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「これが、魔力か」
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新しい発見だ。
新しい目標が、見えてきた。
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「魔力を、使えるようになろう」
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孤独との戦いは、終わった。
次は、魔力との戦いだ。




