エピソード11:Aランク初依頼
# 第3章:冒険者始動編
## エピソード11:Aランク初依頼
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冒険者ギルドの受付前。
シオンは、一枚の依頼書を見つめていた。
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「大盗賊団《黒牙》殲滅および、拉致被害者の救出……か」
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受付嬢が、静かに説明する。
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「被害規模が大きく、国家問題になりつつあります」
「そのため、Aランク依頼として発行されました」
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「場所は?」
シオンが、尋ねる。
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「北部渓谷地帯の廃砦です」
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「分かった。受ける」
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即答だった。
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「ありがとうございます。お気をつけて」
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その夜。
シオンは、単身で目的地へ向かった。
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月明かりに照らされる渓谷。
断崖の上に、廃砦がそびえている。
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「……あそこか」
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見張り塔。
松明。
巡回兵。
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「数は、多いな」
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だが、問題ない。
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重力を、極限まで弱める。
自分の体重を、消す。
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音もなく、崖を駆け上がる。
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見張りの背後。
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「……?」
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気づいた瞬間。
首元に、軽い圧。
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そのまま、気絶。
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警報は鳴らない。
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内部へ侵入。
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だが――。
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不意に、鐘が鳴った。
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「敵襲だ!」
「侵入者だ!」
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砦全体が、騒然となる。
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「……仕方ない」
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シオンは、歩き出す。
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通路に、盗賊たちが殺到する。
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「殺せ!」
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「一人だぞ!」
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「囲め!」
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次の瞬間。
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重力が、爆発した。
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半径五十メートル。
重力ドーム。
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盗賊たちは、床に叩きつけられる。
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「ぐあっ!」
「がはっ……!」
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骨の折れる音。
悲鳴。
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動ける者はいない。
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さらに。
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氷槍。
雷撃。
火球。
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三属性が、同時に放たれる。
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通路は、地獄と化した。
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数分後。
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生きている盗賊は、一人もいなかった。
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「……終わりだな」
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奥へ進む。
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大広間。
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そこに、一人の男が立っていた。
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黒い外套。
巨大な剣。
鋭い眼光。
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「ほう……」
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「俺の砦に、一人で来るとはな」
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「黒狼のガルド……だな」
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「知っているとは光栄だ」
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男は、剣を構える。
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「俺は元Aランクだ」
「簡単には倒れんぞ」
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「試してみろ」
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ガルドが、突進する。
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重剣が、唸りを上げる。
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地面が、砕ける。
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シオンは、紙一重で回避。
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「速い……」
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闇の魔弾が、放たれる。
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連続十発。
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だが、全て無効化。
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「効かないな」
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「なに……!?」
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次の瞬間。
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氷魔法。
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床が、凍結する。
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ガルドの足が、止まる。
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「くっ……!」
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シオンは、右手を掲げる。
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氷が、集まる。
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剣の形を取る。
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「終わりだ」
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一閃。
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首が、宙を舞った。
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団長は、崩れ落ちた。
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「……完了」
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地下へ向かう。
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薄暗い牢。
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檻の奥。
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白い髪の少女が、うずくまっていた。
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狐耳と、尻尾。
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「……白狐族か」
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少女は、震えながら顔を上げる。
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「……だ、だれ……?」
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「助けに来た」
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シオンは、静かに言う。
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鎖を外す。
檻を壊す。
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「もう、大丈夫だ」
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少女の瞳に、涙が浮かぶ。
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「……ほんと……?」
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「ああ」
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少女は、崩れるように泣いた。
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砦を出た後。
焚き火の前。
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少女は、小さく名乗った。
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「……ユズ……です」
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「シオンだ」
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しばらく、沈黙。
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「……行く場所、ない……」
ユズが、呟く。
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シオンは、少し考える。
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「……俺と来るか?」
「……いいの?」
「生きる術も、戦い方も、全部教える。
楽じゃない。それでも、やる気があるならだ」
ユズは、一瞬だけ迷ったあと、強く頷いた。
「……はい。
私……強くなりたいです。
もう、誰にも奪われないように……」
「そうか」
「……がんばります……!」
その声は、小さかったが、確かに決意がこもっていた。




