エピソード6:卵の孵化
都市に戻る途中。
シオンは、卵を大切に抱えていた。
-----
「温かいな」
-----
卵から、命の鼓動を感じる。
微かだが、確かに生きている。
-----
「孵化するまで、世話をしよう」
-----
都市に到着する。
-----
まず、ギルドに報告する。
-----
「ワイバーン討伐、完了しました」
シオンが、受付嬢に言う。
-----
「証拠は?」
-----
シオンが、ワイバーンの爪を出す。
-----
「これです」
-----
「確かに、ワイバーンの爪ですね」
受付嬢が、確認する。
-----
その時、受付嬢が卵に気づく。
-----
「それは……卵?」
-----
「ああ。ワイバーンの体内にあった」
シオンが、説明する。
-----
「討伐後、腹部から見つけた」
-----
「妊娠していたんですね……」
受付嬢が、複雑な表情になる。
-----
「飼うんですか?」
-----
「ああ。子供に罪はない」
シオンが、答える。
-----
「育ててみようと思う」
-----
「……分かりました」
受付嬢が、頷く。
-----
「でも、気をつけてくださいね」
-----
「ワイバーンは、成長すると制御が難しくなります」
-----
「大丈夫だ」
シオンが、自信を持って言う。
-----
「報酬は、金貨五枚です」
-----
シオンが、受け取る。
-----
「ありがとう」
-----
シオンは、宿に戻った。
-----
部屋で、卵の世話を始める。
-----
「どうやって、孵化させるんだ?」
-----
シオンが、考える。
-----
「温度が、大事なはずだ」
-----
魔力で、卵を温める。
適切な温度に、保つ。
-----
「これで、いいか」
-----
二日後。
卵に、変化があった。
-----
ピシッ。
ヒビが、入る。
-----
「……孵化する?」
-----
シオンが、見守る。
-----
ヒビが、広がる。
卵が、割れ始める。
-----
そして――。
-----
小さなワイバーンが、生まれた。
-----
「キュー」
-----
可愛らしい鳴き声。
体長、三十センチほど。
白い鱗。
-----
「小さいな」
-----
小さなワイバーンが、シオンを見る。
-----
そして――。
-----
シオンに、飛びついた。
-----
「おっと」
-----
シオンが、受け止める。
-----
「キュー!」
-----
小さなワイバーンが、シオンに甘える。
まるで、親だと思っているようだ。
-----
「……刷り込み、か」
-----
最初に見た相手を、親だと思う。
鳥類に見られる、本能だ。
-----
「困ったな」
シオンが、苦笑する。
-----
だが、嫌ではない。
むしろ、可愛い。
-----
「名前を、つけるか」
-----
シオンが、考える。
-----
「白い鱗だから……シロ、か」
-----
「キュー!」
シロが、嬉しそうに鳴く。
-----
「気に入ったみたいだな」
-----
シロは、シオンの肩に止まる。
-----
「これから、よろしくな」
-----
「キュー」
-----
シオンは、新しい相棒を得た。
-----
その日の夕方。
ダリウスから、呼び出された。
-----
「シオン、ワイバーンを飼うそうだな」
-----
「はい」
-----
「大丈夫か?」
ダリウスが、心配そうに聞く。
-----
「成長したら、手に負えなくなるぞ」
-----
「大丈夫です」
シオンが、自信を持って答える。
-----
「俺が、責任を持ちます」
-----
「……そうか」
ダリウスが、諦める。
-----
「まあ、お前なら大丈夫か」
-----
「それに」
シオンが、付け加える。
-----
「母親を殺したのは、俺だ」
「せめて、子供は育てたい」
-----
「……そういうことか」
ダリウスが、納得する。
-----
「優しいな、お前は」
-----
「そうでしょうか」
-----
「ああ。強いだけじゃない」
ダリウスが、言う。
-----
「心も、強い」
-----
「ありがとうございます」
-----
宿に戻ると、シロが待っていた。
-----
「キュー!」
-----
「ただいま」
-----
シロが、シオンに飛びつく。
-----
「腹が減ったのか?」
-----
「キュー」
-----
シオンは、肉を与える。
シロが、むしゃむしゃと食べる。
-----
「食欲旺盛だな」
-----
シオンが、微笑む。
-----
「大きくなれよ」
-----
シオンは、シロと過ごす日々を楽しんでいた。
-----
そして、思う。
-----
「これで、Bランク依頼は三つクリアした」
-----
あと一つ。
あと一つで、Aランク昇格試験を受けられる。
-----
「次で、最後だ」
-----
シオンは、決意を新たにした。
-----




