エピソード6:常識との乖離
四日目。
キャラバンは、森を抜けて平原に出た。
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見渡す限り、草原が広がっている。
遠くに、山が見える。
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「開けた場所だな」
シオンが、景色を見る。
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「ええ。ここからは、比較的安全です」
バルドが、安心した様子で言う。
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「魔物は、出ないのか?」
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「まったく出ないわけではありませんが、森よりは少ないです」
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シオンが、頷く。
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しばらく進むと、ガルスが聞いてきた。
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「シオン様、魔法ってどのくらい強いんですか?」
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「どういう意味だ?」
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「最大威力、です」
ガルスが、説明する。
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「一番強い魔法を、全力で撃ったら、どのくらいの威力なんですか?」
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シオンが、少し考える。
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「山を、消せるくらいか」
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「……は?」
ガルスが、固まる。
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「山を、消す?」
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「ああ。試したことがある」
シオンが、淡々と答える。
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「無人島で、一番大きな山を消した」
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「……」
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全員が、沈黙する。
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「嘘、ですよね?」
ガルスが、恐る恐る聞く。
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「いや、本当だ」
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「山を……消した……」
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ガルスの頭が、パンクしそうだ。
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「それって、Sランクでもできないですよね?」
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「さあ。Sランクと戦ったことがないから、分からない」
シオンが、首を傾げる。
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「……」
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バルドも、言葉を失っている。
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「シオン様は、自分がどのくらい強いか、分かっていないんですか?」
ガルスが、聞く。
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「分からない」
シオンが、正直に答える。
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「無人島には、比較対象がいなかったからな」
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「なるほど……」
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ガルスが、深く息を吐く。
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「とんでもない人を、助けてしまったな」
小声で、呟く。
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「でも、いい人だから、安心だ」
仲間の一人が、付け加える。
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「ああ、それは間違いない」
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昼過ぎ。
休憩を取っている時、別の話題になった。
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「シオン様、魔法の詠唱って知ってますか?」
ガルスが、聞く。
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「詠唱?」
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「ええ。魔法を使う前に、呪文を唱えるんです」
ガルスが、説明する。
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「例えば、火球なら『炎よ、集いて球となれ』とか」
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「そんなことを、言うのか?」
シオンが、驚く。
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「ええ。普通は必要です」
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「俺は、イメージだけで発動できる」
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「それが、無詠唱魔法です」
ガルスが、説明する。
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「高度な技術で、Aランク以上でも、できる人は少ないです」
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「そうなのか」
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「ええ。シオン様は、それが当たり前にできる」
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「……俺の常識が、ずれているのか」
シオンが、気づく。
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「五十年、一人だったからな」
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「そういうことですね」
ガルスが、納得する。
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「シオン様の常識は、この世界の非常識です」
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「なるほど」
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シオンが、苦笑する。
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「気をつけないと、驚かれるな」
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「もう、十分驚いてます」
ガルスが、笑う。
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午後。
また別の話題。
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「シオン様、重力魔法って何ですか?」
バルドが、興味津々で聞く。
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「空間を歪めて、重力を発生させる魔法だ」
シオンが、説明する。
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「空間を、歪める……?」
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「ああ。魔力で、空間そのものを操作する」
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「そんなこと、できるんですか?」
ガルスが、驚く。
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「できる。俺は、できる」
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「聞いたことないです、そんな魔法」
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「独自の技術だからな」
シオンが、答える。
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「五十年かけて、開発した」
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「五十年……」
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全員が、沈黙する。
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五十年の修行。
その重みを、改めて感じる。
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「シオン様は、天才なんですね」
バルドが、言う。
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「いや」
シオンが、首を振る。
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「努力しただけだ」
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「五十年の努力……」
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「それこそが、天才です」
ガルスが、言う。
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「普通の人は、五十年も続けられません」
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「そうか?」
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「ええ。シオン様は、特別です」
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シオンが、少し照れる。
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「そう言われると、嬉しいな」
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夕方。
野営地に着く。
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夕食を取りながら、雑談する。
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「シオン様、冒険者になったら、どんな依頼を受けますか?」
ガルスが、聞く。
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「何でもいい」
シオンが、答える。
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「色々、経験したい」
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「でしたら、まずは簡単な依頼から始めるといいですよ」
ガルスが、アドバイスする。
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「いきなり難しい依頼を受けると、危険です」
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「分かった」
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「それと、パーティを組むのもいいですよ」
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「パーティ?」
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「ええ。仲間と一緒に、依頼を受けるんです」
ガルスが、説明する。
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「協力すれば、効率がいいです」
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「なるほど」
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「シオン様なら、すぐに誘われますよ」
バルドが、笑う。
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「その実力なら、引く手あまたです」
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「そうか」
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シオンが、少し考える。
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「パーティ、か。悪くないな」
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仲間と一緒に、冒険する。
楽しそうだ。
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「楽しみだ」
シオンが、微笑む。
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夜。
シオンは、また見張りをする。
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「あと三日で、都市に着く」
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新しい生活が、始まる。
冒険者として。
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「どんな世界が、待っているんだろう」
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期待と、少しの不安。
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「楽しみだな」
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シオンは、星を見上げた。
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