エピソード4:同行開始
二日目の朝。
キャラバンが、再び動き出した。
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シオンは、相変わらず馬車の横を歩いている。
全く疲れた様子がない。
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「本当に、疲れないんですか?」
ガルスが、不思議そうに聞く。
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「ああ。これくらいなら、問題ない」
シオンが、答える。
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「すごいな……」
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ガルスは、Cランクの冒険者だ。
体力には自信がある。
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だが、シオンは別次元だ。
歩いているだけで、疲れない。
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「どうやって、そんなに体力をつけたんですか?」
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「修行だ」
シオンが、簡潔に答える。
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「やっぱり……」
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五十年の修行。
その成果が、これか。
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「俺も、もっと修行しないとな」
ガルスが、決意する。
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昼前。
キャラバンが、休憩を取る。
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バルドが、シオンに話しかける。
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「シオン様、魔物に遭遇したら、どうしますか?」
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「倒す」
シオンが、即答する。
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「そうですよね」
バルドが、安心する。
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「この辺りは、比較的安全です」
ガルスが、説明する。
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「だが、時々、魔物が出ます」
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「どんな魔物だ?」
シオンが、興味を持つ。
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「オーク、ゴブリン、時々オーガです」
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「強いのか?」
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「オークとゴブリンは、そうでもないです」
ガルスが、答える。
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「だが、オーガは厄介です」
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「Cランクでも、苦戦します」
仲間の一人が、付け加える。
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「なるほど」
シオンが、頷く。
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「もし出たら、任せてください」
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「ありがとうございます」
ガルスたちが、頭を下げる。
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午後。
森の中を進んでいると――。
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「待て」
シオンが、手を上げる。
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全員が、止まる。
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「どうしました?」
バルドが、不安そうに聞く。
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「魔物だ」
シオンが、前方を見る。
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「どこに?」
ガルスが、剣を抜く。
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「二百メートル先、木の陰に」
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「に、二百メートル!?」
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ガルスが、驚く。
そんな遠くから、気配を感じ取れるのか。
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「何匹だ?」
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「五匹。背の低い人間のような見た目だな」
-- シオンが、淡々と答える。
「おそらくそれはゴブリンだ」--
「どうします?」
ガルスが、聞く。
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「このまま進めば、襲ってくる」
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「俺が、片付けてくる」
シオンが、歩き出す。
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「あ、待ってください!」
ガルスが、慌てて追いかける。
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「いや、大丈夫だ」
シオンが、手を振る。
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「一人で、十分だ」
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そして、森の中に消えた。
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「……本当に、大丈夫かな」
ガルスが、不安そうに呟く。
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だが、その不安は杞憂だった。
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数秒後――。
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森の奥から、何かが飛んでくる音がした。
そして、ドサドサと倒れる音。
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シオンが、戻ってきた。
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「終わった」
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「え、もう……?」
ガルスが、呆然とする。
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「五匹、全部倒した」
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「速すぎる……」
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ガルスたちが、確認しに行く。
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ゴブリンが、五匹倒れていた。
全員、気絶している。
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「生かしてあるのか」
ガルスが、驚く。
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「殺す必要は、なかった」
シオンが、答える。
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「優しいんですね」
バルドが、感心する。
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「そんなことはない」
シオンが、首を振る。
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「ただ、無駄な殺しをしたくないだけだ」
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ガルスが、ゴブリンを見る。
外傷は、ない。
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「どうやって、倒したんですか?」
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「重力で、押さえつけただけだ」
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「重力……?」
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「魔法の一種だ」
シオンが、簡潔に説明する。
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「そんな魔法、見たことない……」
ガルスが、驚く。
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「独自の技術だ」
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「すごい……」
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キャラバンは、再び進む。
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夕方。
また野営地に着いた。
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焚き火を囲んで、夕食を取る。
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「シオン様は、魔法が得意なんですか?」
ガルスが、聞く。
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「そうだな」
シオンが、頷く。
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「どのくらい、使えるんですか?」
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「全属性、使える」
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「全属性!?」
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ガルスが、目を見開く。
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「普通、一つか二つしか使えないのに……」
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「五十年、練習したからな」
シオンが、淡々と答える。
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「五十年……」
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誰も、何も言えなかった。
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五十年の修行。
その重みを、実感する。
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「見せてもらえますか?」
バルドが、興味津々で聞く。
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「いいぞ」
シオンが、手を上げる。
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手のひらに、小さな炎が灯る。
次に、水が浮かぶ。
風が渦を巻く。
土が浮き上がる。
雷が、パチパチと火花を散らす。
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「すごい……」
全員が、見入る。
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「しかも、無詠唱だ」
ガルスが、呟く。
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「詠唱は、必要ないのか?」
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「俺には、必要ない」
シオンが、答える。
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「イメージだけで、発動できる」
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「……化け物だ」
ガルスが、小声で言う。
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シオンは、苦笑する。
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「いや、褒め言葉です」
ガルスが、慌てて付け加える。
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「ありがとう」
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夜。
シオンが、また見張りを買って出る。
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「ありがとうございます」
ガルスが、感謝する。
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「気にするな」
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シオンは、星を見上げる。
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「楽しいな、これ」
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人と話す。
人と旅をする。
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五十年ぶりの、この感覚。
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「悪くない」
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シオンは、満足そうに微笑んだ。
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**エピソード4 終**
**次回:エピソード5「世界の情勢」**




