エピソード3:商人との交渉
夜。
焚き火の周りで、皆が休んでいる。
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シオンは、バルドと二人で話していた。
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「シオン様は、どちらから?」
バルドが、遠慮がちに聞く。
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「遠くの島だ」
シオンが、簡潔に答える。
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「島、ですか」
バルドが、興味深そうに聞く。
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「どんな島でしたか?」
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「無人島だ」
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「む、無人島……?」
バルドが、驚く。
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「そこで、ずっと一人で?」
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「ああ。五十年ほど」
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「ご、五十年!?」
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バルドが、目を見開く。
周りで聞いていたガルスたちも、驚いている。
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「で、でも、シオン様は二十代に見えますが……」
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「長命種だからな」
シオンが、淡々と答える。
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「なるほど……」
バルドが、納得する。
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長命種。
エルフやドワーフのような、長寿の種族。
老化が遅い。
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「それで、無人島で何を?」
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「修行だ」
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「修行……」
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五十年も一人で修行。
想像を絶する。
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「それで、あの強さになったんですね」
ガルスが、感心する。
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「まだまだだ」
シオンが、首を振る。
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「え……」
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まだまだ?
あの強さで?
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全員が、絶句する。
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「謙遜ですよね……?」
ガルスが、恐る恐る聞く。
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「いや、本当だ」
シオンが、真面目な顔で答える。
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「まだ、完璧ではない」
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「……」
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完璧じゃない、と言う。
では、完璧になったら、どれほどの強さになるのか。
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誰も、想像できなかった。
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「ところで」
シオンが、話題を変える。
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「この世界について、もっと教えてほしい」
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「もちろんです!」
バルドが、乗り出す。
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「何から知りたいですか?」
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「国、について」
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「国ですか」
バルドが、頷く。
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「ここは、アルベリア王国です」
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「大きな国、か?」
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「大陸で三番目に大きい国です」
バルドが、誇らしげに言う。
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「他にも国はあるのか?」
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「ええ。大陸には、十五の国があります」
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シオンが、黙って聞いている。
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「今、平和なのか?」
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「比較的、平和です」
バルドが、答える。
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「戦争は、ありません。ただ……」
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「ただ?」
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「魔物が、問題です」
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「魔物、か」
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「ええ。森や山に、魔物が棲んでいます」
バルドが、説明する。
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「冒険者は、主に魔物を討伐する仕事をしています」
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「なるほど」
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「他にも、護衛や採集、探索など、色々な依頼があります」
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シオンが、頷く。
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「冒険者になるには、どうすればいい?」
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「ギルドで登録します」
バルドが、答える。
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「登録料は、銀貨十枚です」
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「銀貨、か」
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シオンは、お金を持っていない。
無人島では、必要なかったからだ。
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「お金は……」
シオンが、言いかける。
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「お金のことは、心配いりません」
バルドが、笑顔で言う。
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「命の恩人ですから、登録料は私が払います」
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「いや、それは……」
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「遠慮しないでください」
バルドが、手を振る。
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「シオン様がいてくださるおかげで、安心して旅ができます」
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ガルスたちも、頷く。
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「本当に、助かっています」
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シオンが、少し考えて言った。
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「分かった。借りにする」
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「はい、それでいいです」
バルドが、嬉しそうに笑う。
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「それと、都市の入場料も私が払います」
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「入場料?」
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「ええ。大都市に入るには、銅貨百枚必要です」
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シオンが、驚く。
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「入るだけで、お金がかかるのか」
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「ええ。大都市は、そういうものです」
バルドが、説明する。
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「治安維持や、防衛のための費用です」
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「なるほど」
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「ご安心ください。それも私が払います」
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「すまない」
シオンが、頭を下げる。
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「いえいえ」
バルドが、手を振る。
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しばらく、色々な話をした。
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魔物のこと。
ダンジョンのこと。
魔法のこと。
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シオンは、全てを真剣に聞いていた。
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「魔法は、どのくらいの人が使えるんだ?」
シオンが、聞く。
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「十人に一人くらいです」
バルドが、答える。
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「ただ、強力な魔法が使える人は、もっと少ないです」
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「どのくらい、強力な魔法が使えれば、強いと言われる?」
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「そうですね……」
バルドが、考える。
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「火球を、家ほどの大きさにできれば、かなり強いです」
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「家、か」
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シオンの火球は、山を消せる。
桁が、違いすぎる。
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「……俺は、どのくらいなんだろうな」
シオンが、小声で呟く。
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「え?」
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「いや、何でもない」
シオンが、首を振る。
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バルドは、聞こえなかったようだ。
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夜も更けて、皆が眠りにつく。
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シオンは、見張りを買って出た。
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「俺は、あまり眠らなくても大丈夫だ」
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「本当ですか?」
ガルスが、驚く。
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「ああ。任せてくれ」
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「ありがとうございます」
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ガルスたちは、安心して眠った。
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シオンは、焚き火のそばに座る。
星を、見上げる。
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「五十年ぶりの、人との会話だ」
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懐かしい。
楽しい。
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「悪くないな」
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シオンは、微笑んだ。
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