エピソード2:圧倒的介入
護衛のリーダー、ガルスは呆然としていた。
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「今の、何だったんだ……」
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目の前で起きたこと。
信じられない。
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素手で剣を受け止める。
そして、砕く。
手を上げるだけで、二十人を無力化する。
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「化け物、か?」
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いや、化け物でもこんなことはできない。
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「あれは……」
仲間の一人が、震える声で言う。
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「Aランク、いや、それ以上……?」
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Aランク。
冒険者の中でも、最上位。
国に数人しかいない。
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「まさか」
ガルスが、首を振る。
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だが、他に説明がつかない。
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商人が、男に話しかけている。
ガルスは、近づいて聞く。
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「お名前は?」
商人が、丁寧に聞く。
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「シオン」
男が、簡潔に答える。
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「シオン様、ですね。私はバルドと申します」
商人が、自己紹介する。
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「行商人をしております」
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シオンが、頷く。
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「それで、どこに向かっているんだ?」
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「辺境の大都市、ラルスへ向かっております」
バルドが答える。
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「仕入れの旅です。到着まで、一週間ほどかかります」
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シオンが、少し考える。
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「同行してもいいか」
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「もちろんです!」
バルドが、即答する。
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「むしろ、お願いしたいくらいです」
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これだけ強い護衛がいれば、安心だ。
バルドは、内心ホッとしていた。
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「ありがとうございます」
シオンが、頭を下げる。
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その姿を見て、ガルスは驚く。
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これほどの実力者が、こんなに礼儀正しい。
普通、強者は傲慢だ。
だが、この男は違う。
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「不思議な人だ……」
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バルドが、ガルスに声をかける。
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「ガルス君、治療魔法を頼む」
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「あ、はい!」
ガルスが、慌てて仲間のところに向かう。
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全員、傷だらけだ。
治療が、必要だ。
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「痛いな……」
仲間の一人が、うめく。
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ガルスが、治療魔法をかける。
傷が、ゆっくりと塞がっていく。
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「助かったな」
別の仲間が、言う。
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「ああ。死ぬかと思った」
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「あの男、何者なんだ?」
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「分からない。だが、とんでもない強さだ」
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全員が、シオンを見る。
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シオンは、馬車の横に立っている。
ただ、立っているだけ。
だが、その存在感は圧倒的だ。
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「Bランクの盗賊を、一瞬で無力化した」
ガルスが、呟く。
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「しかも、素手で」
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「魔法も、使ってなかったよな?」
仲間が、首を傾げる。
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「いや、使ってたと思う」
ガルスが、考える。
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「あの、見えない力。あれは魔法だ」
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「だが、詠唱も何もなかった」
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「無詠唱魔法、か……」
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無詠唱魔法。
高度な技術だ。
Aランク以上でも、できる人は少ない。
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「やっぱり、Aランクなのか?」
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「いや、もっと上かもしれない」
ガルスが、真剣な顔で言う。
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「Sランク、とか?」
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「まさか……」
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Sランク。
伝説の冒険者。
大陸全体でも、十人いるかどうか。
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「でも、あの強さは……」
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全員が、黙り込む。
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治療が終わり、キャラバンが再び動き出す。
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シオンは、馬車の横を歩いている。
馬に乗るか、と勧めたが、断られた。
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「歩く方が、好きなんだ」
そう言って、歩き続ける。
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疲れた様子は、全くない。
まるで、散歩でもしているかのように。
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「化け物だ……」
ガルスが、小声で呟く。
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バルドが、馬車の中からシオンに話しかける。
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「シオン様、何か知りたいことは?」
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「冒険者について、教えてほしい」
シオンが、答える。
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「冒険者、ですか」
バルドが、頷く。
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「冒険者とは、ギルドに登録した戦士のことです」
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「ギルド?」
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「ええ。冒険者ギルドと言います」
バルドが、説明を始める。
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「冒険者は、ランクで分けられています」
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「ランク、か」
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「F、E、D、C、B、A、そしてSです」
バルドが、指を折る。
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「Fが最弱で、Sが最強です」
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「Sランク、とは?」
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「伝説の冒険者です」
バルドが、尊敬の念を込めて言う。
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「一人で、軍隊に匹敵する強さです」
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シオンが、黙って聞いている。
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「シオン様は、冒険者になるつもりですか?」
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「そう考えている」
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「でしたら、ラルスで登録できます」
バルドが、提案する。
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「ギルドがありますので」
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「ありがとう」
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シオンが、頭を下げる。
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その謙虚さに、バルドは好感を持った。
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「いい人だ」
心から、そう思った。
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キャラバンは、夕方になって野営地に着いた。
今日は、ここで休む。
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焚き火を囲んで、夕食を食べる。
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シオンも、一緒だ。
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「美味いな」
シオンが、食事を食べながら言う。
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「ありがとうございます」
バルドが、嬉しそうに笑う。
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ガルスたちも、リラックスしている。
シオンがいるから、安心だ。
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「これから一週間、よろしくお願いします」
バルドが、シオンに言う。
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「こちらこそ」
シオンが、頷いた。
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こうして、旅が始まった。
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