エピソード16:到達点
四十五年と一ヶ月。
最後の五年が、始まった。
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「全てを、統合しよう」
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知識。
技術。
経験。
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全てを、一つにまとめる。
それが、完成だ。
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「やってやる」
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四十五年と三ヶ月。
毎日、訓練を続けた。
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魔力操作。
圧縮制御。
重力操作。
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全てを、同時に使う。
完璧に、制御する。
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「統合、できてきた」
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四十五年と六ヶ月。
ある日、全てが繋がった瞬間があった。
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「……これだ」
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魔力、圧縮、重力。
全てが、一つになった。
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境界が、消えた。
全てが、同じものだと分かった。
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「理解した」
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四十六年目。
統合を、完璧にマスターした。
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もう、意識しなくても使える。
呼吸をするように、自然に。
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「これが、真の習得か」
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四十六年と三ヶ月。
自分の強さを、測ってみた。
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島で一番大きな山に、向かう。
そして、魔法を放つ。
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統合魔法。
全ての理論を、込めた一撃。
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すると――。
山が、消えた。
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「……」
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言葉が、出ない。
ただ、呆然と見ている。
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山が、跡形もなく消えた。
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「強すぎる……」
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四十六年と六ヶ月。
威力に、恐怖すら感じた。
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「これが、俺の力か」
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五十年前とは、比べ物にならない。
いや、十年前とも、比べ物にならない。
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「別次元だ」
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四十七年目。
残り三年。
何をするべきか、考えた。
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「調整、か」
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力を、完璧に制御する。
使いたい時に、使いたいだけ。
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「それが、最後の課題だ」
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四十七年と三ヶ月。
出力の微調整を、練習した。
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最弱から最強まで。
無段階で、調整する。
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「完璧に、制御できるようになった」
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四十七年と六ヶ月。
最後の仕上げ。
全ての技術を、確認する。
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魔力感知。
魔力操作。
五属性魔法。
精密制御。
圧縮理論。
疑似重力。
空間操作。
理論魔法。
統合魔法。
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全てを、完璧に使える。
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「完成だ」
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四十八年目。
残り二年。
訓練は、終わった。
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「あとは、待つだけか」
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だが、何もしないのも、もったいない。
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「島を、整備しよう」
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家を、改良する。
道を、作る。
庭を、整える。
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「快適にしよう」
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四十八年と六ヶ月。
島が、綺麗になった。
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家は、立派になった。
道は、整備された。
庭には、花が咲いている。
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「いい場所だ」
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五十年、ここで過ごした。
思い出の場所だ。
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「名残惜しいな」
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四十九年目。
最後の一年。
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「もうすぐ、出られるんだな」
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五十年という条件。
ようやく、達成する。
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「長かったな」
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四十九年と六ヶ月。
最後の準備を、始めた。
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「文明圏に、戻る準備だ」
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服を、新しく作る。
動物の皮で、綺麗な服。
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髪を、整える。
髭を、剃る。
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「少しは、人間らしくしないとな」
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四十九年と九ヶ月。
川で、水面を見た。
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若い顔。
二十代後半に見える。
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「実年齢は、六十四歳か」
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長命種の恩恵。
見た目は、ほとんど変わっていない。
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「これで、文明圏に戻っても大丈夫だろう」
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五十年目。
ついに、この日が来た。
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無人島に来て、五十年。
女神との約束を、果たした。
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「やり遂げたな」
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朝、起きる。
いつもと同じ朝。
だが、今日は違う。
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「今日で、最後だ」
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家を出て、島を見渡す。
五十年過ごした、思い出の場所。
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「ありがとう」
島に、感謝を告げた。
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そして、空を飛ぶ。
重力操作で、自由に。
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島を離れる。
海の上を、飛んでいく。
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「さあ、行くか」
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文明圏へ。
新しい世界へ。
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五十年の修行を終えた、俺が向かう。
そこで、何が待っているのか。
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「楽しみだ」
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空を飛びながら、笑った。
心から、笑った。
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「強くなったぞ」
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誰にも負けない。
そう確信できる。
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無人島修行編、完。
次章へ、続く。
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