エピソード14:疑似重力の発見
三十五年と一ヶ月。
疑似重力の理論を、体系化することにした。
---
「なぜ重力が発生するのか」
---
魔力で空間を歪める。
歪んだ空間が、引力を生む。
---
「これが、基本原理だ」
---
だが、もっと深く理解したい。
数式で、表現したい。
---
「理論を、完璧にしよう」
---
三十五年と三ヶ月。
木の板に、図を描いていく。
---
空間の歪み。
重力の強さ。
魔力の量。
---
全ての関係を、図解する。
---
「見えてきたな」
---
魔力の量に比例して、重力が強くなる。
だが、単純な比例ではない。
二乗に比例する。
---
「これが、重力の法則か」
---
三十五年と六ヶ月。
重力の法則を、導き出した。
---
「シオンの重力法則、か」
---
自分の名前をつけるのは、恥ずかしい。
だが、他に名前がない。
---
「まあ、いいか」
---
この法則を使えば、重力を完璧に制御できる。
予測できる。
---
「理論の力だ」
---
三十六年目。
重力法則に基づいて、新しい技を開発した。
---
「重力球、か」
---
空間を球状に歪める。
中心に、強力な重力を発生させる。
---
全てを、吸い込む。
---
試してみる。
重力球を、作る。
---
すると――。
周囲の木が、引き寄せられた。
全てが、中心に集まる。
---
「すごい威力だ」
---
三十六年と三ヶ月。
逆に、反重力も作ってみた。
---
「重力を、反転させる」
---
押し返す重力。
全てを、弾き飛ばす。
---
試してみる。
岩に向かって、反重力を放つ。
---
岩が、吹き飛んだ。
遥か彼方まで。
---
「これも、使えるな」
---
三十六年と六ヶ月。
重力と反重力。
両方を、組み合わせてみた。
---
「引き寄せて、弾き飛ばす」
---
連続で使えば、強力な攻撃になる。
防御にも、使える。
---
「戦術の幅が、さらに広がった」
---
三十七年目。
次に挑戦したのは、局所重力だ。
---
「ピンポイントで、重力を発生させる」
---
体の一部だけ。
敵の足だけ。
武器だけ。
---
「精密な制御が、必要だ」
---
三十七年と三ヶ月。
局所重力を、練習した。
---
最初は、範囲が広すぎた。
だが、徐々に絞れるようになってきた。
---
今は、手のひらサイズまで絞れる。
---
「これなら、実用的だ」
---
三十七年と六ヶ月。
局所重力を、実戦で使ってみた。
---
獣の足だけに、重力をかける。
動けなくする。
---
完璧に、制御できた。
---
「精密だな」
---
三十七年と九ヶ月。
さらに発展させた。
---
「多重重力、か」
---
複数の重力を、同時に発生させる。
それぞれ、独立して制御する。
---
試してみる。
十個の重力球を、同時に作る。
---
全てが、安定している。
崩れない。
---
「できた……!」
---
三十八年目。
疑似重力を、ほぼ極めた。
---
重力、反重力、局所重力、多重重力。
全てを、マスターした。
---
「完璧だ」
---
三十八年と三ヶ月。
ある日、思いついた。
---
「重力で、飛べないか?」
---
自分に反重力をかける。
浮き上がる。
---
試してみる。
体に、反重力を。
---
すると――。
浮いた。
---
「……飛べる!」
---
空中に、浮いている。
重力から、解放されている。
---
「これは、すごい」
---
三十八年と六ヶ月。
飛行の練習を、した。
---
最初は、ふらふらだった。
だが、徐々に安定してきた。
---
今は、自由に飛べる。
空を、駆け巡れる。
---
「新しい世界だ」
---
島の上空を、飛ぶ。
見たことのない景色。
美しい。
---
「……綺麗だな」
---
三十九年目。
飛行を、完璧にマスターした。
---
速く飛ぶ。
高く飛ぶ。
急旋回する。
---
全てが、できる。
---
「自由だ」
---
三十九年と三ヶ月。
疑似重力の可能性を、さらに探った。
---
「重力で、物質を変えられないか」
---
極限まで圧縮すれば、物質の性質が変わるはずだ。
---
試してみる。
岩に、極限重力をかける。
---
すると――。
岩が、変質した。
硬くなった。
---
「できる……!」
---
三十九年と六ヶ月。
物質変換の研究を、続けた。
---
だが、これは難しい。
制御が、非常に繊細だ。
---
「もっと、研究が必要だな」
---
四十年目。
無人島に来て、四十年が経った。
---
疑似重力を、完全にマスターした。
理論も、完成した。
---
「ここまで来たか」
---
振り返ってみる。
四十年前は、何もできなかった。
水を探すのも、必死だった。
---
だが、今は違う。
重力を操り、空を飛び、物質すら変えられる。
---
「成長したな」
---
だが、まだ十年ある。
まだまだ、強くなれる。
---
「最後の十年で、全てを完成させよう」
---
最終段階が、始まる。
---




