エピソード12:失敗の連続
二十五年と一ヶ月。
さらなる圧縮に、挑戦した。
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「百五十層を超えたい」
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理論上は、可能なはずだ。
だが、実際にやってみると――。
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暴発した。
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ドン、という爆発音。
周囲の木が、吹き飛ぶ。
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「……ダメか」
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百六十層で、限界だった。
それ以上は、崩壊する。
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「なぜだ?」
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二十五年と三ヶ月。
何度も挑戦した。
だが、毎回暴発する。
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百六十層の壁。
これを、超えられない。
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「理論が、間違ってるのか?」
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いや、理論は正しいはずだ。
何か、見落としがある。
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「もっと、深く考えないと」
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二十五年と六ヶ月。
失敗を、詳しく分析した。
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暴発する瞬間。
何が起きているのか。
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魔力の流れを、観察する。
粒子の動きを、見る。
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「……あ」
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気づいた。
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圧縮しすぎると、粒子同士が反発し始める。
それが、暴発の原因だ。
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「反発を、抑えないと」
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二十六年目。
反発を抑える方法を、研究した。
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粒子を回転させる。
遠心力で、バランスを取る。
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「これなら、どうだ」
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試してみる。
粒子を回転させながら、圧縮する。
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だが――。
また暴発した。
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「ダメか……」
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回転だけでは、足りない。
他の方法が、必要だ。
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二十六年と三ヶ月。
色々な方法を試した。
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粒子の配置を変える。
圧縮の速度を調整する。
外部魔力の量を増やす。
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だが、どれもうまくいかない。
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「なぜだ……」
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焦りが、出てくる。
このままでは、進歩しない。
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「落ち着け」
深呼吸する。
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焦っても、仕方ない。
じっくり、考えよう。
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二十六年と六ヶ月。
一旦、立ち止まることにした。
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「基礎に、戻ろう」
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圧縮の原理を、もう一度見直す。
なぜ圧縮すると、威力が上がるのか。
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粒子の距離が縮まる。
相互作用が強くなる。
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「それだけ、か?」
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いや、他にもあるはずだ。
見落としている何かが。
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二十七年目。
研究を、続けた。
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失敗、失敗、失敗。
何度やっても、うまくいかない。
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「……くそ」
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初めて、壁を感じた。
本当の壁だ。
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今までも、壁はあった。
だが、いつも乗り越えられた。
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今回は、違う。
どうやっても、超えられない。
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「このままでは、ダメだ」
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二十七年と三ヶ月。
ある日、髪を切っていて気づいた。
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川の水面に映る、自分の顔。
まだ若い。
二十代に見える。
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「実年齢は、四十二歳か」
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長命種の恩恵で、老化が遅い。
見た目は、ほとんど変わっていない。
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「時間は、たっぷりある」
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焦る必要は、ない。
五十年のうち、まだ二十三年残っている。
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「じっくり、やろう」
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二十七年と六ヶ月。
失敗から、学ぶことにした。
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「なぜ失敗したのか」
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一つ一つ、記録する。
木の板に、全て書き留める。
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失敗のパターン。
暴発の条件。
限界の要因。
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「全てを、データ化しよう」
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二十八年目。
データが、溜まってきた。
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何百回もの失敗。
全てを、記録した。
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「パターンが、見えてきたな」
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ある条件下では、必ず暴発する。
別の条件では、安定する。
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「規則性がある」
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二十八年と三ヶ月。
規則性を、理論化した。
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「圧縮の限界式、か」
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圧縮率、粒子数、回転速度。
これらの関係式を、導き出した。
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「これで、予測できる」
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どこまで圧縮できるか。
事前に、計算できる。
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「失敗が、減るはずだ」
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二十八年と六ヶ月。
限界式を使って、再挑戦した。
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計算通りに、圧縮する。
百六十五層。
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すると――。
成功した。
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「できた……!」
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暴発しなかった。
安定している。
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「理論が、正しかった」
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二十九年目。
さらに圧縮を進めた。
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限界式に従って、慎重に。
百七十層。
百八十層。
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全て、成功した。
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「失敗から、学べた」
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失敗は、無駄じゃなかった。
全てが、糧になった。
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「これが、研究だ」
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二十九年と三ヶ月。
二百層まで、到達した。
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威力は、初期の千倍以上。
想像を、絶する。
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「ここまで来たか」
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だが、まだ限界ではない。
理論上は、もっといける。
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「次の十年で、さらに極める」
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三十年目。
無人島に来て、三十年が経った。
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失敗の連続を、乗り越えた。
理論を、さらに深めた。
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「成長したな」
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振り返ってみる。
三十年前は、何もできなかった。
魔力すら、感じられなかった。
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だが、今は違う。
魔力を極め、理論を構築し、限界を超えた。
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「まだまだ、上がある」
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次の二十年。
そこで、何を成し遂げるのか。
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「楽しみだ」
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新しい挑戦が、待っている。
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