エピソード11:圧縮理論の着想
二十年と一ヶ月。
理論の構築を、本格的に始めた。
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「圧縮とは、何なのか」
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今まで、経験だけでやってきた。
試行錯誤して、うまくいく方法を見つけた。
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だが、なぜうまくいくのか。
理論的には、どう説明できるのか。
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「それを、解明しよう」
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二十年と三ヶ月。
木の板に、図を描いていく。
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魔力の粒子を、丸で表す。
圧縮前と、圧縮後。
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何が、変わっているのか。
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「密度が上がる。それだけじゃない」
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粒子同士の距離が、縮まる。
それにより、相互作用が強くなる。
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「これが、威力の増加に繋がるのか」
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二十年と六ヶ月。
圧縮の段階を、分析した。
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層状圧縮。
魔力を何層にも重ねる方法。
今まで、これを使ってきた。
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だが、他の方法もあるはずだ。
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「螺旋圧縮、とか」
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魔力を螺旋状に巻き取る。
渦のように。
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試してみる。
魔力を、螺旋状に圧縮する。
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すると――。
安定性が、格段に上がった。
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「これは、いいな」
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層状圧縮よりも、安定している。
崩れにくい。
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「螺旋の方が、優れているかもしれない」
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二十一年目。
螺旋圧縮を、練習した。
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最初は、うまく巻けなかった。
だが、徐々にコツを掴んできた。
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綺麗な螺旋。
均等に、巻き取る。
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「美しいな」
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螺旋圧縮した魔力は、光り方が違う。
輝きが、強い。
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「質が、上がってる」
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二十一年と三ヶ月。
螺旋圧縮を、実戦で試してみた。
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火球を作る。
螺旋圧縮で。
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放つと――。
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岩山が、消し飛んだ。
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「……威力が、倍以上だ」
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層状圧縮よりも、遥かに強力。
同じ圧縮率でも、威力が全然違う。
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「螺旋圧縮、すごいな」
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二十一年と六ヶ月。
理論を、さらに深めた。
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「なぜ螺旋の方が、強力なのか」
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考える。
魔力の流れ、か。
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螺旋は、流れを作る。
一方向に、魔力が流れ続ける。
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「動的な圧縮だ」
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層状圧縮は、静的。
螺旋圧縮は、動的。
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動きがあるから、威力が上がる。
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「これが、理論の核心だ」
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二十二年目。
圧縮理論を、体系化した。
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圧縮の種類。
層状、螺旋、球状、環状。
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それぞれの特徴。
メリット、デメリット。
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「全てを、記録した」
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木の板が、何十枚にもなった。
全て、理論で埋め尽くされている。
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「俺だけの、魔力理論だ」
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二十二年と三ヶ月。
理論に基づいて、新しい圧縮方法を開発した。
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「複合圧縮、か」
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螺旋と層状を、組み合わせる。
二つの長所を、活かす。
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試してみる。
魔力を、螺旋状に巻きながら、層状にも重ねる。
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難しい。
二つを同時に、制御しなければならない。
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だが、できた。
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「……これは」
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威力が、さらに上がった。
螺旋圧縮の三倍。
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「複合圧縮、すごすぎる」
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二十二年と六ヶ月。
複合圧縮を、完璧にマスターした。
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これで、圧縮の理論は完成した。
あらゆる圧縮方法を、使いこなせる。
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「理論の力、すごいな」
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経験だけでは、たどり着けなかった。
理論があったから、ここまで来れた。
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「知識は、力だ」
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二十三年目。
次の課題を、考えた。
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「圧縮の限界を、超えたい」
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今の限界は、九十層。
だが、これを超える方法があるはずだ。
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「理論を、さらに深めよう」
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二十三年と三ヶ月。
限界突破の理論を、研究し始めた。
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なぜ、九十層で崩壊するのか。
何が、限界を決めているのか。
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「魔力の結合力、か」
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粒子同士の結合。
それが、限界を決めている。
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「結合力を、強化すればいい」
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二十三年と六ヶ月。
魔力の結合力を、強化する方法を見つけた。
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外部魔力を使って、補強する。
圧縮した魔力を、外から支える。
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「これなら、もっと圧縮できるはずだ」
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試してみる。
百層。
百十層。
百二十層。
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崩壊しない。
安定している。
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「できた……!」
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限界を、突破した。
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二十四年目。
圧縮理論を、ほぼ完成させた。
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層状、螺旋、複合。
そして、限界突破。
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「全てを、マスターした」
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二十四年と三ヶ月。
理論の完成度を、確認した。
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百五十層まで、圧縮できるようになった。
威力は、初期の数百倍。
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「ここまで来たか」
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だが、まだ先がある。
理論は、まだ完璧ではない。
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「もっと、深めよう」
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二十五年目。
無人島に来て、二十五年が経った。
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圧縮理論を、ほぼ極めた。
だが、満足はできない。
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「次は、失敗から学ぼう」
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成功だけじゃない。
失敗も、重要だ。
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「失敗を、分析する」
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新しい研究が、始まる。
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