エピソード10:限界への挑戦
十六年と一ヶ月。
限界への挑戦を、始めた。
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「崩壊する寸前まで、圧縮する」
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今までは、安全圏でやってきた。
五十層で、止めていた。
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だが、本当の限界はどこなのか。
それを、知りたい。
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「やってみよう」
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魔力を、圧縮していく。
六十層。
七十層。
八十層。
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魔力核が、震え始めた。
不安定になっている。
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「まだ、いける」
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九十層。
百層。
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そして――。
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バン、という音がした。
魔力が、暴発した。
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「うわっ!」
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吹き飛ばされる。
地面に、叩きつけられた。
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「……痛い」
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体中が、痛い。
だが、怪我はない。
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「百層が、限界か」
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それ以上は、崩壊する。
危険すぎる。
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「九十層までが、安全圏だな」
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十六年と三ヶ月。
限界圧縮を、繰り返し練習した。
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何度も暴発する。
だが、徐々にコツを掴んできた。
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圧縮しながら、安定させる。
回転させることで、バランスを取る。
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「これだ」
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十六年と六ヶ月。
安定した限界圧縮が、できるようになった。
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九十層。
これが、俺の限界だ。
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だが、威力は凄まじい。
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試しに、火球を放ってみる。
小さな、握り拳ほどの火球。
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だが――。
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岩山に、大穴が開いた。
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「……すごすぎる」
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今までとは、比べ物にならない。
桁が、違う。
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「これが、限界圧縮の力か」
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十七年目。
次に挑戦したのは、魔力の出力制御だ。
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限界圧縮は、強力だ。
だが、常に最大出力では、疲れる。
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「出力を、段階的に調整できるようにしよう」
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十段階に、分ける。
レベル1からレベル10まで。
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レベル1は、日常使い。
レベル10は、限界圧縮。
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「これで、使い分けられる」
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十七年と三ヶ月。
出力制御を、完璧にマスターした。
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瞬時に、レベルを切り替えられる。
思った通りの威力を、出せる。
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「コントロールが、完璧になった」
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十七年と六ヶ月。
次の課題は、持続時間だ。
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限界圧縮は、強力だ。
だが、維持するのが難しい。
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今は、数分が限界だ。
それ以上は、魔力が持たない。
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「もっと長く、維持したい」
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外部魔力の取り込みを、強化することにした。
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今までは、意識して取り込んでいた。
だが、これを無意識にできれば――。
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「常に、回復し続けられる」
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十七年と九ヶ月。
外部魔力の自動取り込みが、できるようになった。
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呼吸をするように、魔力を吸い込む。
意識しなくても、勝手に回復する。
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「これは、大きい」
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限界圧縮の持続時間が、延びた。
今は、一時間維持できる。
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「だいぶ、実用的になった」
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十八年目。
限界への挑戦を、続けた。
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魔力の外部循環。
体の外に魔力を出して、また取り込む。
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これにより、魔力の流れが途切れない。
常に、循環し続ける。
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「無限に、使えるようになった」
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十八年と三ヶ月。
ある日、気づいた。
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体が、変わっている。
筋肉が、さらについた。
引き締まっている。
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川で水面を見ると、若い顔が映る。
二十代前半に見える。
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「実年齢は、三十三歳だけどな」
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長命種の恩恵だ。
老化が、本当に遅い。
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「便利だな」
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十八年と六ヶ月。
限界への挑戦を、ほぼ極めた。
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圧縮率、九十層。
出力制御、十段階。
持続時間、無限。
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「完璧だ」
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十八年と九ヶ月。
次の目標を、考えた。
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「圧縮の理論を、もっと深く理解したい」
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なぜ圧縮すると、威力が上がるのか。
どういう原理なのか。
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「理論を、構築しよう」
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十九年目。
理論の研究を、始めることにした。
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「経験だけじゃなく、知識も必要だ」
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木の板に、図を描く。
魔力の流れを、図解する。
圧縮の過程を、記録する。
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「全てを、体系化しよう」
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十九年と三ヶ月。
独自の魔力理論が、形になり始めた。
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「圧縮理論、か」
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これを極めれば、さらに強くなれる。
理論があれば、応用が効く。
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「次の段階だ」
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二十年目。
無人島に来て、二十年が経った。
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限界への挑戦を、やり遂げた。
圧縮を、極めた。
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「ここまで来たか」
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だが、まだ満足できない。
もっと、深く。
もっと、高みへ。
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「次は、理論を完成させる」
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新しい挑戦が、始まる。
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