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【完結】地上でいちばん難しいバレンタインの贈り物 〜天使が天使に恋してます!?悪魔と軍師も混ざる秘密の奇跡〜  作者: 久茉莉himari


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9/16

【9】樽酒が開く、恋の扉。〜大天使、恋の階段、第一段突破〜

それから、二時間後――


ルシアンが、ずぶ濡れでヴィラのメインリビングへと入ると、

中は真っ暗で、二つの光しか見えない。


よくよく見ると、

リビング照明は最小限に落とされ、

テーブルの向こう側に、松明型の照明が、二本、離して置かれ、

灯されているだけだった。


そして、その松明型の照明の中央に、

ルチアーノが、日本のお祭りなどで使用される“はっぴ”を着て、

大きな木槌を持って、仁王立ちしていた。


「遅いッ!」


ルチアーノの声が、リビングに響く。


「……ルチアーノ?これは?」


ルシアンが、淡々と訊くと、

ルチアーノが木槌を担ぎ、

ジャパンのKABUKIのような口調で、話し出す。


「お前さん……おっと!勘違いしてねぇかい!?

恵方巻を食べれば……前哨戦が終わるとでも……!?

ちゃんちゃらおかしいぜ!

そこの、おい、ズッ友ルシアンよ!

前哨戦が終わったら……そう……祝杯を上げるのが、礼儀ってもんなんだぜぇぇええ!!」


「つまり、祝杯を上げる前に、私が泳いだのが失態だと?」


ルシアンの、無表情と、淡々とした返し。


ルチアーノが、大きく頷く。


「そう!

だが、俺様とォ〜ロクシー先生はァ〜……!

お前をおいて、祝杯を上げるような野暮じゃねえ!

ほらよっ!」


ルチアーノが、樽の蓋の中央に、木槌を振り下ろす。


すると、パカっと、蓋が二つに割れた。


そして――

暗がりから、ゆっくりとした拍手と共に、

ロクシーが現れた。


ロクシーが、ルシアンを、ジロリと見る。


「ルシアン……。

本当は、この樽酒を、あんたが割って、更にハッピー!ってなる筈だったのよ?

私の脚本を、最後まで聞かないで、勝手な行動を取るから……」


その視線と声は、

衛星観測で記録された地球の表面温度、約マイナス98℃より、冷たい。


ルシアンが、

「済まない……!」と頭を下げ、胸に手を当てる。


「アンジュちゃんにも、見せてあげたかったなあ……」


ポツリと付け加えられたロクシーの言葉に、

ルシアンが、ガハッと顔を上げた。


「アンジュさまは!?」


「……寝ちゃった」


心底、残念そうなロクシーの声。


その視線の先には――

ソファで、ブランケットに包まれ、

すやすやと眠っているアンジュがいた。


ルシアンが、アンジュに駆け寄る。


アンジュの真っ白な頬に、

ルシアンの前髪から、一滴の水が落ちる。


アンジュの長い睫毛が震え、

小さく、瞬きをする。


ルシアンには、それが、スローモーションに見えた。


アンジュが、微かに微笑む。


「……ルシアンよ……

なぜ、また、ずぶ濡れなのだ……?

これは……夢か……?」


小さな、小さな声。


ルシアンは、穏やかに答える。


「はい。アンジュさま。

これは、夢でございます。

どうか、ごゆるりとお休み下さい」


「……そうか……」


アンジュの瞳が、ゆっくりと閉じてゆく。


ルシアンは、恩寵を使い、一瞬で自分を乾かす。


そして、アンジュの規則正しい寝息がすると――

アンジュを、毛布ごと、抱き上げた。


アンジュの背中が、意図せず、指先に触れる。


まるで、指先がチリチリと焼けるように、痛い。


だが、それに動揺するよりも、今は守るべきものがある。


それは、アンジュの安らかな眠りの時間――





それから、ルシアンは一旦リビングに戻って来て、

「私が起こしてしまったから、アンジュさまのお休みが確認出来るまで、付き添っている」

と言い残し、アンジュの寝室へと戻って行った。


ルシアンの姿が、完全に消えると――


ルチアーノが、樽から柄杓で二つの枡に樽酒を注ぎ、

ロクシーに手渡す。


そして、ルチアーノが、

「ロクシー先生に!」と枡を掲げ、一口飲む。


ロクシーは、既に、グビグビと飲んでいる。


そんなロクシーに、

ルチアーノが、興奮気味に捲し立てる。


「流石、ロクシー先生でありますッ!

あのルシアンが、自分から行動するなんて……!

樽酒を選んだ理由を、お聞かせ下さい!」


ロクシーが、軍師の目になり、ゆっくりと語り出す。


「……あのね、ルシアンは大天使。

ちょっとやそっとじゃ驚かない。

まずね……あの“真面目が過ぎる”大天使思考を奪うことから、始めるの!」


「つ、つまり……!?」


ロクシーが、樽酒に口を付け、離すと、ニヤリと笑う。


ルチアーノの背筋が、反射的に、ぴんと伸びる。


「ルシアンは、知識としては持っていても、

樽酒を目にしたことは、無いんじゃない?

だって天使だからね。

そこで、第一のショック!

『これは何だ?何が始まってる?』という思考に導くの……」


そして、再び、枡を口元へ運ぶロクシー。


ルチアーノは、何も言えず、喉をゴクリと鳴らす。


「で、あんたが、やりたがってたから、やらせたけど……

あの変な喋り、ナシでも、説明すれば成立するのよ。

『まだ、脚本はあった』って確信を持たせることを……!」


ルチアーノの手が、小刻みに震え、

枡から、樽酒が跳ねる。


「そして……眠ってしまって、樽酒バンザ〜イを見られなかったアンジュちゃん!

……ルシアンは今、

“大天使を刺すニット”で、恥ずかしかってる場合じゃないと自覚する……!

アンジュちゃんのために、“自分から”行動を起こさないと、って。

そして……そうなった。

……でしょ?」


ウンウンと頷くことしか出来ないルチアーノ。


「つまり!

今夜、ルシアンは、“自分から動く”を覚えた!

小さな一歩でも、恋の階段を確実に、一段登ったってわけ!」


そして、ロクシーが、スッとリモコンに手を伸ばすと、

“KAWAII”が詰め込まれた空間が、光り輝く。


ロクシーが、スマホでミュージックをオンにする。


「このリビングは、完全防音!

今夜は、樽酒を飲み切るまで、飲んで踊るわよ〜!

もちろん、明日からの脚本は、完成してるわ!」


ルチアーノが、特大クラッカーを次々と鳴らし、

薔薇の花びらを、部屋中に散らして叫ぶ。


「ロクシー先生!最高であります!

ルシアンの恋の階段……素晴らしい表現であります!

リリカル〜♪ラブ❤️」


そして――

ロクシーに頼まれ、

「寝起きアンジュ」撮影と引き換えに、

樽酒を、ルチアーノが木槌で蓋に触れるだけで、割れるように、

まじないを掛けてやったイレイナは、

二人の馬鹿騒ぎを、水晶玉越しに見ながら言った。


「いつまで“はっぴ”着てるわけ……?」

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

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