【12】エレベーター作戦、始動。〜幸せだったからもういらないと、大天使が恋から降りた夜〜
そして、深夜二時――
ロクシーが、
自分の寝室でタブレットに向かう。
その向こう側には、
もちろんルチアーノとルシアンがいる。
「私とルチアーノが朝まで軍評定して導き出した結論――
『四人でプレゼント交換をし、
私とルチアーノよりもルシアンのプレゼントを際立たせ、
ルシアンのプレゼントがアンジュちゃんを刺す』
作戦は頓挫した」
ロクシーの声は低く、淡々としている。
まさに軍師。
ルチアーノが、
深紅のハンカチを握りしめて、
「……はいっ……!」
と、悔しそうに答える。
ロクシーが指を一本立てる。
「でもね……。
収穫が無かったわけじゃない。
アンジュちゃんが、
ルシアンを"大天使"としてしか見ていない、
と分かった。
でしょ?」
ルチアーノが即答する。
「……そうでありますッ……!
まさか、あの指輪を大切にしている理由が、
『大天使の誇りの証』とは……!
アンジュちゃんは敬虔なクリスチャン!
そこを失念しておりました!」
すると、ルシアンが静かに言った。
「私は大天使。
それは、どうやっても覆らない。
つまり、
アンジュさまに何をしようと、
大天使としてしか見てはもらえない。
結論は出た。
私はバレンタインには、
アンジュさまのおっしゃる通り、
プレゼントは渡さない。
だが、
アンジュさまは、
お前たちとのバレンタインを楽しみにしている。
だから、参加しよう」
「……ズッ友……!」
ルチアーノが小さく叫ぶ。
「お前、それで良いのかよ!?」
ルシアンは無表情――
ではなく、ふわりと微笑んだ。
ロクシーとルチアーノの目が見開かれる。
「私は昨日、幸せだった。
だから、
これ以上の幸せは、もう必要ない」
そして、
ルシアンがタブレットの前から去って行く。
「ロ、ロクシー先生……ッ……!」
ルチアーノが、
涙ながらにタブレットに向かう。
だが、ロクシーは揺らいではいなかった。
「イレイナの言った通りね……」
低く呟く。
「あの後、イレイナに確認したの。
あの指輪に、
何らかのまじないが掛かっていないか。
でも、答えはNOだった。
でもね―――」
ルチアーノの喉が、
ごくりと鳴る。
「イレイナは教えてくれたわ。
あんたのお見合いの舞踏会があったでしょ?
あの時、
ルシアンと二人きりで話したんだって。
ルシアンは、
"恋は誰にも止められない"ことを知ったし、
アンジュちゃんを
"永遠の恋人"だと思っていると。
あんたなら……
"永遠の恋人"に、
何をプレゼントしたい?」
ロクシーの、
良く磨かれたナイフのような視線に射抜かれ、
ルチアーノが震える声で答える。
「……お、俺様……
初恋もまだだけど……。
も、もし、
"永遠の恋人"がいたら……
片思いでも……
幸せでいて欲しいでありますッ……!」
ロクシーが頷く。
「そうよ。
だから、ルシアンは、
自分には意味の無い
バレンタインのプレゼント交換に参加するわけ!
……でもね、
相手が恋愛偏差値ゼロの相手でも――
プレゼントを渡せなくても――
心を動かせるとしたら?」
その瞬間、
ルチアーノに雷が落ちたような衝撃が走った。
身体をブルブルと震わせながら、
必死に言葉を紡ぐ。
――俺様はルシアンのズッ友だ……!――
そう、心を奮い立たせ。
「……では、その作戦をお聞かせ下さいッ!」
ロクシーが、
ゆっくりと口を開く。
「その前に……。
ルシアンに、
恋の階段をてっぺんまで登ってもらわないとね。
アンジュちゃんの心を動かすには、
ルシアンが本当の
"恋する一人の男"にならなきゃ無理!
上っ面の行動で、
人の心が動くと思う?」
そして、ロクシーは、
『アルファ・フォニケーション:IBU2500』――
驚異的な苦味を誇る、
カナダ・フライングモンキーズ社製のビールを、
グビリと飲んだ。
翌朝――
ロクシーとアンジュが泊まるヴィラで、
ルシアンとルチアーノを交え、
朝食を取っていると、
内線電話が鳴った。
ロクシーがさっと席を立ち、
電話に出ると、
一言答える。
「お通しして」
そして、
一分もかからず、
玄関ドアが開かれる。
「ロクシー!サンキュ!
バレンタインで逃げ場が無くてさあ〜!」
元気いっぱいの声の主は、
大学アメフトリーグの花形選手、
リオ・レヴァンだ。
二十歳にして、
スポンサー企業が10社付いている、
将来プロリーグ入りを約束されたスター選手。
そして、
続いて年配の男性の声。
「わしまで招待してくれるとは!
ロクシー、感謝するわい!」
元歴史教師にして、
今やUMAオタクが高じて
世界的ベストセラー作家になった、
アーチーボルト・ヘンダーソン。
イギリス、
ケンブリッジ大学で哲学の教授をしている、
リオの親代わりだ。
ロクシーが、
二人に弾んだ声で応える。
「いらっしゃーい!
もう、どこのヴィラも満室でしょ?
ルチアーノとルシアンのヴィラに
泊まってくれていいから!」
ルチアーノもテーブルから立ち、
二人の前に行く。
「よう!
リオ、お前はいつも元気だな!
元気が取り柄!良いことだ!
アーチーボルトも久しぶりだな!
お前も老けてない!
何よりだ!」
リオがにっこりと笑う。
「ありがとう、ルチアーノ!」
その時――
ルシアンの目の前から、
アンジュもふわりと席を立った。
そして、
リオとアーチーボルトの元へ。
「リオ、アーチーボルト!
久しぶりだな!」
輝くような、
アンジュの美しい笑みに、
リオとアーチーボルトが見惚れ、
何も言えなくなる。
その刹那――
ルシアンも、
立ち上がっていた。
ロクシーとルチアーノが、
素早く目配せする。
『恋の階段・第二段階・
エレベーター作戦開始』
と。
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