初配信いきまーす①
「えーっと、こんばんわ?」
房総ダンジョンに次元位相がまだ2日しか経過していない日の夜の事。俺は早速初配信を行おうとしていた。
こんなに早く俺が配信をしようとしたのには二つの理由がある。
一つはおかしな情報が拡散される前に正しい情報を伝えたかった事。これは早ければ早いほどいいからな。拡散した誤情報をかき消すのはわりと面倒だと思うので。
そしてもう一つは房総ダンジョンの調査に潜るのが明日になったからだ。明日の調査も配信する予定なので、それより先に説明配信をしておきたかったからである。
まぁいきなりすぎて準備が大変だったけど……
とりあえず配信機材自体はなんとかなった。というか協会の方に相談したら貸してくれた、ありがたい。ただ公式サイトで行う配信の仕方も配信の機材の使い方も分からなかったので、マニュアルと睨めっこすることになった。
それから服もだ。さすがに体型に会っていない服で配信に映るのは若干抵抗があったし、後ノーブラで映るのも……というわけで買い出し。変身後のコスチューム? あの恰好でありふれたホテルの一室から配信するのは拷問か何かだろ。
一応田舎ではあるがダンジョン周辺は探索者向けのショップがあるのでそこで何着か買いつけてきた。多分に脳内で騒ぐアイリスの影響で可愛いよりの服が多めになったが……まぁ似合うのは確かなのでまぁいいだろう。ここら辺りだと館山市、或いは少し足を延ばして君津辺りまでいけば選択肢はも増えただろうけど、あのサイズあってない服で遠出は無理ですわ。最寄りで服買ってそれから遠出するのは面倒くさすぎるしな。
というわけで、その買ってきた中で一番高かった服を身に纏い、俺はカメラの前に座っている。視線の先には配信画面。そこには、すでに3000人の視聴者数が表示されていた。
告知方法考えてなくて、昨日慌ててアカウント作って公式の情報公開設定にかえてSNS紐づけた上で配信告知したんでそんなに人は集まらないかなと思ったんだけど……結構集まったなぁ。
『こんばんわ!』
『マジで可愛い。好き』
『あれ、変身後のままなんだ?』
『私服可愛い!』
『やっぱり女の子だったんじゃん』
『今日は魔法少女コスじゃないの?』
『その状態でも生えてるんですか?』
『場所どこ? ホテルっぽいけど』
うん、コメント欄がカオスだ。
今回の目的である自分の素性に関してはコメントに答える感じで返して行くつもりだったけど、この状態でいきなりそうするとカオスさが増しそうなので、一応考えていた説明内容に切り替えることにした。
「まずは、自己紹介から。各務さんの配信見てた人は知っているけどトワと言います。ランクは4級……だったんだけど、つい先日3級に上がりました」
『お、おめでとう!』
『地竜倒して3級? 少なくても2級では?』
「あー、諸事情で地竜に関しては加味されてないんだ。次元位相に巻き込まれる前に倒したウェアウルフの討伐実績での昇級だと思う」
『諸事情気になる』
『もしかして探索者協会の闇!?』
「諸事象は俺の事情によるものなので、探索者協会に在らぬ疑いをかけるのはやめましょうね」
『トワちゃん、俺っ娘なんだ』
『刹那ちゃんの配信でも俺だったしな』
「まあ男なんで、一人称は気にしないで貰えると……」
こっちの姿の時だけ呼び方変えるかとも考えたんだけど、コメントの通りすでに各務さんの配信で俺って使ってたからそのままでいく事にしたんだよな。
『お胸にそんな立派な物を携えておいて男?』
『またまた御冗談を』
『そういや声今完全に女の子だよね、前はもうちょっと低かったし』
『実際の所、どっちの姿が本来のトワちゃんの姿なの?』
うん、まずはやっぱりそこからだよな。
「勿論男の姿が本来の姿だよ。俺が帰還者だってのはもうみんな気づいていると思うけど、今の姿に関しては、俺が流れ着いた異世界が影響してるんだ。まずはそこから説明していこうか」