お着替ええタイム
「変身シーンって、男に戻る時の?」
『そそ』
『見たい見たい!』
『見せられない理由とかなければ見たい!』
「見せられないってことはないけど……」
別にちょっとえっちな創作物みたいに一度裸に……いや、戦闘用衣装に"変身"するときは一度着ている服が"アイリス"が生み出している空間(るーの持つ亜空間の極小バージョンみたいな奴)に格納されるから一度全裸になってるんだけど、あれは光に包まれているから外からは見えないし……今回のように体を切り替えるだけならそもそも来ている服はそのままになるから裸になる事もない。ついでに一応光には包まれるし。
「でも、わざわざ見たいもんかね? アニメみたいな変身シーンにはならないぞ?」
『魔法少女の変身シーンを見たくない男の子なんていません』
『女の子もいません』
主語がデカすぎると思います。でもまぁ……
「別に構わないけど」
率先して見せようとは思わないけど、別に正体ばれている今となっては隠す意味もないからな。リスナーが望むなら見せる事に強く抵抗する気はないのでそう答えると、コメント欄が沸き立つ。
「……だとしたら、準備が必要だからちょっと待って」
『準備?』
『なんか儀式が必要だとか?』
「いや、着替える。この格好のまま戻る訳にもいかないし」
今日の配信が終わってから戻るつもりだったので、今は普通に女の子の格好だからだ。
普段家でのんびりしている時はラフな格好だけど、配信するときは割とちゃんとした格好で映っているからな。男物に着替えないと。
『別にそのままでも良くない?』
『刹那ちゃんの配信でみた姿を考えると、その格好でも全然問題ないって!』
「いやだよ男に戻った時この格好だったら女装になるだろ」
俺は女性に変身は出来るけど、男の娘ではないんだよ。
『そういうもんなの?』
『普段普通に来ているのに気になるんだ』
「女の体で女物着るのと男の体で男物着るのは大分違うだろ」
向こうの世界では普通に女物を着ていたので、変身している時に女物の恰好を着る事には全く気にならないけど。それとこれとは話が別なのである。
「というわけで、着替えるからちょっと待って」
『はーい』
『公開生着替え!?』
「するわけないだろ」
無茶な事をいうコメント欄に呆れてジト目を向けてから、カメラの外へフェードアウトする。ベッドの方は映さないようにしているので、そちら側に移動。まずは男物の服を用意して、それから身に纏っているものを一つずつ外していく。カーディガン、スカウト、ブラウス。ソックス……も一応脱いで、と。
最後にブラとショーツも脱ぐ。というか着替える理由の7割方がこれだ。スカートとかはまだしも、女物の下着を着けたまま男の姿に戻りたくない。だって変態チックに感じるじゃん……あと別に体のサイズは大きく変わらないとはいえやはり女性体と男性体では結構体つきはわかるので、いろいろ合わなくるし。
脱いだ下着は他の服と一緒にとりあえずベッドの上に放っておく。どうせ後で洗濯に回すし。
それから用意した男性服に変えてゆく。……そういえば女性体で男物の下着をつけるのは抵抗ないな、元が男だからか?
着るのは下はズボン、上はシャツと厚手のトレーナー。下着付けてないから、あまり生地の薄い服は着れないからね……とりあえずこれで準備OK。カメラの前に戻る事にする。
「お待たせ」
『あっ、そういうラフな格好もかわいい』
『なんだかドキドキします。いろんな意味で』
『配信している部屋の中で着替えをするとか、トワちゃんはエッチだなぁ』
うるさいよ、画面に映してなかったんだから問題ないだろ。……冷静に考えると、あのタイミングで自身とかきてカメラ倒れてたら大惨事になって社会的に死にかけてたな? 今後は気を付けよう……いや配信中に着替えなんてそうそうするつもりはないけど。
とりあえず今回はそんな事故も起きなかったので良し。それよりこの状態であまり長くいたくないのでとっととする事しよう。
「それじゃ、転身するよ。──アイリス」
《はいな》
呼びかけに応じてアイリスが出現した杖を手に取り、俺は久々となる言葉を口にした。
「──転身」




