命の洗濯のお時間②
まぁ彼女が気にしないのであれば問題ない。俺は湯舟に身を委ねて、お風呂を堪能する事にする。
ちなみになんだけど、俺達と東風ヶ瀬さんは示し合わせて旅館にやってきたわけじゃない。
俺達は一緒に入れるでかい風呂に入る目的で、東風ヶ瀬さんは現地の美味し者食べてから帰りたい! とそれぞれ旅館を取った結果、それが被っただけである。それが帰りの船の中で発覚したため、今こうして過ごしているというわけだ。部屋は勿論別々だけどね。
尚旅館が被ったのは奇跡の一致というわけではなく、協会と提携している施設の中で今回のジェットフォイルの寄港地に一番近かったからという単純な理由である。
「くー、後で頭お願いね」
「はいはい」
昔っからるーは俺に頭洗われるの好きなんだよなぁ。こっちに戻ってきてからは再会した後もしてやってないし、今回は本当に頑張ってくれたのでそれくらいのサービスはしてあげよう。
るーも洗うのが確約されるならせかすつもりはないようで、俺の回答に「ん!」と満足気に頷くと目を瞑って湯舟を堪能し始めた。半日程前のドタバタしていたのとは正反対の、まったりした時間が流れる、
そうしてしばらくは温泉を堪能していると、ぱちゃぱちゃとお湯で手遊びしていた東風ヶ瀬さんがこちらに向けて口を開いた。
「そういえばトワちゃん」
「はい? なんですか?」
「トワちゃん達はこの後どうするの?」
この後。どうするかっていえばまずは家に帰る訳だけど、そんな分かり切った事は効いてこないだろう。という事はもうちょっとスパンの長い話だろうと辺りを着けて、その質問に答える。
「しばらくはお休みですねー、今回で結構カートリッジ消費しましたし」
「あーそっか、トワちゃん達それがあるんだっけ」
東風ヶ瀬さんの返しの言葉に、俺は頷く。
今回、結構消耗が大きかった。というかあのクソでかい船にかなり強固な結界を張ったのがデカかった。戦闘自体はそこまでがっつりしていないからそっちの消耗はそれほどでもないんだけど……あとるーの方も救助活動やら何やらで何度も転移をしていたので、そこそこ消耗している。一応もう一回くらいダンジョンアタックできるくらいの余力はあるんだけど……
ちなみにずっとあの黒い機体をぶちのめしていたハズの東風ヶ瀬さんは全く疲れが見えない。さすが最大魔力と呼ばれる実力者である。
「燕三条のドロップ品とか、今回の協会からの報酬とかでで金銭的にはちょっと余裕があるんで。少しのんびりしようかなって」
さすがに本来は一級に依頼するクラスでの仕事だっただけあって、今回の報酬は大分美味しい。燕三条のドロップ品もそこそこの値段で引き取ってもらえたし、配信絡みの報酬もある。俺とるー二人分くらいならしばらくはダンジョン潜らなくても普通に暮らしていけるクラスの収入だ。これだけあればこっそり考えていた計画も実行できる。
というか、せっかくトップクラスで知名度の高い探索者がいるんだし、せっかくだから聞いてみようかな。
「東風ヶ瀬さん、こっちからも聞きたい事……というか、相談したい事があるんですけどいいですか?」
「いーよー。お姉さんに聞いてみなさい」
「実は今住んでいるところが手狭何で引っ越そうかと思ってるんですが、物件選びに」
「え、引っ越すの?」
言葉の途中でるーが驚いた顔で割り込んできた。
「別に今のままでもよくない?」
「さすがに手狭すぎるだろ……」
当然一人暮らしのつもりだったし、こちらの世界に戻ってきたばかりでものも少なかった今の部屋は1Kしかない。部屋自体はそれなりに広いけどベッドも一つしかないし、プライベートも何もない空間である。なのである程度金銭的に余裕ができた段階で引っ越しする事は当然考えていたのだ……そもそも自室と配信部屋分けたいし。予定ではもうちょい後の予定だったけどデカい収入があったし、いいタイミングだと思う。
「んー、私は不満ないけど」
「プライベートになりたい時間は欲しいだろ」
「別に思わないけど……でもくーがそういった時間も欲しいなら我慢する。ダンチョーの思いで」
「はいはい、ありがとなー」
ファーマント時代からべったりのるーではあるが、さすがに俺が一人になりたがっている時まで無理して一緒にいようとはしない。不満そうではあるけど……その頭を煩雑に撫でてやると、濡れた手で撫でられらにも関わらず、るーはむふーと鼻息を荒くして表情を和らげた。
「本当に仲いいねぇ」
長い付き合いなんで。
「で、引っ越し先の事? 相談したい事って。私物件とかあんまり詳しくないけど」
「いえ、具体的な物件を紹介して欲しいとかじゃなくて。なんか探すときの注意点とかあれば教えてもらえるくらいの軽い感じで」
「あー、成程。そういう意味だったら……大き目のダンジョンの側がオススメだね」




