命の洗濯のお時間①
「やっぱり、でかい風呂はいいよな……」
「ん!」
足を延ばし深く体を沈めて、顔以外の場所から湯の熱に何かを吸いだされるような感覚を得ながらつぶやいた言葉に、すぐ真横に陣取ったるーが短く同意を返してくる。ウチの風呂も滅茶苦茶狭いってわけじゃないけど、さすがにこんな寝そべるような体勢とれるほどではないし。
──俺とるーは今、旅館でファミリー向けの貸し出し風呂を堪能していた。ファミリー向けとはいえ人数でいったら10人以上は余裕で入れる結構な広さの湯舟である。
まぁファーマントで俺達の住んでいた場所ってお城みたいな豪勢な所ではあったので、ここより更に広かったんだけどさ。
ちなみにそれだけ広いのに、るーはきっちり俺の隣に陣取っている。もうちょっと広さを有効活用しようぜ……
さて、今俺達がここにいるのは隣にいる相棒が騒いだからである。何故そこまで一緒に風呂に入りたがるのか。
あの場所、佐渡島ダンジョンは今回の一件で再度封鎖されることになった。理由は勿論あの穴、というか下層で起こった出来事である。
開いたあの穴自体は、休暇に入ろうとしたところで呼び出されたらしい閉じる事に特化した術を持つ一級探索者の"錠前師"によって塞がれたんだけど──塞いだのは中層の方だけだった。というか現地への移動はるーのテレポートで行った関係で俺達も一度あの場所まで戻ったんだけどさ。ゲート自然消滅してたんだよね。時間経過で閉じたのか別の要因で閉じたのかは謎なんだけど……
ただ、波多野さん曰くマナの状況は穴が開いていたところと変わっていなかったらしいので……再調査が済むまで閉鎖となったわけだ。そして俺達の契約は今回の探索だけだったのでお役御免というわけである。
いや閉鎖はするけど人材を絞って調査は行う訳で、継続しての依頼を受けたんだけどね? るーの能力とか滅茶苦茶有効だしさ。だけど俺達の場合はコストパフォーマンスの悪さもあるし、長期拘束は避けたいのでひとまずはお断りさせて頂いた。ただるーのポイント設定をそのままにしておけばいつでも駆けつけることが出来るので、必要になったら随時再契約ということで話はまとまった。
ちなみに俺達以外だと波多野さんとリリアンジュさん、荒木さんはそのまま残留。合流した錠前師や他にも呼び寄せられる一級探索者と共に調査を継続するのだろう。ダンジョンの安定化を行っていたはずの大魔導も合流する用だ。まぁ異世界に関しての知識に関しては間違いなくこの世界でトップだからね……過労死しないように気を付けて欲しい。……まぁ彼女が合流してくれたおかげで俺達はひとまずの離脱をすることが出来たともいえるけど。
で、残りの東風ヶ瀬さんなんだけど──
「ん~、ひさびさにここの温泉入るけど、気持ちいいわね~」
何故か今一緒に俺達と風呂に入っていた。
「あの……本当にいいんですか?」
「んー、何がぁ?」
風呂なので、俺も含めて全員全裸である。俺達に一足遅れて湯舟に入って来た東風ヶ瀬さんも当然同様で、湯舟の縁に身を預けながらその裸体を堂々とさらけだしている。
「さっきも言いましたけど、俺中身男ですからね?」
「貴女自分ので見慣れているでしょー」
「それはそうなんですけど」
「そもそも貴女のが一番立派じゃない?」
……いや、それにどう返せばいいのよ。
確かにるーは全体的に小柄だし東風ヶ瀬さんもスレンダーな体系なので、この中だと俺が一番大きいのは事実なんだけど(ちなみに余談だが、リリアンジュさんは割とご立派なものを携えておられました)
「だよね」
「ええい、やめんか!」
どう返そうかと考えていたらるーが横から人の胸を突っついてきたので振り払う。なにしとんねん。
「あはは、本当に仲いいよね、二人とも」
そんな俺達の様子を見て東風ヶ瀬さんがけたけた笑う。まぁ下層で忙しくなるまではほぼべったり俺に張り付いてたからな、るー。
「ま、気にしないよ。というか貴女そもそも裸見ても何も感じないでしょ?」
「何も感じないというと語弊がありますけど、まぁ欲的なあれはないですね」
何せこちとら7年間女の体で生活していた上に、周りにいたのも全員女である。体を見て綺麗だなとかスタイルいいなとかと思う事はあっても、性欲が湧いてくるようなことはなかった。
……うん、よくないね? このまま女性として暮らしていく気ならともかく俺は男に戻って暮らすつもりなんだから、あまりいい傾向ではないと思います。うう、こっちの世界に戻ってきてからリハビリ期間中みたいなものだったけど、結局3か月程度でこっちの体に戻ってからそのままだからな……
「うん、視線的に嫌なものも感じないし、私は気にしないよ?」
「……なら別にいいんですけどね?」
外見女とはいえ中身が男だと嫌でしょ? と思うからの確認なので、当人が気にしないならまぁいいか。じっさい全く気にしている様子もないしなぁ。




