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下層を脱出へ


「白銀の巨人って、今回の作戦にも参加しているあれですか?」


俺の問いに、波多野さんは頷く。


「力の質や流れが同種だ。ほぼ間違いないと思う」


先程中層で奮戦していたあの機体……あと横殴り野郎もそうか……あの機体と同種、ということは彼女達が暮らしていた世界が燕三条ダンジョンのベースだったって事か。MAD(ばかげた)アイテムって基本元の世界からの漂流物のはずだしな。


《こちらの世界で言うと、"オラクルキューブ"っていうらしいわよ、これ》


なんで英語で伝えてきたのかわからんが、直訳すると神託の立方体って意味か? ……神ねぇ……


《私は神の意思そのもの! こんな奴とは格が違うわ!》


いや、はり合うな。


「とにかく、これさえ持ち出せれば、ここから離れる事は構わないんだよね?」


改めて再確認するとアメルとラメルは完全に同じタイミング・同じ動作でコクリと頷いた。


「ふむ……トワさん、これ君の結界で上手く運べるかな」

「できますけど……それよりルーティエの方が確実ですね。呼び出します」


俺の結界で包めば運べるけど、箱のサイズが無駄に結構でかいから運びずらそうだし。

波多野さんにそう断って、インカムを操作しルーティエへと連絡入れる。


「るー、今」

『そっち行けばいい? 今場所どこ? すぐに向かうよ!』

「待て待て待て! るー、ステイ!」


早い早い話が早すぎる! 結論からいえば求めるのはそうなんだけども! ほら、突然俺が大きな声だしたからアメル達が驚いているじゃん!


とりあえず波多野さん含め皆に大丈夫と手で合図して(よく考えたら波多野さんはともかく異世界人の二人がハンドジェスチャーで理解してもらえるかは怪しいが、まぁアイリスが伝えてくれるだろう)


『むー、何?』

「いや、まずそっちの状況を教えてくれ」

『今怪我人を地上に搬送してきたところだよ、これで大きい怪我を負っている人は全員送ったかな』

「そうか、お疲れ様。戦況は」

『リリアンジュサンが爆破しまくってたから殆ど掃除は終わってる。今はリリアンジュサンとでっかい鎧の人で残党狩りしてる』

「ってことはもうるーがそっち抜けても問題ない?」

『ないよ! そっち行く? 行く? 行く?』


存在しない尻尾をぱたぱたと振っているるーの姿が目に浮かぶようだ。……るーはファーマントにいた頃も割と俺にべったりではあったけど、さすがにここまでじゃなかった気が……数か月とはいえ離れていた時期があったからかなぁ。再開してからもうそれなりに立つんだけど。まぁ別に嫌なわけじゃないからいいか。


「ああ、こっち来て欲しい。さっきと同じ場所に飛んだら船の甲板に来てくれ。そこまで迎えに行く」

『うん、すぐ行く…………ついた!』


はえーよ。


「ちょっと迎えに行ってくるんで待っててください」


秒でこちらにやってきたと思われるるーに苦笑いしつつ俺は波多野さんにそう断って、俺はアイリスに跨ると甲板へと急いだ。


◇◆


合流したるーに亜空間にオラクルキューブを箱ごと格納してもらい、再び甲板へ戻ってくると東風ヶ瀬さんと荒木さんがやってきていた。


「……あいつら全部片づけたんですか?」


見れば空には穴は開いたままだった。ただ、次々と現れてきていた黒い機体の姿は周囲にはなく、穴の向こう側から新たにやってくる気配はない。その光景に二人にそう問いかけると、荒木さんは首を振った。


「うんにゃ、途中からこっちの方に向かってこず別の所に飛んでいく奴等がいやがってよ」

「さすがにそれまで対応する余裕はなかったから放置したんだけど……」

「……何かをされたようですね、()()()()()


戦っていた二人の言葉に続けてそういったのは波多野さんだった。その眉間に大きな皺を寄せて。


「この場に充満するマナの質が、コアだと思われるものが発していたものと同じになっている。──これじゃコアを探すのは困難だ」


ダンジョンの核となるコアに近くなっているという事は、この場所のマナがベースとなっている世界のものにより近づいたということだ。あの空中に開いた穴から異世界のマナが流れ込んだ結果かもしれないが……飛び去った機体が何かをしたのか? でも何が目的で?


《侵略の為前哨基地じゃない?》

「は、し……!」

「おはしがどうしたの、くー? おなかすいたの? 何か食べに行く?」


そうじゃねぇよ。

思わず侵略と口に出しそうになってしまったが、すっかり忘れていたんだけどドローンの配信入れっぱなしにしてたんだわ。その状態で口にするにはちょっと過激なワードだったので、咄嗟に言葉を切れたのは良かった。


というかどういう事だよ、アイリス。


《二人の世界を侵略していたのがのあの機体を送り込んできた世界らしいから。そんな世界なら、この世界を侵略してきてもおかしくないんじゃない?》


そりゃ可能性はあるかもしれないけど……場当たり的すぎないか? どちらかというと今回の襲撃でアメル達を何とかする事はできないと判断して、次の襲撃の為の橋頭保を作ったという方がありえるんじゃ?


《そうかもー》


いや軽いな。


《ただの予想だもの》


まぁ。そうか。


「どうしたの? 大丈夫?」

「あ、なんでもないです」


アイリスと脳内でやりとりしていたせいで黙り込んでいた俺を心肺たのか顔を覗き込んできた東風ヶ瀬さんに合わせてそう返す。うん、とりあえずこの件は後回しだ。完全に予想だけの内容の上に配信に乗せるのは問題ありそうな内容だしな。後でアメル達から聞き出した内容を伝える時間があるだろうから、その時に一応一つの考えとして伝えておくくらいでいいだろう。それよりも、だ。


「俺達はこの二人を連れて下層から脱出しますけど、全員撤退ということでいいんですかね?」

「……それでいいと思う。僕たちではゲートを閉じる事はできないし、マナの状態がこれじゃあダンジョンコアの破壊も現実的じゃない」

「それに俺らもさすがにちょいと疲れたからな。さすがに後続が来たらしんどいわ」


肩をぐるぐる回しながら荒木さんがそういったけど、あれだけの大群を相手にしてたのにちょい疲れたで済むんですか貴方。


東風ヶ瀬さんも余り疲れた様子は見せてないし、さすが1級の中でのトップ層というのは伊達じゃないか。


「ルーティエちゃん、この船とかも格納できたりしない?」

「さすがに大きすぎて無理。テレポートならさせられないことはないけど、さすがにこのサイズだと消費が大きいからやりたくないなぁ」

「置いて行っていいでしょ。他に重要な物はないんだよね?」


アメルとラメルの方にそう問いかければ二人はコクコクと頷く。重要物がないならひとまずこれは放置でいいだろう。必要があれば後で協会の方でなんとかしてくれればいいと思う。


東風ヶ瀬さんも特にこだわりがあるわけではなかったらしく、二人の頷きを見たらそっかとすぐに納得していた。


「じゃあ、下層からは撤退で。皆、OKだね?」


アメルとラメルを除いた全員が頷く。


「どこに飛べばいい? 中層? 一気に地上まで飛ぶ?」

「いや、まずは下層のポータルへ。一応、レベルではあるけれど"隠蔽"付きの結界をポータルに張る」


房総ダンジョンで張ったものと同じ奴だ。どれだけの効果があるかはわからないが、やらないよりはやっておいた方がいいだろう。


「それで、それが終わったら中層に飛んでリリアンジュさんと合流でいいと思うんですが、どうでしょうか?」

「うん、それでいいと思うよ。異世界人の二人をいきなり地上に連れて行くのもアレだしね」

「了解です。それじゃるー、頼むよ」

「ん! 後でお風呂ね!」


こだわるな、おい……それはしばらくお待ちくださいな。まぁ或いは帰りにどっかの個室風呂付の温泉旅館でも泊まるかね?










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