船の乗組員と実は有能なアイリス
「何かあるんですか?」
その違いに疑念を感じそう問いかけると、返事はすぐに帰って来た。
『いえ、ちょっとトラブルが生じておりまして。しばらくここから離れるわけにはいかなくなりそうなのですわ。まぁ私が抜けても防衛は可能なので、一度そちらへ行きますわ。迎えに来ていただけますか』
「了解です。るー、ちょっとリリアンジュさん迎えに行って来て」
「ん。今度はちゃんとまってて」
「今回はすぐ戻るだろ? 待ってるよ」
「ん。じゃ、行ってくる」
もう一度頷いてから、再びるーの姿が消える。いやぁ、こういうイレギュラーが起きた時は、本当にるーの存在は助かるなぁ。
とりあえず待ち時間の間に、再び周囲の戦況を確認する。2階へ登る方のルートに関しては白銀の機体が動いてるし、戦力もあるから即座に動く必要性はなさそうだ。先ほどこの近郊で起きていた戦いは刹那さん達のグループが合流した事による完全に優勢に傾いていた。問題はその間の領域で起きている戦闘か。リリアンジュさんが来たら彼女はそういった戦場の敵や現状浮いている機体を優先して落としてもらって、俺とるーは怪我人の救助と搬送にまわるのがいいかな。
「ただいま、くー」
おっと、るーが戻ってきた。ディバインアームズの後ろには、リリアンジュさんを乗せている。
彼女は周囲を見回してから口を開く。
「あちらに降ろしてくださいな」
そういって彼女が指ししめしたのは俺が考えた場所と一致していた。あの辺りが一番数がいるからな。こちらのほうに視線を向けてきたるーに頷き返し、俺達はそちらへ向けて移動を開始する。
「そういえば、トラブルってなんなんですか?」
その移動の最中、そう聞いてみる。
「波多野さんがあの船の中から人を見つけたらしいのですわ。だけどどうやら帰還者ではなかったらしくて……」
「成程、それで通訳可能な能力者待ちになってるんですね」
可能性としては考えていたけど、乗組員はどうやら元地球人ではなく異世界人だったようだ。となれば、当然言葉が通じない。るーがいきなりこっちの言葉話せてるのはアイリスのおかげだしな。となると数少ない精神感応系の術者を連れてこないと意思の疎通もできない──
《私が出来るけど》
ん?
《言葉が通じない相手との意思の疎通なら、私ができるけど?》
マジで?
《マジでも何も、久遠は経験しているじゃない》
……そうだった!
ファーマントの異世界転移した時にアイリスを受け入れたら向こうの言葉の知識もらえたけど、その前からアイリスとは意思の疎通できてたんだよな。要するにテレパス系の能力があるってことだ。まぁそれくらいあるか、自称神だし。
《自称じゃないわよ!》
はいはい。
まぁそれはともかく、だ。丁度リリアンジュさんが指定した場所に到着したので地面に足を降ろす彼女にアイリスの事を告げると、ならすぐにでも向かって欲しいと言われた。
確かに意思の疎通ができないままだと更なるトラブルが起きる可能性もあるし、あの戦場から避難させることもできない。ダンジョン内で異世界人の遭遇をした場合検査がすむまで地上には連れて行かないというルールがあるので外へ連れ出すわけにはいかないが(るーはダイレクトで俺の所に来てしまったので話が別)、例えば中層に連れ出すだけでも話が違ってくるだろう。そうすれば房総ダンジョンの時のように隠蔽の結界も使えるしな。
「今の状況を見れば、こちらはわたくしとルーティエさんがいれば大丈夫でしょう」
「了解しました。るー、下層に輸送だけ頼む」
「えっ」
なんかるーが悲しそうでこっち見て来たんだけど。
「またくーと別々……」
「状況的に我慢してくれ」
この状況下だと、るーは動き回ってもらわざるを得ないからな。それはるーもちゃんとわかっているらしく彼女はこくりと頷いたうえで口を開く。
「終わったら頑張ったご褒美頂戴ね!」
はい? ……まぁなんかうまい飯でも食わせて……
「一緒にお風呂! こっちきてからまだ一回も入ってないもん!」
やめろ! 一応配信入れっぱなしになってるんだから、またプチ炎上するだろうが!




