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中層の戦況


『聞こえてますわ』


背後で爆音やら甲高い音やら響いているので戦闘自体はまだ続いてそうだけど、喋り方がお嬢様口調だから焦るような事態にはなっていないかな。


『そちら、状況どうですの?』

「まだ全体は把握できてませんが、怪我人も出てるし良くはないですね。──あ、ちょっと大きい音でます」

『へ?』


リリアンジュさんの声が聞こえると同時に轟音が響く。黒い機体の内の一機に衝角型の結界張って突撃したのだ。房総ダンジョンで使ったのと同じ奴。


ただあの時に比べると圧倒的に加速が足りてなかったので、威力は比較にならない。背面から胴体中央に突っ込んだが貫くにはいたらず、恐らく胴体の3分の2くらいを貫いたくらいで完全に勢いが止まり、俺は突き刺さった状態で静止した。


けどまぁ、外側の装甲をぶち抜いただけで充分である。


突き刺さった先端部分から枝葉が伸びるように結界を四方へ伸ばし、機体の内部をズタズタにする。それだけで機体は先ほどと同様に内部から爆散した。……刺さったままやったので俺も爆発に飲み込まれたけど衝角型の結界は自分を覆うように展開しているので、まあノーダメである。


『ものすごく近くで爆音したけど……?』

「あー平気、無傷です」

『そっち、手助けいりそうかしら?』


話が早いね。


「今ルーティエが負傷者を地上に搬送しているのですぐにそっちに向かえませんけど……そっちは動けそうなんですか?」

『全員は動けないけど、一人くらいそっちに回しても問題なさそうな状況ですわ。穴から出てくる数も減ってきましたし』


まだ断定はできないが、あの黒い機体は無尽蔵に出てくるわけはないようで少し安心する。


「とりあえずルーティエ戻る前に情報集めます」

『了解ですわ』


視界に映る中に、あの穴は見当たらない。この階は荒野なんだけど地面の起伏や巨大な岩、謎のデカい樹木等があり視界の通りがそれほど良い訳じゃない。……さっきの面々にもう少し情報を聞けば良かったとも思ったがまぁいい、ここの機体を片付けて戦闘していた人たちに聴こう。


そう思って視線を振れば、見覚えのある姿の女性が自身の持つ武器で機体の右腕を大きく跳ね上げているのが見えた。黒い機体はその一撃によってバランスを崩し、そこに他の面々からの攻撃が集中する。


──これまでにダメージが蓄積していたのか、コアな部分にクリーンヒットしたのか、それで黒い機体が動きを止めた。


丁度いい、これでこの辺りの機体がいなくなった。そして話を聴くなら顔見知りの方が手っ取り早い。俺は再びアイリスを加速させて、一撃を加えた後大きく飛びのいていた女性へと距離を詰める。女性もこちらには気づいていたようで、こちらに視線を向けると手を上げて合図をしてきた。


「トワさん! 助かったわ!」


そう、その女性は刹那さんだった。


「そちらは大丈夫だったの?」

「大丈夫です。それより簡潔にこちらの状況を教えてもらえますか?」


のんびり世間話をしている状況ではないのは刹那さんも当然わかっているので、コクリと頷いて短く状況を説明してくれた。


下層と同様に黒い穴が開いた事。ちなみにこちらは地上で開いたらしい。そして黒い機体が出現しているのも同様だけど、下層程の数は出現していないようだ。実際下層と同じ勢いでこられたら壊滅的ダメージを受けていた可能性がある。ただ出現したのがこの次の層へと探索の手を広げた辺りで、探索の為にそれぞれ散開しているど真ん中辺りに出現したせいで、一時期混乱に陥ったそうだ。ただ、後衛部分──上の階へのルート付近は確保できているらしい。なので刹那さん達は先行して分断された探索者達のチームの救援に後方から賭けつけて来たらしい。


……先ほどのように、準一級や二級クラスの火力だと黒い機体は複数人でとりかかって何とか一体倒せるというレベルだ。高火力の術を使えるものもいるだろうが連中図体はでかいものの動きが早いし遠隔攻撃も持っている。出の遅い術ではなかなか難しいだろうから、楽な話ではないだろう。


なのに後衛部分がそれほど苦も無く安全を確保できているのは、二級の中に特効持ちがいたからだ。


以前話した通りマナにはそれぞれ性質があって、腕のいい術士はそれに合わせて魔力を調整して魔法を使っており、また元々のマナの質とかでダンジョンによって得意不得意というのもある。もの凄く単純にういえばゲームでよくある〇〇属性は〇〇属性に強いみたいな奴だ(実際はそこまで単純な話でもないけど)


んで、その中でも特に相性の強い魔術が使える人物を特効持ちというんだけど……


なんと、以前燕三条のダンジョンで俺に絡んできた例の機体──あれがこの黒い機体の特効持ちだったそうである。実際一度上空に戻って確認したら、荒野の上で黒い機体を切り捨てている白銀の機体が見えた。さすがに一撃ではないようだけど、荒木さんのように数撃で倒しているように見える。実際数は下層に比べると数が少ないし、これならなんとかなりそうではある。


あ、ちなみに白銀の機体に乗っているのは例のアホ……蔵元じゃないぞ。そもそもあいついま免停中だしな。その後に発見した二級の探索者の方だ。


そのまま全体の戦況を確認すれば、まだ各所で戦闘は行われている。白銀の機体は……他の面子の退路の確保と上の階に黒い機体を向かわせないためか、あまり大きい範囲で動いている様子はない。見た感じ白銀の機体以外にも上の階への経路部分には戦力があるようだからあそこが抜かれる心配はなさそうだけど……他の個所で行われている戦闘を見る限りやはり人では借りたい。


「くー、待っててって言ったのに!」


刹那さん達はすでに別のチームの救助に向かった(先ほど見かけたもう一つの戦場の方だ)ので俺は天井付近で飛行したままリリアンジュさんに再び連絡をしようとすると、すぐ横にるーが姿を現した。……別にすぐ飛んでこれる距離なのにわざわざテレポートしてきたのか……。


「ちゃんと見える場所にいたでしょ」

「あそこで待っててていったのに……」

「状況的にそんなわけにはいかないでしょ」


そもそも俺が同意する前にテレポートしちゃったし。


「まぁとにかく搬送お疲れ。ちょっとリリアンジュさんに連絡する」

「ん」


るーも別に怒っている訳ではなくただのじゃれつきみたいなものなので、続けた言葉には素直に頷いてこちらにピタッと横並びになって動きを止める。


一度きった通信はすぐに繋がったので、俺はリリアンジュさんに刹那さんから聞いた話と、今目にしている光景を伝える。


『なるほど……それはやっぱりわたくしは行った方がいいですわね』


ただそれに対する反応は、先ほどと違いどこかためらいを感じさせるものだった。

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