救援
中層の5階、4階、3階と降りていくときは歩いて進んだ場所の上空を、今度は高速で通過していく。
それぞれの階がそれなりの広さがある中層だが、飛行に全振りした状態なら大して時間はかからない。出現するモンスターもすでに把握済みだから飛行型や地上から攻撃してくるモンスターも無視し、回避してただただ上へと突き進む。
そして2階に到着すると、視界に映る状況が一変した。
広がる荒野のあちこちで、黒い機体が地上に攻撃を行っている。その攻撃の先には、探索者達が──っていうか倒れてない!?
一番近い位置で戦っている集団の中に地面に倒れている姿があり、そちらに向けて銃口を向けている黒い機体が目に入った。それに気づいた瞬間、俺はディバインアームズをそちらに向ける。
「……っ、セーフ!」
飛行しながらっその人影の周囲に張った結界は、ギリギリ間に合った。放たれた銃撃は、結界に弾かれ拡散する。
「くー、穴あけるよ」
安堵の息を吐いた俺のすぐ横に寄せてきたるーが、そう端的に伝えてくる。その意図を理解して頷きだけ返せば、るーが俺の前に出て黒い機体の方へ突っ込んでいく。
俺達の存在に気付いたらしい黒い機体が銃撃を放ってくるが、もっと激しく高速な銃撃の雨の中でさえ戦ってきた飛行状態の俺達があの程度の攻撃にあたるいわれはない。るーは軽々とその一撃を回避すると黒い機体の懐に飛び込み手を伸ばす。
ただそれだけで、黒い機体の胴部……丁度腹のど真ん中辺りに穴が開いた。るーの放った術だ。空間を一時的に断つ能力で、黒い機体の腹部を抉ったのである。もっとも開いた穴はせいぜい直径数十cm程度。黒い機体は一瞬動きを止めたものの、すぐに立ち直り俺やるーに攻撃を放ってくる。
だけど、俺としてはその穴で充分だ。
るーが明けた穴の中に棘付きの鉄球のような結界を発生させる。そしてそれを即座に巨大化させると、黒い機体は内部から爆発を起こした。
……よし。
外側の装甲はそれなりの防御力を誇るが、内側から攻めればその装甲も意味がない──そうるーは考えたのだろう。だから俺が結界を張るための穴をあけた。
るーのこの術を使えばアイツ自体を両断する事も可能だけど、それだとカートリッジに溜めたマナのコストがかかるからね。
結果としては大当たりだ。内部から爆発を起こした機体はいくつものパーツに別れ、地上へと落ちた。俺とるーはそれを一瞥してから、倒れている人影の方に近寄る。
倒れていたのは20代半ばくらいの女性だった。息はあるようだけど、意識がない。けがの程度はわからないけど……装備品も大分ボロボロになっている。恐らく黒い機体の銃撃の直撃を受けたんだろう。自身の魔力で耐えて消し飛ばされはしないものの、ダメージは消しきれなかったというところか。
「すまん、助かった!」
「裕美、無事か!?」
声と共に、男性二人がこちらの方へ駆け寄ってきた。女性の名前らしきものを呼んでいるので、チームを組んでいる仲間だろうか。
「意識を失ってる。回復できる人は?」
駆け寄ってきた二人にそう問いかけたが、二人は揃って首を振る。
「回復術を出来るのは裕美だけなんだ」
……よりによって、回復役がやられたのか。周囲を見回せば他にも探索者の姿があるけど、準一級や二級の人の能力は把握してない。その中から回復能力者を探すよりは……確か地上に待機しているスタッフの中に回復術が使えた人間がいたハズだし、回復術以外でも普通に医者などの治療班がいたはずだ。
ダメージの程はわからないけど、顔色は良くないように見える。もし内臓とかにダメージうけていたらまずいかもしれない。
「今から彼女を連れて地上へテレポートする。貴方達はどうします?」
そう男性二人に声を掛ける。見れば男性の内片方も腕に大きくダメージを負っているように見えたし、もう一人の男性は仲間がやられたせいか表情に余裕がない。彼らが一緒に言ってくれれば説明などにまでるーを取られることはないからと問えば、彼らは頷きを返してきた。
「おっけ。るー、頼む」
「ん。ここで待っててね、すぐ戻るから」
そうと決まればすぐ動く。俺の言葉にるーは頷くと、即座に3人の姿と共に姿を消した。恐らく救護班の所まで運べばすぐ戻ってくるハズだ。1分もかからないだろう。
周囲では他にも戦いが起きている。るーはここで待っててといったが、さすがにそこまでの余裕はない。まぁ見える範囲にいれば問題ないだろう。目についた二つの戦闘の内、複数機と戦闘を繰り広げている方へ向けて飛行をしながら、俺はインカムを操作して通信を開く。
「リリアンジュさん、聞こえますか」




