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黒の軍勢


叩きつけられる光という形を取った力の奔流が結界によって散っていくなか、ちらりと周囲の気配を探ればさすがに皆一級の探索者だ、全員がきっちり反応を見せていた。東風ヶ瀬さんと周囲に強い魔力を展開しているし、波多野さんと荒木さんは大きく着弾点から離れた位置に飛び退っていた。そしてリリアンジュさんは結界の下側に、背中の翼を大きく広げて展開していた。恐らく自身と俺達を守ってくれるつもりだったんだろう。能力は知っていても俺の防御能力の強さがどの程度かは把握できていないだろうしな。


ちなみにるーが全く無反応だったのは俺に対する信頼の証だろう。


それにしても今の一撃、空の穴の向こう側から来たよな? という事はあの穴の向こうにはまだ何かいるということだ。あの船の仲間か? 問答無用で攻撃をしかけてきたのを考えると、我々にとってロクな相手じゃないのは確定だろうけど。


「また来る」


今度はるーからそう告げられ、俺は頭上に張った結界を更に強化、広げる。先ほどの一撃で俺の実力を読み取ったか、今度はリリアンジュさんの翼は展開されず、再び穴の向こうから光が出現する。


──が、今後は光はこちら側には振ってこなかった。


光の放たれた先は、俺達の居場所から離れた位置だった。具体的にいえば、船が不時着した方向だ。放たれた光は船からほんのわずかに離れた場所に着弾する。


そして2度目の砲撃と共に、その砲撃の主が穴の向こうから姿を現した。


それは黒い光沢を放つ人型のロボットだった。燕三条で横殴りしてきたアイツの機体に似ているが、あちらは比較的鋭角的なデザインだったのに対し、それは流線形の丸みを帯びた形状だった。サイズ的には10M前後はあるか? そんな機体が、5つほど穴の向こう側から出現し、そのうち2体はこちらに銃口を向け──


次の瞬間には、一つは武器を持った腕が爆散し、一つは鋭く細く伸びた光の翼に貫かれた。


「明らかに敵意しかないし、やむなしよね?」

「協会のマニュアル的のも問題ありませんわね」


動いたのは東風ヶ瀬さんとリリアンジュさんだった。

とはいえ口ぶりの割に攻撃は武器を構えている部分に絞っているあたり、まだ判断を迷っているのだろうか。状況がわからないからな……


そしてその会話の間にも状況が変わる。穴の向こう側から次々と同型の機体が出現してくる。そうしてそれらのうち半数はこちらへ、半数は船の方へと攻撃を開始する!


「こいつら、船の味方じゃねぇのか?」

「明らかに攻撃しているから違うっぽいね……どうする?」


波多野さんの問いに、応答を返したのはリリアンジュさんだった。


「あの船の乗組員が帰還者(リターナー)であるなら、あの船を護る必要があると思いますわ」

「あっちのポジションがわからねぇが……少なくとも仕掛けてきているこいつらは敵だ、ひとまずこいつらの敵っぽいあっちは守るか……走るぜ」

「あの船の所に行くの? だったら跳ぶけど。いい?」

「跳ぶって……いや、そうか。頼む」

「ん」


るーの能力をおもいだしたのか波多野さんがるーの問いに答え、るーが頷いた次の瞬間には視界が切り替わっていた。


視線の先には空の穴。そして今も穴から出現を続けておりその数はすでに軽く2桁を超えている黒い機体。それらがこちらへと飛来しつつこちらへ銃撃を放ってくる。


「船、守ります」


今度は宣言して、結界を貼る。張ったのは俺達を含めて船全体を守るようにだ。船はすでに何発か被弾はしていたが直撃はまだなかったようなので、乗組員がいたとしても無事、なハズだ。まだ姿を現さないけど……ちとサイズがでかいからそれなりに消耗するが、船のどのあたりに乗組員がいるかわからないからな。


……火力もそれなりに高い。この勢いで攻撃を受け続けるのは……


などと俺が考えている間に、東風ヶ瀬さんが術を放つ。それらの術は的確に3つの機体を捉え──その全てが爆散した。


火力高ぇー。


「ここまでしてくるなら、もう容赦はいらないわよね」


怒っていらっしゃる? まぁいきなり銃撃受けたらそれも止む無しだけど。


「というか、どんどん増えやがるから潰さねぇと不味いだろコレ」


わりと近接特化であまり遠距離への有効な攻撃手段はないらしい荒木さんはそう口にしつつ、まだ動いていない。ただ鍬を構えたので突っ込む気だろうか?


「あの穴を塞がないと不味いですわ。どれだけ増えるのかというのもありますが、そもそもアレが異界とつながっているのであればいつその影響が出てもおかしくないですもの」


そこまで語って、リリアンジュさんは荒木さんと東風ヶ瀬さんの方に視線を向ける。


「東風ヶ瀬さんは足を止めて銃撃してきている機体を優先。荒木さんはこちらに向かってくる機体を叩き落してもらえますかしら」

「おう、任せろ」

「任されたよ!」


応答と共に荒木さんは鍬を構え駆け出し、東風ヶ瀬さんは次の術を練り始める。そんな二人の様子を追う事もなく、こんどは彼女は俺と波多野さんの方へ向き直る。


「トワさん、あなたはこの結界を維持。わたくしたちを守る事は考えなくて大丈夫ですわ」

「了解です」

「波多野さんは、船の中の要救助者の探知を」

「わかったよ」


波多野さんが船の方へと駆けていく。中に乗りこむつもりだろうか。


「わたくしは、外と連絡を取りますわ。恐らくあの穴を塞げるとしたら、大魔導か……可能性として錠前師くらいしかいないハズ」


……大魔導は、どうだろうか。少なくとも空間に関する術なら俺は大魔導よりるーの方が上だと思っている。そのるーが不可能なものを彼女が塞げるだろうか? もしかしたらそういった技術の知識があるかもしれないけど……それよりも"閉じる"という魔術特性を持つと聞く錠前師の方が可能性はある気がする。


「コアの位置が特定できているなら、そちらを破壊すれば状況は変化するかもしれないけど……今の状況は前例がない。指示を仰ぐわ」

「私は?」

「ルーティエさんは、いざとなったら退避や戦力の輸送で動いてもらうわ。今は力を温存しておいて」

「ん。わかった」


俺達を除けば一番最年少(もしかしたら俺を入れても一番下かも?)のリリアンジュさんが司令塔の役割をこなし、俺達全員の行動が指示された。やる事が決まれば熟練の探索者達だ、それぞれがすぐに動き出す。といっても俺がやることは船を護る結界を貼る事だけだけど──


「はぁっ!?」

「ぴっ!?」


突然すぐ横でドスの効いた声が響き、俺は小さく悲鳴を上げた。





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