引きが悪いTS魔法少女
「とか言ってます」
アイリスが語った事をそのまま皆に伝えると、即座に反応したのはリリアンジュさんだった。
「アイリスさんってトワさんが行っていた世界の神の一部みたいな存在なのですわよね?」
「まぁ当人曰くですけどね」
《事実よー!》
「そんな存在が言っているんだもの、やっぱり消し去るべきではないのかしら」
「その判断はこっちじゃできないなぁ……とりあえず今の状況を連絡は入れておくよ、ドローン経由で見てるだろうけどね」
そこまで口にして、波多野さんは少し離れた場所に移動する。連絡をするためだろう。
「まぁどうするにしろ、下層に降りてから答えを出すでいいだろうけどな」
「そうだねー」
荒木さんの言葉に東風ヶ瀬さんがコクコクと頷く。
「……そうですわね」
それに関しては、リリアンジュさんも反論はないようだ。そもそもダンジョンを消すには房総ダンジョンで大魔導達がやったように下層の中からコアとなるものを見つけて破壊しなくちゃいけないわけだから、下層にいくのは確定だもんね。
そんな感じで下層について予測などを話し合っていると、通信が終わったのか波多野さんがこちらの方に戻ってきた。
「やっぱり現状では判断材料が足りないそうだよ。一応上層部に話は通しておくとはいってたけど」
「そこの上層部でちゃんと検討してくれるといいのですけど」
「まぁ私達探索者は協会に雇われているようなもんだし、従うしかないよ~」
「事が起きているわけじゃねぇからこっちで勝手にやるわけにはいかねぇからな。とっとと下行こうぜ」
「ああ、ルーティエさん。念のため中層ゲート前でテレポートのポイント設定するようにお願いしてくれるかい? 房総ダンジョンみたいなことがおきたら面倒だからね」
「うん、わかったー」
《ちゃんと警戒しつつ潜りなさいよ、久遠。さっきまでの気が抜けた感じじゃだめだからね》
解ってるよ、ちょっと面倒な状況になってきているみたいだしな。まだまだキャリア短いのに面倒な状況に遭遇しすぎじゃない? 俺。
◇◆
その後の行程に関しては特に大きなトラブル事もなく、相変わらず俺自体は何もすることがないウチに俺達は下層へと到達した。波多野さんの指示通りポータル前でるーがテレポートのポイントを設置して下層へと突入したわけ、だが。
「……暇だな」
「暇ね~」
「気を抜きすぎじゃないかしら? お二方」
言葉の通り実に退屈そうに歩いている荒木さんと東風ヶ瀬さんを、リリアンジュさんが呆れた声で窘める。ただその気持ちはわからなくもない。いや俺はダンジョン潜ってからずっと暇してるけどな?
中層はさっき話した通り出現するモンスターが他のダンジョンに比べると多めな感じだった。結局このダンジョンの中層は5階層あったんだけど、下に降りるほど数も増える感じだったのだ。
だけどこの下層に降りてからは、殆どモンスターと遭遇してないのだ。まぁフィールドがクソ広いから単純にエンカウントしていないだけかもしれないけど……
一応現在は波多野さんの「多分コアはこっち、かな?」という意見を採用して(コア自体が捕捉できているわけじゃないけど、マナの濃さである程度の予測はできるらしい)、そちらに向かって真っすぐ向かっているんだけど……正直拍子抜けかな、って気がする。
下層はここに限らずクソ広いのが基本だし、俺とルーで空中から探索してきましょうか? という意見も出したけど、却下された。何が出てくるかわからないから、危険だというリリアンジュさんや荒木さんの意見によるものだ。いや俺達も充分強いですからね? 燃費は悪いけど……
そうやって移動をし始めて、もう一時間以上経過しているわけだが……ここまで何のイベントもなしだ。
「モンスターどものレベルを図るためにも、もうちょいモンスター共が出てきてほしいんだがなぁ」
「こっちから仕掛けるにしても、姿すら見えないってのはねぇ。これはこれで異常よね」
「確かにそうですね。動物の類すらみないのはちょっとおかしい」
東風ヶ瀬さんの意見に俺は同意する。俺はダンジョンの下層は房総ダンジョン経験はないけど、こんな動くものがいないような場所じゃなかった。
「中層に比べても極端だよね。ここまでマナの濃度が高い方だともっとモンスターや動物は生み出されていておかしくないハズなんだけどなぁ」
「ここまでいろいろと異常なのに平和そのものなの、逆に怖くなりますわね。なにかとんでもない事でも起きたりしそうで」
リリアンジュさんがそう口にした瞬間だった。
《久遠! 上!》
脳裏にアイリスの声が響くと同時、頭上の方からピシという何かにひびが入るような音と共に。強大な力が大きく歪む気配を感じた。




