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中層の森

向かった森は、豊か、という表現が合う場所だった。


密度はそこまで濃くないが、そこら中に見たこともない果物のようなものを生らせた樹々が立ち並び、足元には山菜やキノコに似た植物が生えている。


その実りの多さに比するように出現した多数の動物型のモンスターを一掃した後、荒木さんと東風ヶ瀬さんは喜々としてそれらの植物に手を伸ばした。荒木さんは地面に生えている植物やその地面に触れ、東風ヶ瀬さんは丁度いい高さに生っていた果物に手を伸ばすとそのままがぶりとかじりついた。


……うわぁ、何の躊躇もなくいくんだ。何の情報もない異世界の果実を、空腹で死にそうだとかそういった状態でもないのに躊躇もなくかじるのなんて、勇者や大魔導以外にいないだろう。


その果物を齧った東風ヶ瀬さんなんだけど、その結果顔に浮かんだ表情は微妙だった。


「不味かったですか?」


そう問いかけてみると、東風ヶ瀬さんは首を振る。


「ううん、味はまぁまぁで悪くはないかな。だけど……」

「だけど?」

「なんというか、味が交じり合っているというか……変な感じ」

「そりゃ、ここの土のせいかもしんねぇなぁ」


東風ヶ瀬さんの答えに、そう口を挟んだのは荒木さんだった。彼は手に握りこんでいた土をパラパラと落としながら言葉を続ける。


「土の質がぐちゃぐちゃだ。異なる環境の土を複数混ぜて作ったようなもんになってやがる。当然マナも一緒だ。だろうよ、仁」

「そうですねぇ。多分単純に二つのダンジョンの土を混ぜてもこんなにはならないだろうってくらい、変な混じり方している。この階はそれが特に顕著だ」

「下層が近いのかしら?」


多分邪魔になるからだろう、背中の羽をおもちゃのように小さくしたリリアンジュさんがそう続ける。

確かに中層は下に降るほどベースとなった異世界の色が濃くなるけど……


「下層が近いのは確かかもしれないが、そんな問題でもないだろう、これは」


波多野さんは周囲を見回してから、ちらりとこちらに視線を向けた。


「最初はトワさんが対応した房総ダンジョンみたいに、異世界が直接つながってしまったのかとも思ったんだけどね」

「こりゃ違うだろ、そんなレベルじゃねぇ」

「荒木さんの言う通り、このマナの混ざり方は異常だね。正直異世界とつながったというよりは、二つの世界の要素が混ざってこのダンジョンが出来ていると考えた方が納得できる。……いや、実際の所は二つどころじゃない感じだけど」


俺とるー以外の全員が眉をひそめたような顔で話し合っている。俺とるーはそれを邪魔しないように黙って聞いていた。いかんせんこの辺りは経験値が違いすぎるからねぇ。


「何にせよ、こんな環境にある植物は育てられる自信はさすがにねぇなぁ」

「荒木さんがそこまで言うなんて相当ですわね……というかわたくし思いますけど、そこまで異質ならここはもうダンジョンの核を破壊して消し去るべきでは? そこまで異質なものだと、ダンジョン素材としても使いずらいのでは」


荒木さんの言葉を聞いて、そう提案したのはリリアンジュさんだった。その発言に俺はちょっと驚いた。出現したダンジョンを即時に消すっていうのは最初期の頃はともかく最近としては聞いた事がない。基本的には調査を進め、素材の有効度とモンスターの危険度の双方の観点から判断を下すのが普通だ。そして現時点でモンスターの危険度はそこまでではないように見える。俺とるーが何もしていないくらいだし、殆ど一撃で吹っ飛ばしてたしなぁ。


「うーん、素材に関しては研究員達に分析して貰わないとなんとも……ただ、警戒度は上げた方がいいかもしれないね。……君たちはどう思うかな?」


リリアンジュさんの言葉に考え込む様相を見せていた波多野さんが、俺の方に視線を向けて話を振ってきた。完全に話の輪の外にいることを気にしてくれたのかな?


と言われても、特に意見はない。熟練の皆の話通りでいいのではないか? という答えしか浮かんでこない。るーに視線を向けてみたが、ぷるぷる首を振られただけだった。


うーん。


……アイリス、何か意見ある?


《彼らと同意見ね。異質な複数の存在がそれぞれ生み出したものを、何者かが掛け合わせたような気がするわ。歪んだ世界だと思う》


即答が返ってきた。なんか今日ずっと静かだったけど、実はずっとこのダンジョンを分析してたりする?


《上層はともかく中層以降は本当に気持ち悪い感じだったからね》


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