一級探索者の実力
「くー、暇ー」
「暇だな」
ダンジョンの中を歩きながら、俺とるーは身を寄せ合うようにして小声でそうやりとりをする。
合流した俺達はあの後すぐに中層へと突入し、すでにその三層目と達していた。
中層と言われるが、別に一つの階層で構成されているわけではない。実際は数個から多い場合は二桁の層で構成されており、それらをひっくるめて中層と呼ぶのだ(ちなみに房総ダンジョンは五層構成だった)。平均としては3~7層が多いので、平均値から考えればすでに半分くらいを踏破したといえる。
当然ダンジョンなので、ここまでに普通にモンスターとは遭遇している。というか今回初めて人が足を踏み入れるダンジョンである事もあってか、通常のダンジョンに比べて遥かに数が多い。なのになんで俺達二人が暇をしているかといえば。
……同行者達の実力が出鱈目すぎるんだよなぁ。
見てだけの判断だが、ここに出現しているモンスター達は決して弱くない。ダンジョンの平均値で考えれば難易度が高い方のダンジョンに類するだろう。だが、その程度の差は関係なしとばかりに、皆が強すぎる。
例えば荒木さん。彼は背中に背負っていた二つの鍬を今は取り振り回して無双していた。どう考えても武器としては使いずらそうな鍬だが、恐らく実際はマナでその周囲を覆っているんだろう。まるで巨大な鎌でも振るっているかのようにモンスター達は断ち切られてゆく。
ちなみに二つあるのに一つしか使っていないのは、もう一つは地面を耕す用だかららしい。別に一本でいいのでは? と思ったが「モンスターぶっ殺したので地面耕すのはアレだろう」とのこと。まあ人によっては気分が悪くなるかもしれませんね。そもそも鍬を武器にしなければいいと思う人もいるかもしれないが、慣れ親しんだ道具ほど武器として力を通しやすいってのはあるから、彼が鍬を使っているのもそれが理由だろう。
ほぼ肉弾戦の荒木さんに対し、女性陣は戦い方が派手だった。東風ヶ瀬さんは豊富な魔力量を活かして様々なモンスターを消し飛ばしていた。ちなみに一見雑に使っているように見えるが、その術は的確にモンスターを捉え、必要以上の力を使っているような感じではないあたりやはり一級探索者といったところだろう。時たまなんか見たこともない果物みたいなのを齧っているのは魔力補給しているんだろうか? 食べたら魔力回復するとか羨ましいな……
その東風ヶ瀬さんより更に派手なのはリリアンジュさんだ。彼女は中層に入ったあと、自身の背後に光の翼を生み出していた。成程、アンジュってどっかの言葉で天使って意味だったっけ? 完全にそっち方面のイメージって訳だ。前半のリリの部分は元の名前が由来なのかな? 別に詮索はしないけど。
彼女は主に離れた所や空を飛んでいるモンスターに対しての対処を行っていた。モンスターを認識すると背中に生やした翼から白い小さな鳥を生み出して飛翔させ、その鳥がモンスターを捉えると爆発を起こしモンスターを消滅させる。……わざわざ常に翼を展開させた状態にしているのは単純な演出の為か、それとも魔術の発動を早めるためかな。こういって力をその媒体もなしに維持し続けるのってかなり難しいと思うんだけど……あとはガードとかにも使えるのだろうか。
他の3人に比べて波多野さんの戦い方は静かなものだった。そもそも彼は率先しては戦っていない。彼のメインの役目は探索で、敵を倒す事よりイレギュラーな事を見落とさないのが役目だからな。といっても全く戦っていないわけではなく、解りづらい場所にいる敵などに対して術を放ち、的確に処理を行っていた。
とまぁ、そんな感じで同行者達がサクサクとモンスターを倒して行っているので、支援役である俺達はマジですることないんだよね。皆俺達の燃費の悪さは知っているので、必要だと判断した時以外は手を出さないでいいって言われてるし。なのでマジですることないんだよねー。房総ダンジョンの時は中層になったらそこそこ仕事してたけど、今回は全くする事がない。さすが一級探索者で構成されたチームだけある。
そんな感じなので、ここに至るまでの探索は足止めされるような事もなく実に順調だ。順調……なんだけど。
他の皆の表情は、その状況に合うようなものではなく、微妙なものだった。苦しいとか、つらいというものではない。その顔に浮かんでいるのは──困惑の色だった。




