一級探索者とご挨拶
なんか語尾がお嬢様言葉っぽくなっているが、キャラ付けかな? 向こうでも似たような喋り方をするのがいたけど、それに比べても演技感というか無理して使ってる感があるというか。まぁ別に突っ込むようなことでもないので、頷いてから初めましてと返しておく。
「ごめんなさいね、合流がこんな場所になって」
「いえ、波多野さんが先導してくれたので、ここまでスムースに来れましたし」
本当にほぼ歩いていただけだったからなぁ。わずかに出たモンスターも、波多野さんが即座に倒しちゃったし。
「おう、そういや仁。ここいらに、植物が生えている感じはあったか?」
「荒木さん。それは私も気になるけど、まずはちゃんと挨拶しよっか?」
こちらの事など気にすることもなく波多野さんに問いかけるその横で、ニコニコしている東風ヶ瀬さんがそうつっこみを入れる。そこで荒木さんはようやくこちらに気づいたかのように目を見開くと、それからきまり悪そうな顔で頭をぼりぼりしつつ口を開く。
「いや、すまん嬢ちゃん達、俺はどうも新しいダンジョンに潜ると意識が野菜に飛んで行っちまってな? 荒木 嘉隆だ。今日はよろしく頼むわ」
……どうやら本当に気づいてなかったっぽい。まぁ噂に聞いていたので、別に気を悪くするとかそういったことは別にないんだけど。
"農狂"。その名の通り、彼は農業に狂っているともいえる存在だ。なにせダンジョンに生成される異界の植物を採取しダンジョン内外で栽培、それを更に販売(勿論協会の分析の上で承認が降りたものだけだが)まで行っているという人物だからだ。そんな彼は新しいダンジョンが見つかると喜々として新種の野菜を探しに向かうと聞いている。今回のような任務はそれこそ彼にとっては渡りに船だろう。
「私は東風ヶ瀬 詩織よ、よろしくね」
一方東風ヶ瀬さんの方は"暴食"という通称とは全く合っていないスレンダーな女性だ。だが彼女の能力はその通称の通りに食に関する力である。といっても敵モンスターを食べるとかエグイ能力じゃないけど。
彼女は俺と同じ帰還者で、異世界に行った時に能力が覚醒したタイプだ。その能力が彼女の通称の由来で、内容は「いかなるものも消化し、その効能を最大限取り込める」というもの。毒などがあってもその影響を受けないというものだった。それだけだと戦いには余り関係なさそうなものではあるが、彼女はその力で彼女が転移した世界に存在した"食すれば強大な力を手にするが、非常に強い毒性があるため高確率で死ぬ"果物を食べまくった結果強大な魔力を入手したのだ。
尚彼女としては力を手に入れるためにそれを食べていたわけではなく、普通に滅茶苦茶美味しかったので食べてたとの事。食べるのが大好きなようで、荒木さんとは別の理由で果実や野菜をやっぱり求めているわけだ。
「さて、それじゃ中層に行くとするか」
こちらからも三人に自己紹介を終えると、早々に荒木さんがそう口にする、早く潜りたくてうずうずしているんだろうなぁとは思うが、実際問題全員揃ったなら確かにこんな所で足を止めている意味はない。全員が彼の言葉に頷いた。
「んじゃ僕が先頭で、後は詩織ちゃんと荒木さん、トワさんとルーティエさん、リリちゃんの順番でいいかな?」
「波多野さんが先頭なんですか?」
てっきり荒木さんと東風ヶ瀬さんが先頭を切ると思ってたけど。
「僕の役目は探知、索敵だからねぇ。前に出ないと。あと荒木さんにしろ詩織ちゃんにしろリリちゃんにしろ、前に立たれると魔力に流れが見にくいんだよねぇ。みんな魔力高いから」
成程。まぁ魔力を見るんなら確かにね。ダンジョン探索中は探索者は多かれ少なかれその身に魔力を流しているし。役割的にはファンタジーにおけるスカウトみたいなものかな。
俺とるーが真ん中で守られるようなポジションなのは……今回の俺達に求められているのはサポート的な役割だろうし、経験的には一番下なのは間違いないから当然かな。まぁカートリッジのマナを節約させてもらえるのは全然助かるので問題ない。
「それじゃ、進むとしますかね。中層へ」




