合流
「それじゃ行こうか」
「はい」「はーい」
場所を移動してダンジョンの入口へ。多分念のための警備をしているだろう数名の探索者と協会の職員にあいさつした後に、俺達はダンジョンへと潜った。先行して三人がすでに潜っているとはいえ実質前人未踏のような場所ではあるが、多分慣れているんだろう、波多野さんは特に何かを気にする様子もなく俺達を先行して進んでくれた。──なんか見かけ的には失礼だけど少し頼りない感じがする波多野さんだけど、行動は頼りになりそうな感じで助かる。
そうやって潜ったダンジョンだけど、少なくとも入口付近の様子は他の数多くのダンジョンとかわらない、普通の洞窟のような光景だった。まぁ大抵の場合各ダンジョンとしての特色が色濃く出てくるのは中層意向だしな。
「それじゃ、とりあえず合流までは僕が先導しようか……、あ、そういえば君達が配信しているの?」
「してます、俺の方だけですけど」
一応協会の方に確認したら個人としての配信はOKとの回答だったので、配信することにした。新規ダンジョン配信は超人気コンテンツらしいからな。このチャンスを逃すのはもったいなさ過ぎる。るーの方はめんどくさがってしないみたいだけど。というかるーは基本的に自身の方では配信はする気はなさそうだ。
「だったら、急いでいくとしよう。僕みたいなおじさんと君達みたいな子が少ない人数で一緒にいて燃えてもいやだしねぇ」
「いやさすがにないでしょ」
アイドル売りしている普通の配信者とかならまだしも、探索者の中だったら男と一緒はNGとか言ってる奴はさすがにいないでしょ。少なくとも2級以上ではいないハズ。そもそも俺は元は男だ、そのレベルのユニコーンとかいられても困る。まぁ波多野さんも冗談めかしていってるし、本気ではないだろうけどさ。
「じゃ、出発するからついてきて」
そう改めて宣言して、波多野さんは歩き始めたので俺達はひょこひょこ後ろをついていく。
一度歩き出した彼は、まるでルートが見えているかのように全く悩む事もなく歩を進めている。というか見えてるんだろうね、きっと。下層みたいに広大な領域になるとあまり意味がないと思うけど、上層や中層の探索には有効そうだ。ついでにいえば、合流する相手の場所ももう捉えてるんだろうなぁ。
「時間かけたくないし君達も消耗したくないだろうから、合流まではエネミーのほぼいないルートで進もうか」
本当に便利すぎない?
◆◇
「おう、仁。ようやっと来たか」
ダンジョンの中を歩いて10分未満。彼の宣言した通りに特に下層のエネミーに遭遇する事も殆どなく、迷う事もなく目的の場所に辿り着いた。その場所にいたのは筋肉質の壮年の男性、黒髪長髪の20代半ばくらいの女性、そしてそれよりも年若く見える金髪のツインテールの女性だった。その中の壮年の男性が手を上げて声をそう掛けて来た。あ、仁っていうのは波多野さんの名前である。
その呼ばれた波多野さんはぼりぼりと頭を書きつつ呆れ顔で壮年の男性に声を返す。
「荒木さん、もう中層のすぐ手前じゃないですか。進みすぎでしょう」
「ちゃんと降りる直前で待っとっただろうが」
「リリちゃんに止められなかったら、そのまま降りてたんじゃないですか?」
「さすがに宣言した事はまもるわい」
顔をしかめてそう波多野さんに声を返す壮年の名前は、そこまで探索者の事に詳しくない俺でもちゃんとしっている。彼の名前は荒木嘉隆。農強(狂)という通称を持つ、一級の中でもトップクラスの戦闘能力を持つ人物だ。ちなみに通称の意味は「うわ農家強い」または「農業狂い」である。その理由は……まぁそのうち説明しよう。
「リリちゃん、本当かい?」
「ええ、まぁ……今回はお二人の興味を引くものが少なかったので、比較的おとなしくはしていただいてましたわ」
波多野さんが金髪の女性の方に顔を向けると、女性はそう答える。ただその言葉の割には顔に疲れが若干出ている異様な気がするが。……この人は荒木さんと違って元から詳しく知っていたわけではないけど、同行者ということで名前はちゃんと聞いている。彼女の名前はリリアンジュ。外人さんではなく、俺と同じように探索者としての芸名みたいなもので、普通に日本人さんとのこと。
「下層では美味しそうなもの全く見かけなかったからねぇ。今回のダンジョンはあまり期待できないかも」
そう口にしたのは黒髪の女性だ。"暴食"東風ヶ瀬 詩織。彼女も一級の中ではトップクラスの実力者だ。いやぁ、豪華メンバーだなぁ。
その東風ヶ瀬さんは、ちらりと視線をこちらに向けた。そしてにこっと笑って手を振って来たので、とりあえず手を振り返してみる。
その行動で、リリアンジュさんもこちらに視線を向ける。
「ええっと、トワさんとルーティエさんね。初めまして、リリアンジュと申しますわ」




