船上にて②
「刹那ちゃんは私達と一緒にダンジョン潜るの?」
そのまま俺と刹那さんで雑談をしていると、船に乗ってからずっと窓の外を眺めていたるーがさすがに飽きたらしくそう口にしながら話に混じって来た。
……さっき会って自己紹介しあったばかりの人をすでにちゃん呼びかい。まぁ外見上は刹那さんの方が年齢高く見えるけど女神の眷属は寿命長いからるーの方が年上だし、ファーマントだと女神の眷属でかつその中でもオリジナルの杖持ちっていわば最高位の存在で、わりと幼い時からその立場についていたるーは周囲に敬語を使う必要性があまりなかったから仕方ないか。別にいきなり呼んでるわけじゃなくて、これで顔を合すのが3度目になる刹那さんが俺に「刹那でいいよ」っていってくれた時に、「じゃあ私も刹那ちゃんでいい?」と確認取った結果である。
ちなみに聞いての通り、俺は刹那"さん"だ。くっ……俺だってるーと同じ立場にいたのに、日本人の部分が出てしまうぜ……
まぁそれはおいといて、この質問すでに俺がしたんだけど海に対して意識がいっていたるーは聞いていなかったのだろう。刹那さんは繰り返された質問に、嫌な顔一つせず答えてくれる。
「いいえ、別よ。貴方達は一級探索者で固められた先発組、私達準一級や二級の探索者は後続組になるからね」
刹那さんの言う通り、前回の房総ダンジョンと違い完全初見でかつ大人数での探索となる今回は編成が違う。単純に言えば、先発組が縦の調査で後続組が横の調査といえばいいだろうか。先発組はとにかくまっすぐ下へと向かって突き進み各層の環境の確認とエネミーのレベルを大まかに確認する。そこである程度安全が確認出来たら今度は数の多い後続組が潜って詳細な調査を行うって感じになる。
俺達はすでに先発組である事は伝えられているので、刹那さんとは別行動だ。
「そか、残念」
あまりそうは見えない様子だが、刹那さんの答えにくーはそう口にする。刹那さんの事ちょっときにいったのかな?
「じゃあ私達と一緒に潜るのは知らない人ばっかりかー。まぁ私はくーと一緒ならいいけど」
「そもそも一級の知り合いが俺にいないからな、どうあがいても初対面の人ばっかりになるわ」
こっちの世界で今まで一級探索者と接点なかったからな。特一級の二人とは顔を合しているけど、二人とも今回は不参加が確定しているし。
「んー……一応、一人は顔だけは確認してるかも?」
「え?」
「乗船するとき、入り口付近の座席付近で寝ている人いかなかった?」
「いましたね」
別に俺達はギリギリに乗船したわけでもないのに、俺達が乗った時点でリクライニングを倒しすでにアイマスクを着けて寝ている男性がいた。アイマスクとあごの無精髭のせいで年齢はわかりづらかったが恐らく30代くらいだったかな? 隣の席に着てきたであろうトレンチコートを乱雑に置いて、口をだらしなくあけて眠っていた。
「あの人、波多野さん。あまり表に出てこない人だから知名度高くはないけど、感知能力にすぐれた一級の探索者さんよ」
マジか。……なんか探索者よりも終電近くの電車で、疲れはてて寝ているサラリーマンにみえなかったけど……
同じ船に同乗しているなら挨拶しておいた方がいいんじゃないかと思ったけど、あの様子なら多分到着するまで爆睡してるよな。現地で挨拶すればいいか。
「他のメンバーも多分気さくな人たちばっかりだと思うから大丈夫よ」
「ですかね?」
「そもそも初見のダンジョンにチームを組んで潜るんだもの、コミュニケーション能力低い人はいないわよ?」
それもそうか。一級はとびぬけた実力揃いとはいえ、好き放題動くような人間だったらさすがにチームとして組み込まないだろうし。前回の泊さん達みたいにフランクな人たちだったら非常に助かります。
その後もるーや刹那さんと雑談しつつ1時間ほど。船は目的地である佐渡島の港に到着した。




