魔法少女二人でダンジョンへ⑤
まぁ呼び名はおいておくとして、この"ケンタウロス"が今回俺達が求めているアイテムのドロップ主だ。
ダンジョンの怪物は倒した時に一定時間その亡骸が残る。放置すればそのままダンジョンを構成するマナの一部へと戻るけど、その前に上手く処置すればそのままドロップ品として入手することが出来るわけだ。それらは物にもよるが様々な素材になったり一部の物は宝石のような装飾品になったりもする。ただ部位によっては速攻でマナに戻ってしまったりする訳だが。
んでこのケンタウロス君はメカ系だけあって金属を採取できるわけなんだけど、この金属が実に高性能なのだ。素材の素の硬度がある上に、マナの伝導率が異様によく、またマナの影響を受けて更に硬度があがる性質がある。ようするに素の状態だとただの硬い金属ではあるが、マナを扱える人間が使えば一気に優秀な素材になる。俺達探索者の装備品を作るのに最高……とまではいわないけれどかなり上位の素材になるわけだ。
ただ獲得できるのがここ燕三条ダンジョンの中層以降な事、出現数自体がそれほど多くないこと、そしてマナへ戻るのが早い事から基本的に獲得者は自分の装備の製作に使ったり身内の中で融通しあったりして基本売りに出ないし、売りに出てもかなり高額になってしまうので手が出ない。
だけどこの素材を手に入れて装備品を作れば、変身前の俺でもそれなりに高いレベルの戦いができるようにはなるハズで。
なので今回自力で獲得しに来たわけだ。入手できるまでは何度か通うつもりではあったけど……初回から遭遇できたのは幸運だった。
ただまだ獲得できると決まったわけではないけれど。
「戦闘中……ってことはなさそうだな」
まだ離れた場所にいるソイツの姿を目を凝らして確認するが、特に戦闘中の様子はない。続けて周囲を確認するが、俺達以外の他の探索者の人影もなかった。とりあえずここですでに戦闘中だった場合俺達にとってはほぼノーチャンスとなっていたんだけど、そんな事にはならなそうだ。
協会が定めているルールとして、他者が戦闘中に横から介入する行為──通称横殴りと呼ばれる行為は非推奨行為とされている。ドロップ品の取り扱いなどでトラブルの種になる可能性が高いし、なにより戦闘中の乱入は双方に対して危険が生じる行為だからだ。例えば広範囲の魔術を使おうとしてたら飛び込んできた人間を撒き込んじゃうしな。
ただ"非推奨"であって"禁止"ではないのは状況によるところがあるからだ。声を掛けて相手から諾の返事があったうえでの参戦なら問題ないし、相手が危機に陥っていてその余裕がない事だってあるからだ。ただまあそんな状況はめったにないので基本は乱入はしないのが正解だな。
んで、今の状況ならその心配はなさそうだ。だったら他の探索者が戦闘に入る前にこちらが仕掛けたい。奴との距離はまだ大分あるが……
俺はアイリスを構え、巨大な結界の刃を展開する。そしてちらりと横に立つるーに視線を送り、
「るー」
「ん。おけ」
名を読んだだけで全てを理解してくれたるーが、杖を手にして術を使う。ただそれだけで、次の瞬間俺はケンタウロスのすぐ後方に出現していた。
即座に周囲を確認。うん、やはり他に人影はない。それを確認した俺はディバインアームズの飛行を利用して大きく跳びあがり、ビルの3階くらいの高さにある奴の肩から袈裟斬りに剣を振るった。が、
「……さすがに硬いな!」
振るった結界の刃は、こちらに気づいて思った以上に早い速度で反応して振るわれた奴の腕に弾かれた。ただ防いだ奴の体に傷はついているからダメージは与えられているな。だとしたら今の火力でも攻撃してれば倒せそうだけど──
「……おっと!」
ファンタジー世界の怪物みたいな外見をしているけど、やはりロボット型の怪物だ。こちらに向けた腕の先から至近距離で発射された弾丸を、俺はディバインアームズの操作で回避する。……放たれた弾丸は俺の後方で大きな音と共に爆発を引きおこした。……いや、あの爆発を起こす奴を今の至近距離で使うのか? 自分にもダメージはいらないか?
攻撃は立て続けに放たれる。今度は機銃のようにばらまかれる攻撃だったが、隙間がないわけではないので同じように細かいディバインアームズに捕まったままこまめな操作で回避していく。
『結界で弾かないの?』
「躱せるなら、躱した方がコスパいいからね!」
目に飛び込んできたコメントに答えると同時に、奴の足の一本が大きく下から羽あげるように襲ってくる。だが当然のようにその動きは銃弾よりは遅い。問題なく躱して少し距離を取ると攻撃の嵐は収まった。
『映像がスリル満点すぎて笑うしかない』
『よくドローン壊れなかったな』
『激しく動き回ってるせいでふとももとかもうがっつり映りこんでて最高です』
『なんか急に景色が変わったと思ったら腕が見えたから、ルーティアちゃんが抱きかかえられているんじゃね』
『ルーティエちゃん、逆向きに抱えてくれないかな』
逆向きに抱えたら役目をこなせなくなるだろうが。
別段ドローンの事をるーにお願いした訳じゃなかったけど壊されたら不味いのは伝えてあったので、多分奴が弾丸をばらまき始めたところで手元に転移してくれたのだろう。ちょっと頭から零れ落ちてたけど、これでドローンの心配はいらない。
それから奴の攻撃のパターンは大体今の三パターンと肉弾戦だ。体のでかさの割には動きが機敏だけど、躱すのがそこまで難しいわけじゃない。力もここまでは温存してあるから、場合によっては結界を使って弾けばいいので防御面は問題なし。
となると、火力面だな。先ほど感じた通り攻撃がまるで通らないわけじゃないから攻撃し続けても倒せるけど、逆にそれは魔力を浪費するな。となるとこないだみたいに速度を乗せた一撃を入れるか、別の手を使うかだけど……或いは俺より火力が高いるーにお願いしちゃうか? 自分で倒すのにこだわる必要もないし。
そう考え、一度るーの方へと声をかけるかと考えた時だった。
視界の隅に、こちらに高速で向かってくる白銀の鎧のような巨兵が飛び込んで来たのは。




