魔法少女二人でダンジョンへ③
「はーい、着陸」
洞窟の天井スレスレをしばし飛行した俺達は、やがて大きな地下空洞に辿り着いた。中層に突入したのだ。
以前の房総ダンジョンとは違い、周囲には崩壊したビルのような建造物群が見える。それらのビルは風化が始まっており、そこら中に緑の蔦や苔が張り付いていた。完全にファンタジーな感じだった房総とは違う、ポストアポカリプス世界のような光景が眼前に広がっていた。
だがるーは、そんな光景をまるで気にする様子もなく地面へと足を降ろすと、自身が跨っているディバインアームズをそれこそ魔法少女の持つ魔法のステッキくらいなサイズに変えて手に取る。
うーん、向こうではそこまで気にしていなかったけど、こうしてみると完全に魔法少女だよなぁ。外見も日本人離れしてるし……
「それにしても、滅茶苦茶視線を集めてたねぇ」
『そりゃそうでしょ』
『頭上を魔法少女が飛んでいけばそりゃ見ちゃうよ』
『コスプレしてダンジョン潜る子はいるけど、その中に空飛ぶ人間はいないしなぁ』
一応アイテムや魔術の力で飛行自体ができる人間はいるけど、大分レアらしいしな。ついでに言えば例のレアアイテムの関係で、人が増えているってのも大きいか。
『別の配信者の映像で滅茶苦茶下からのアングルで映ってたよ』
『綺麗なおみあしでした』
「まぁ……それは仕方ないか」
こんな格好している時点でさすがにみられる事に文句を言う気はない。趣味で着ているわけではないが。
《趣味にしてもいいのよ?》
しません。
「そんな事よりもっと」
俺は周囲を見回す。2級以上の制限があるせいで、下層とは違い、全く人の姿は見えない。他に誰もいないってことはないだろうけど、この辺りはまだ入り口に近いからもっと深い場所にいるんだろう。
人はいないが、動いているものは存在している。
下層のモンスターはガードロボット的な感じで人よりは小さいサイズでやや虫っぽいフォルムをしていたが、中層になると様相が大きく変わった。軽く人のサイズを超えるものがちらほらと存在しているそれらは、動物に近いフォルムをしている。そう、特に一番こちらに近い位置で、こちらに向けて砲塔を向けようとしている奴は、巨大な戦車の上にマンモスのような生き物の皮を被ったような外見をしていた。
『げっ、マンモスタンク!』
まぁ通称もそのままなんだが。
『そいつ火力高いから気を付けて』
リスナーから忠告が入るが、当然下調べはしてきているから俺もその事は知っている。だが俺もるーもそちらは見てはいるものの特に反応はせずに、「それじゃ、いこっか」と声をかけて歩き出した。そんな油断しきった様子に『ちょっとあぶない!』『かわして!』とか、恐らく初見さんかなと思われるコメントが流れて、そして、
次の瞬間、マンモスタンクの砲塔の半ばあたりから派手な爆発が起きた。
『!?』
『うおお、自爆しやがった!』
『なんで爆発したの!?』
「発射のタイミングで砲塔の中に結界貼った。砲撃タイプは打つ前に対応するのが楽だからね」
別に撃たれた後でも対処できるけど、それの方がより少ない魔力で対応できるからね。あちら側と違って魔力の消費をかなり制限しないといけない現状、一番楽な方法を選ぶのは当然の事である。視聴者としてはもっと派手な戦いを望んでいるとは思うんだけど、今回の主目的に出来るだけ継戦能力は維持したいからさ。
『そんな事もできるんだ、えっぐ』
『さすがに打たれた跡だとピンポイントで止めるの難しいもんね』
「いや、別に撃たれた後でも止めれるけど。さすがに機銃系は厳しいけどさ」
『えっ』
『えっ』
「向こうじゃ遠隔攻撃を行ってくる敵なんていくらでもいたし、それくらいはできるよねぇ」
「うん」
るーの言葉に俺は頷く。向こう側では魔力の回復速度が速かったとはいえ、そのかわりに相手にする数がこちらと比べ物にならないくらい多かったから、結局の所大雑把な力の使い方はできなかったんだよな。だから集中砲火を喰らったりしているならともかく、単発の攻撃なら全体に結界を貼るような無駄遣いはせず射線を読んでピンポイントで止めていた。だから散弾や機銃のような連射じゃなければ大体止められる自信はある。
配信に来る人間は外見に引かれてきている人間が今の所多いだろうから忘れてたり知らない人間もいそうだけど、一応俺もるーも一つの世界を救うために中心に立って戦ってきた人間だからな?




