怒られませんでした。
というわけでその後協会の方に連絡をとったわけなんだけど、まぁいろいろと大変だった。
まず最初に一番懸念だった世界の壁の件だけど、これは怒られずに済んだ。
というのもあの内容、あの時点ではすでに分析が済んでおり丁度あの配信始める直前に関係各所に通達されていたためだ。国家機関や報道各社とか。んで、入れ違いのタイミングですでに公開されていた。ギリギリのタイミングである。
正確にいえばメディア各社が報道する前に公式サイトに情報は掲載されていたのだ。ただ協会の公式サイトのトップページをそんなこまめにチェックしている人間はそうそういないので、あの配信でその事を口にするリスナーがいなかったのだろう。
何にしろ、こちらより先に発表してくれて助かった。もしこちらの方が先だった場合、例えあの後すぐ発表したとしても一部の陰謀論が好きな暇人たちが本来は隠蔽しようとしていた情報を慌てて発表したなどと囀りだすだろう。
これまで協会……というか大魔導はわりと何でも公表してきているから大抵の人間はそれに踊らされることはないだろうけど、それでもうるさい連中は存在する訳で。そうなったら協会の人間の俺に対する印象滅茶苦茶悪くなっていたと思う。マジで良かった。
んでそれ以外はるーに関する対応。
基本的に俺達のような帰還者のためにルールは整備されているし、なんなら将来的に異世界人がこっちにやってくるのは想定されていたので、その準備もされていた。
──いたんだけど、実際にこちら側に異世界人がやってきたのは(少なくとも公式には)るーが初めてだったので……まぁいろいろドタバタした。しかも今はここ最近の一連の出来事のせいで協会内部がいろいろ手が回ってない状況だったからね。
でもるーが来てからなんとかまぁ各種もろもろの検査や手続き、そして大魔導の面接を終えてようやく一段落がつき、ようやく俺達は自宅へと帰ってくることができた。
え? 昨日はどうしたのかって? 泊りだよ泊り。検査とかいろいろ終わる前から動きまわるのは避けてほしいと言われちゃったからね。なのでるーはいろいろ検査、その間に俺が手続きを進めていたって訳。
いやまぁ別に俺は泊る必要なかったんだけどるーが俺が帰るなら一緒に帰ると言い張ったから……アイツが俺の所に来るといったら多分もう誰にも止められないからな……面倒な事にならないように付き合ったわけである。結果そのお陰で必要な手続きは順調に片付き、こうして帰路についたわけである。勿論手続きや検査が終わっただけなので、結果の連絡を待たなければいけないけど……とりあえず俺達が能動的にやらなければいけないことは終わったのでヨシ!
最終結果が出るまでは基本外にはあまり出さないでくれとは言われたからるーは外出させることはできないけど、元々彼女はその能力でくっそ移動は楽な癖にインドア派なので問題なかろ。
とにかく後は連絡待ち! それほど時間はかからないらしいので、素直にそれまでは引きこもりでいいかな。俺がどっか出かけるとるーはついて来ようとする気がするし。
「ふー……」
部屋に入って荷物を放り投げると、ベッドに身を投げる。するとすぐに柔らかいものが体の上に乗って来た。
「るー、重い」
ルーティエは小柄ではあるが、さすがに横になった体の上に重なるように乗られればさすがに重い。というか人の胸に顔を埋めるな。……スンスンするな! 帰って来たばっかりでまだ風呂も入ってないんだぞ!
力づくで彼女の体をどけるとるーは特に強い抵抗はせず体の上からどいてくれた。ただ不満気に頬を膨らませていたが。
「いろいろ検査とかで疲れた。癒しが欲しい」
「……ひとまずベッド譲るから、それで勘弁してくれ」
「──妥協する」
単純に横になりたかっただけなのか? 言葉とは裏腹に満足気な顔をするとるーはぽふんと俺のベッドに身を投げだした。なんか顔を枕に押し付けるけどまた匂いを嗅いでるんじゃないだろうな? 一応戻ってきてから一回枕カバーは洗ってるけどそれでもいい匂いはしないだろ、そこ。
というか、今日の夜寝るところどうしよ。一人暮らしだし誰かを家に泊める事なんて考えた事もなかったからベッドは当然一個だし、敷布団もない。床で寝るのは体バッキバキになるから避けたいので、一緒のベッドで寝る事になるか?
向こうの世界では一緒に行動することが多かったので当然同じベッドで寝たこともあるけども……こんな小さなベッドじゃなかったしなぁ。二人とも寝相は悪くないしいけるかな?
そんな事を考えつつ頭を悩ませているとベッドにうつ伏せになっていたるーが体をごろんと反転させ、軽い口調で言った。
「そういえば忘れてたけど、今晩辺りに一度ファーマントに戻るから」




