斬撃系魔法少女
飛び出した俺の眼前には、俺の倍近くの体躯を誇る恐竜や恐竜人間どもが数十立ちふさがる。こちらに気づいた奴等は咆哮を上げ、こちらに向けて動き出す。
──何ら問題はない。あちらの世界ではこれより桁一つ多い数だって相手にした事がある。
俺の杖の能力である"結界"はオリジナルのディバインアームズの中では防御寄りの力だが、だからって戦う能力が低い訳じゃない。
「断空結界!」
地竜を屠った時と同様に杖の先に延ばすように結界で刃を生み出す。ただし前回とは比べ物にならない程に長大な刃を。更に自身の体にも強化を入れ、
「オラァッ!」
怒声と共に、右から左へと大きく刃で薙ぎ払った。
「……!!」
恐竜が、恐竜人間が、その巨大な体躯を上下に二分割されて崩れ落ちてゆく。結界で作り出された鋭利な刃は堅牢そうな鱗をモノともしないように二十を超える数を斬り裂いた。だが、
《思ったより"硬い"わね》
「ああ」
アイリスの言葉に同意を返す。
俺のイメージでは後5体くらいは持っていけるはずだったんだが、思ったより抵抗があった。
俺の結界で生み出した刃はいうなれば無茶苦茶硬くて切れ味がいい刀みたいなものであって、なんでも切れるわけじゃない。例えば極論で言えばダイヤモンドは切れない。それに生物が内包するマナが強いとそれだけ防御力は高くなるケースが多い、今回も鱗というよりは魔力でレジストされた感じがある。
だが、あくまでまとめて切ろうとした結果、思ったより切り捨てられなかっただけだ。一体一体なら問題なく切り伏せられる。今の一撃でデカブツまでの進路上にいるモンスター共の大部分は削れた。俺はそのまま速度を上げ、残った恐竜達を切り伏せつつデカブツへと向かう。
デカブツは俺が飛び出した時は特に反応を見せていなかったが、さすがに仲間(?)を大量に屠られては無視が出来なかったらしい。奴はポータルに腕を突っ込んだまま体を捻って、半身をこちらに向けた。
いや、ポータルから腕を抜けや! なめてんのか!
──まぁいい、狙い易くてこちらには都合がいいからな!
奴への進路上にいた最後の恐竜人間を切り伏せ、俺は大きく跳躍する。
他の連中の"硬さ”を考えると、あのサイズの胴体をぶった切るのはなかなかに難しそうだ。ならば狙うべき場所は首だ。人型なら首を落とせばくたばるだろう!
振り回しやすいように一度短くした刃を再び伸ばし、奴の首元へ向けて叩きつける。皆に着けた刃と違いほぼ不可視の刃にだがデカブツはその存在を察したか、突っ込んでいないほうの腕──左腕を上げてガードをしてくる。俺はそのガード事叩き切るつもりで刃を叩きつけたが、
「……っつ!」
叩きつけた刃は俺の胴体より遥かに太いその腕の3分の1程度で止まった。硬い! 思った以上に内包魔力が濃いぞコイツ!
間髪入れず、俺の位置に反対の腕の一撃が叩き込まれる。図体がでかい癖に動きも早い──俺は刃の結界の方を一度解除し、自身の周囲に張った結界でその一撃を受ける。位置固定はしなかったので弾き飛ばされたが、その勢いは杖の飛行能力で消して地面に軟着陸する。
とりあえずさすがに腕は抜いてくれたが……ポータルの前から動くつもりはなしか。離れてくれればその隙を縫ってポータルに飛び込んでもいいかもしれないが……いや、アイツは火力も高い。結界は威力の高い攻撃を喰らえばその分消耗するから、この先援軍が来るまでどれくらいかかるかわからない以上コイツは倒しておきたい。
とはいえ今の斬撃であれだけしか傷を与えられなかった事を考えると、普通に切りつけるだけでは苦しいか。
だけど、こちとら異世界で7年もの間戦いに明け暮れてきた実戦経験持ちだ。今の一撃で防御力は概ね把握した。
本来は防御寄りでパワー型ではない俺だが、別に火力を上げる方法はいくつもある。特にここはとても広い空間だ。簡単に火力を出すことができる。魔力もさして浪費せずにな。




