私は異世界でスカウトされました。
『流れ着いた……って事は、トワちゃん召喚型じゃなくて彷徨型だったんだ』
「YES。家にいたハズなのに、気が付いたら見知らぬ草原にいたよ」
異世界転移の仕方には大きくわけて二通りある。
一つは物語でよく使われる召喚型。これは魔術的な儀式や科学による異常力場の生成により発生した膨大な魔力により異なる世界へ干渉し、異世界の存在を呼び寄せる方法だ。ただこれによる召喚、呼ばれる存在は完全にランダムで異世界の英雄とかを呼びだすわけじゃないんだよね。じゃあなんでこんな事をするかというと、そういった世界は"外界から来たものに特殊な力が付与される"といった特性を持つ世界が多い。チート能力って奴ね。まぁようは大量の魔力やエネルギーを使ってガチャを引いているみたいなもんなのである。
ちなみに一応世界を渡る能力を持つ存在により、狙って呼び寄せる事も可能らしいが。だとしたら地球人とか呼ばないよね、スペック的に。俺が行ってた世界とかみたいに他の世界の方がもっと強力な存在居るからそっち呼ぶでしょ。まぁあまり強力なの呼び過ぎて制御できないから地球くらいの素では強力ではない人間を呼んでいる可能性もあるけど。
んで、もう一つが彷徨型。言葉の通り異世界に彷徨いこんでしまったタイプだ。異世界転移した人間の大部分はこちらにあたる。
原理は不明だが、世界同士の一部が一時的に重なる事象が発生する事がある。本来そこに存在しないものが見えたりする事象はこれが発生しているとされる。そして偶にその場所を通過して向こう側に行ってしまう事がある。それが異世界転移だ。遥か昔から起こっていた神隠しは概ねこれが原因だとされている。隠れ里とかも多分そう。
大抵の場合、異世界転移しても数時間~数日でこちら側に戻ってくる事はできるんだけど、そのまま帰ってこれないケースも存在する。俺がこれだった。こういった場合特に何かに呼ばれた訳でもないので保護してくれる存在がいない可能性が高く、異世界の事だから観測はできないもののそのまま命を落とすケースが多いだろうと言われているが……俺は幸いな事に3日目でスカウトされた。
『スカウト?』
『この世界で俺とトップアイドルを目指さないかみたいな感じ?』
「なんでアイドルなの? まぁ端的にいうと、戦士としてだよ」
これは実は珍しい話ではない。異世界転移して更にそのまま向こう側に残るような人間は、その世界の適性が強い可能性が高いそうで、実際俺もそうだった……というか、適性が強すぎたらしい。
俺が転移した世界の名は"ファーマント”。その世界では大きくわけて2つの種族が存在していた。一つはこちらの世界の人間とほぼ変わりない種族。全人口の99.9%以上がその種族で占められており、事実上文明を作っていたのは彼らである。そして残りの極一部が女神の眷属と呼ばれる種族だった。女神の眷属は人間に比べて強い戦闘能力を持つ種族で、俺はその女神の眷属としての適性があったらしい。
「女神の眷属は……いうなれば、神族といえるかな? まぁポジション的な意味では天使の方が近そうだけど」
『つまり、トワちゃんは天使って事?』
『こないだ空飛んでいたし間違いないな』
『俺は最初からトワちゃんの背中に羽が見えてたよ』
『でもなんで、女の子に変身するようになったの? やっぱり”女神”の眷属だから?』
おっと、なんか幻覚見てるんじゃないかっていうコメントの中、鋭いコメントがあるな。これに答えよう。
「正解がいるね。そう、女神の眷属だから。……えっと、まずはアレの説明からすべきかな。──アイリス」
《はーい》
配信用PCの前から立ち上がり、少し離れる。
それからそう声を掛けると、思考がとっちらかるので黙っていてくれという指示に従ってこれまでまったく言葉を発さなかったアイリスが即座に反応して杖の先端を出現させたので、それを掴んで引っ張り出す。……部屋があまり広くないので取り回し気を付けないとな、部屋の中のもの壊したらヤバイし……
『あ、先日の……ナニコレ、金属のこん棒か何か?』
『魔法少女がまたがって空を飛ぶんだから箒じゃね』
『形状的には銃みたいな感じもするけど……』
「一応、扱いとしては"杖"なんだよね。魔法の杖。まぁ魔女の箒ってイメージは分かるし、銃的な機能もあるんだけど……」
ちなみにコメントを認識できているアイリスは、こん棒扱いは気に入らないらしくぷんすこしていた。
「これ、いわばファーマントで失われた神の残した遺物なんだよね」




