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いきなり起こる異変


「うりゃ!」


周囲を土壁に囲まれた、だがかなりの広さを誇る通路のような空間。ぶっちゃけていっちゃえば洞窟の中。


光源のようなものは存在もしていないのに何故か薄暗くはあるものの明かりのあるそんな場所の中で、俺は振り回される丸太のような腕をかいくぐりながら、目の前の怪物の横っ腹に剣を叩きつける。


「GYAAAAAAA!」


叩きつけた刃は抵抗は感じさせたもののあっさりと怪物の腹を斬り裂き、それに伴い咆哮のような悲鳴と真っ赤な鮮血が奴の体から噴き出す。


それを浴びないように一度怪物から距離を取ると、それまで俺がいた場所に奴の腕が叩きつけられていた。


うーん、結構がっつりいったのにタフだね。とはいえ明らかにその勢いは失われていたが。


目の前で腹部から血を流しながらこちらを睨みつけているのは、全身を獣毛に覆われ狼の面相を持つ巨躯の怪物だった。俗にいうウェアウルフという奴だ。


《ほら久遠。アイツ回復力高いんだから一気に攻めないと》

「わかってるよ」


脳内に直接響く澄んだ女性の声。慣れ親しんでいるといって差し支えない声にこちらは声を出して答えると、俺はウェアウルフとの距離を詰める。


奴は再び腕を振るうが痛みのせいか出血のせいか、その動きに鋭さはまるでなかった。労せずそれをかいくぐると、傷のせいで前傾姿勢となり結果位置の低くなった首筋の剣を叩きつける。


斬り裂く感触とその途中で感じた引っかかり。それすらも勢いのままに斬り裂くと俺の持つ剣は叩きつけた側と反対側から血にまみれた刀身を現す。


そして──その結果、支える体との別れを果たしたウェアウルフの頭部は重力に引かれて地面にべしゃりと落ちた。次いでその動きを制御する頭部を失った体もバランスを崩し地面に倒れ伏す。


その光景を見届けてから、俺は一つ息を吐いた。


《お疲れ様、久遠》

「ありがとう、アイリス」


脳に響く声の主──アイリスの言葉を返すと、改めて地面に倒れ伏したウェアウルフの姿を見下ろす。


「しかし、なんでこんな所にウェアウルフが……?」


今俺がいるのはダンジョンの中だ。10年前にこの世界に出現したこのダンジョンは一種の異世界であり、元来この世界にはいないハズの怪物が闊歩している。このウェアウルフも当然そんな存在だ。だからウェアウルフとダンジョンで遭遇すること自体はおかしくない。


ただダンジョンは下に行くほど異界らしさが濃くなる。この濃さは基本的には一階層ずつ徐々に変わっていくが、ある部分で急にレベルが変わる部分があり、その階層を境界として上層、中層、下層、最下層と分けられている(ダンジョンによって異なる場合もあるが)。


それを前提として考えると、ウェアウルフはこのダンジョンでは中層に現れるクラスの魔物のハズなんだが、俺がいるのはまだ上層に該当する位置だ。確かに中層に近い場所まで降りて来てはいるが、本来はこんな所で遭遇する相手ではない。


《はぐれじゃないかしら》

「まぁないとはいえないけれど」

《中層まで降りた誰かが早々にコイツと遭遇して逃げ出して、それを追っかけてきたとかじゃない?》

「ありえない話じゃないか」


まぁ考えたとしてわかる事でもないか。


「ただよりによってウェアウルフとはなぁ。どうせなら素材が取れる奴が良かったよ」


俺達ダンジョンに潜る人間の収入源はいくつかあるが、その中の一つが魔物から取れる素材だ。()()()の許様々な研究が進められており、様々な分野にすでに利用が開始されている。なのでそういった素材を持って帰れば協会が買い取ってくれるのだ(窓口は協会に統一されており、それ以降の販売を行っている)。


なんだけど、ウェアウルフは素材として買い取ってもらえる部位がないんだよね。強さはそれなりにあるのに、偶に発生する魔晶化でもしない限り1円にもならないのである。そりゃため息も出るわ。


《まぁでも、これの討伐実績で3級に上がるんじゃない?》

「……あ、そっか」


沈みかけていた気持ちが、アイリスのフォローの言葉で少し上向きになった俺は、後方に視線を向けた。


そちらの方向には、少し離れた場所にドローンがふわふわと浮いていた。これは登録した魔力を自動追尾する性能を付与された撮影用のドローンで協会で5級認定(階級は6級からだが、6級は研修以外ではダンジョンに潜れない見習いなので)された時協会から供与される。俺達探索者は必ずこのドローンを起動した状態でダンジョンに潜る事が求められている。


理由はちゃんとあって、大きな理由としてはダンジョン内で危機に陥った時の救助の際の場所の特定、ダンジョン内での違法行為の抑制(他の探索者の妨害とかね)、そして撃破実績の確認である。


ウェアウルフの能力を考えると、確かにこれの討伐実績を確認して貰えば3級に昇級できるかもしれないな。


《最も久遠の場合は本来の体に戻れば特1級だって目指せるけどねぇ》


ふふーんという笑い声が聞こえそうな調子でいるアイリスの言葉に、俺は苦笑を浮かべる。


「いや、本来の体は今の体だからな? それにそっちでも特1級は無理だって。継戦能力が低すぎる」

《うっ……それは否定できないけど……まぁそれはいいとして、この後どうするの久遠? はぐれにしてもこんな所まで来ているとなると、他にもいる可能性があるけど》

「んー……引き返すか。ウェアウルフの群れとかだったら最悪だし」

《それが無難かしらね》


疲れるだけでリターンがない戦いなんかしたくないしな。そう考えて身を翻し歩き出したその時。


俺の体を下から突き上げるような衝撃が襲った。











オーソドックスなダンジョン配信物が書きたかったんです……許してください……

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