麻袋
茶色の麻袋にビー玉を詰める。赤、青、黄、様々な色がごった返しているのが好きだった。じゃらじゃらと音を立てて中身を振り交ぜてみる。口からビー玉がこぼれないように手でぎゅっと抑えて振った。よく混ざったのを目で確認したら、手を袋に突っ込んで一つ取り出してみる。中身が水色に波打った透明なビー玉だった。光に透かして回してみる。するとどうだろう。宝石のように光り輝くではないか。まるで生きているかのような色彩に、踊りだしそうなハーモニーに感嘆し、しばしじっくりと眺める。掌の上で転がした後丁寧に袋に戻す。余韻が手を残っている。ビー玉をつまんでいるふりをするうちにどこかからかビー玉が飛んできそうな気がする。棚の奥に秘密の場所にそっと置いておこう。誰にも見つからぬように。
袋に穴が開いていて、そこら中にビー玉が散らばったとしてもそれは私の宝物である。袋に手を入れて何にも触れなかったとしても。決して失われることはないのだ。あの瞬間だけは。存在の有無は問題にならない。見えないものは見えないふりをしているだけなのだ。本当にただそれだけなのだ。