不信
俺はいつも通りあの「風神」と一緒に
気に入らないやつを従わせていた
そして朝にはいい人を演じるために桜木と一緒に学校へ向かった
いつも通りの一日が終わり教室を出ようとしたとき担任に呼び止められた
先生曰く 生徒会 飯田の不信任案が出されているとのことだった。
その日から一週間停学処分となった
飯田「停学? 上等・・ 一週間学校にくるなってか?」
俺の心には怒りしかなかった
初めての感覚だ
内から湧き出た怒りを何も気にせず発散した。
次の日から学校に飯田の姿はなかった。
クラスも何事もないように一日を過ごすのだろう
夕方17時頃家のインターホンが鳴った
父は仕事 母は夕飯の買い出し 妹はまだ学校から帰ってきてない
家には俺一人だった
飯田「しゃーねぇな」
そういってベッドを飛び出した。
「風神」だ
そのまま一緒に街へ出たのだ
正直この時の姿を学校の人間に見つかるのはシャレにならない。
停学を喰らっているのもそうだが
学校では一応生徒会としての面子もある。
街といってもそこまで栄えてはない。
少し進めば田んぼや畑
街というより町といったほうが正しいかもしれない
その日も二人でゲーセンに行き
カツアゲをしている高校生を裏に呼び出して世直しだ
これでも自分のための喧嘩はしないのはもちろんのこと
弱いやつから金を巻き上げようなんて言語道断だ
相手は五人いたが問題はないだろう
一瞬で片付いた
一瞬は少し持ったかもしれないが
五分も持たなかった。
ふと携帯を見ると
桜木からの着信が数十件
飯田「ったく。。。めんどくせぇ。。」
かけなおすこともなくそのまま
帰宅し、家族とも一言も話さないまま
ベッドに入った。
気が付いたら寝ていたのだろう
起きたらもう朝だった
この日も夕方にインターホンが鳴った。
ただインターホン越しに見えるのは
「風神」ではなく桜木だった
飯田「ったく。。。ほんとめんどくせぇやつだな。。。」
さすがにずっと外に待たせるわけにもいかず
とりあえず部屋に上がらせた
気が付くと俺はベッドに座り桜木は俺のPCチェアに座ってジュースを飲んでいた。
桜木からはいろいろなことを聞いた。
現在俺への不信任案が生徒会の議題に上がっていること。
クラスの様子
授業の進み具合
どれもどうでもよかった。
しかし今俺が生徒会をクビになるのは少しまずい。。。
一発にして退学になる。
生徒会は俺を学校にとどめる救いの糸だった
俺の心の中に「不安」が生まれた。
ただ今の俺はどうすることもできない
少なくともあと5日は停学処分が残っている。
願いとすればその5日間でその不信任案が可決されないことを願うだけだった
桜木がかえってから少しした後
飯田「いった。。。。ぐああぁぁ」
頭が割られるような痛みが走った。
飯田「俺は。。。桜木と一緒にいて。。。電車に乗って。。」
見たことのないはずの記憶が押し寄せてきた
こめかみのところで脈を打っているように痛い
俺はおもむろに松原先生に電話で今の状況を説明し
そのまま親の運転で病院へ向かった。
松原「なんだろうね。。。君は少し回復が早いようだね」
先生は驚いた口調で言いながら
鎮静の注射の準備をしていた。
ぷすっ。。。
10分くらいでその薬が効いたのか
そのころには痛みはもうなくなっていた。
松原「飯田君。。。君少し変わったね。。。なんというか。。。ほんとに変わった」
何を言っているのかわかんないが褒められてる気はしなかった。
俺は先生に一礼して病院を後にした。
ほんの少しだが消えたものが元に戻った気がした。
ジグソーパズルのピースが少しづつ組みあがっていく感覚だ。
携帯を見ると桜木からの着信があった。
俺は親の車には乗らず歩いて帰ることにした。
もちろん止められたが
そう遠くないので運動がてら歩いて帰ることにしたのだ。
それに桜木からの着信を無視してはいけないと思ったのだ。
でも俺は一体桜木と何を話せばいいのだろうか
今の俺が何を話せるのだろか
でも俺は電話をかけなおした。
驚くことにワンコールで桜木は電話に出た。
桜木「もしもし!? もぉ! 心配したんだからね! 電話には出ないし 家に行ったら妹ちゃんが泣 きながら病院に行ったって言ってるし!」
飯田「大丈夫だ ちょっと頭割れそうなくらい痛くなっただけだから」
そういいながら俺は人気のない道に入り煙草に火をつけた
桜木「未成年はタバコ吸っちゃいけないんだよ?」
軽く想像できる
きっとこいつは今電話の向こうでどちらかの手を腰に当てて怒っている。
少し笑ってしまった。
飯田「大丈夫だよ ここならばれないし」
そういって口から煙を吐いた
はいた煙はどんどん上に上がっていく
俺は不思議な気分だった。
普通なら心配されたり
怒られるのは好きじゃないし
むかつきもする。
ただ桜木は違った
なんか。。こう うれしかったんだ。
桜木「やめろとは言わないけどさ 少し控えな? 体に悪いし」
心配されている。
嬉しいが照れくさい
この感覚嫌いじゃないかもしれない
飯田「はいはい。。 そういえば松原にお前は回復が早いっていわれてさ
今回の頭痛もそのせいらしいんだって」
少し自慢げに言った
ただ言ってから思った
俺の記憶がなくなる前の恋人だったって人に
回復が早いって言っても
なくなったものが戻っても
それまでのことがなくなることはない
よくよく考えれば
記憶をなくした俺にちゃんと寄り添ってくれたのは
桜木だけだった。
桜木はなんで。。。
考えていたらまた頭が痛くなりそうだった。
飯田「そろそろ家着くから。。。切るな」
そういうと一方的に電話を切った
そのあとすぐに家に向かって走りだした
早く帰りたいわけじゃないが
走りたくなった。
桜木に嘘をついてしまったことを少し後悔してるのかもしれない
15分くらい走っただろう
家に着くや否や水を一気に飲み干しそのままベッドに倒れた
まだ息が荒い。。。
そのまま深い闇に意識を落としていった