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出会い

 プロローグ

○月○日 ミライQ325成功。見たところ異常は見当たらない。準備が終わり次第、すぐに過去へとばす。やっと、私の目的が果たされるときがきたんだ。…ああ、名前。そうだな、全部同じ名前なのはあれだな。名前は『如月ミライ』にしよう。


 いつもの朝

 朝、カーテンの隙間から差す光が映し出したのは、空気中に舞う埃と床を覆い尽くしたフィギュアの姿だった。

「「おにぃーちゃん!おーきーてぇー。」」

 同時に言い放ってドアをいき良いよく開けたのは顔のそっくりな二人の幼児だった。二人は慣れたようにフィギュアの隙間をピョンピョンと跳ぶと、ベットに出来た山に飛び乗った。

「ぐぇっ」

 山から蛙のような声が聞こえる。山はゴソゴソと動き出したと思えば、ピタリと動きを止める。二人は打ち合わせでもしていたようにコテリと首を傾げる。それと同時に山からいき良いよく出てきたのは二人の兄、佐藤コウだ。

「サキ!ヒロ!起こすときに上に乗るなって言っただろ!」

 ツインテールの少女サキとまだ少し眠そうな少年ヒロはニヤッと笑ってベットから飛び降りる。

「母さんも二人に言ってくれよ。もっと優しく起こせって。」

 走って階段を降りていくサキとヒロが落ちないように見ながら、コウは一階のキッチンに向かって言う。

「あら、これが一番良く起きれるでしょ。」

 ウインクしたのは三人の母、ナミエだ。コウはげっそりしながら椅子に座り、机の上にある食パンにかぶりついた。ずれ落ちた眼鏡をあげる。そこにはヒロに野菜を食べさせようと躍起になっているナミエと、隙をみてヒロの分のコーンを食べるサキの姿があった。

 幸せ、だなぁ。コウはふと思う。父のミツルが死んでから何年もたった。ナミエはパートをいくつも掛け持ちし、コウ達を愛情いっぱいに育ててくれた。その明るさに何度も救われた。この生活がずっと続けばいいな。

 窓からの光が四人を明るく照らしていた。

「いってきます。」

 そういって家を出ると、玄関には見慣れた顔があった。

「カケル。わざわざ待ってたのか。さきにいけばよかったのに。」

「そんな優しい友達に放課後クレープ奢ってもいいんだぜ、コウ君。」

 柊カケルは高校で初めてできた友達だ。カケルも小さい頃に親をなくしている。それもあってか細かいことを気にせずに話せる相手でもある。

「奢らねぇよ。はじめからそれ狙いで待ってただろ。」

「そんなこと言っていいのか、コウ?」

「なんだよ…。」

「テッテレー!!」

 カケルが鞄から出したのは…。

「ほ、星空未来の限定版フィギュア、だと?!どこでそれを!?」

 星空未来とは、コウが大大大好きなアニメ『星空未来の異世界攻略物語☆』の主人公である。カケルが鞄から出したのはそのキャラクターの最新フィギュアの限定版だ。メジャーではないアニメなこともあり、数がとても限られている激レアである。

「知り合いにたまたま持ってるやつがいてよ。お願いしたらくれたんだ。どうだ?これがほしくないのか?」

「わかった!クレープ好きなの奢ってやるから早く、早く星空未来様のフィギュアを眺めさせてくれ!」

 コウのギラギラと光る目に引きながらも、カケルは「約束な。」といってフィギュアを渡した。コウは丁寧にフィギュアを持つ。

「透明感のある水色のショートの髪に、ガラス玉のような瞳。ああ、何て美しいんだ!」

「考えてることがだだもれなんだよ。さっさとしまえ。」

 コウは我に返り、フィギュアをハンカチで包むと鞄にいれた。

「そういえば、今日うちのクラスに転校生がくるんだとよ。それがめっちゃ美人って噂でさ。」

「俺は星空未来様しか興味ないから。」

「素っ気ないな~。」

 カケルはそんなコウをみて笑うといつの間にか着いていた教室に入った。

「そういや、今日転校生が来るんだってな。」

「転校生?」

「昨日の話聞いてなかったのかよ。転校生が来るって松田が言ってたろ。噂によると、美女らしいぜ。」

 カケルはニヤリと笑いながらこちらを見た。そんなカケルをコウは冷たく見つめる。

「俺は星空未来様しか興味ない。」

 三次元の女子なんて夢のないものに期待しない。コウはカバンの上から中に入っているフィギュアを優しく抱きしめた。

「全員席につけ。始めるぞ。」

 担任の松田先生は教壇に立つと連絡事項を述べる。いつもはそれで終わりだが、今日は違った。

「昨日言った通り、転校生を紹介する。如月、入ってこい。」

 漫画のような登場だな。コウは三次元への失望を含んだため息を吐きながら窓に顔を向けた。窓に反射した転校生の姿を瞳に捉えた瞬間、コウは目を見開き、転校生に目を向けた。そこからはすべてがスローモーションに感じた。ガラスのような瞳、透明感のあるつややかに輝いた髪、形の整ったピンク色の唇。

 ありえない。でも、違うところと言ったらあの浮世離れした水色の髪が茶色になったことだけ。それも、また水色とは違う味を出している。

「星空未来様・・・!」

 これが、コウとミライの出会いだった。



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