戯れ言 先天性心疾患の私と妹が医療ドキュメントを見る 心疾患兄妹編
先天性心疾患を持った学生時代の「私」と妹のたわいも無い体験談。
似たような境遇の方には、酷な面や気分を害することもあるかと思いますが、
よろしくお願いします。
子供の頃、小児医療のドキュメント番組を見ていた時のこと・・・・・・。
心疾患の子供が題材ということで、私と妹は少し覚めた目で見ていた。
妙に大げさに、今にも子供が死にます的な演出に二人で首を傾げた。
「なぁ妹よ」
「なに兄貴」
「俺らってそんなに自分の体のこと、深刻に考えたことあったっけ?」
「いや、無い・・・大体、私どころか、この子の病状的に兄貴と同じくらいじゃないの?」
「大人(親)にとっては深刻かもしれないけど、何だかな・・・子供ってそんなに深く考えてなくね?」
「なんて言うか、頑張っているって言うのを押し売り過ぎなんだよねこう言う番組。まあ頑張って無いとは言わないけど・・・何か、私の担当もこう言う番組出て色々聞かれたけど、大変だぁとか、難しい手術とか強調されすぎて、放送見たら呆気にとられてたみたい」
「マジかよ・・・そんなに大げさに難しいなら手術せずに薬で調整するよう頑張るよな・・・・・・」
「手術は患者の命かかってるから、簡単なんて言えないだろうけど、ヤバそうな見せ方上手いよね」
「まあ、俺らも生き方で我慢はしている部分はあるよな」
「でもさ、生まれた時からこうだから、普通の人と比べるのって出来ないよね」
「ああ、あるある。精々体力面でついて行け無いくらいか? 俺も正直学校は半日が限界だわ」
「でもさ、こう言う私らの考えや実状って、健常者は気丈って勘違いしちゃうんだよね」
「それなぁ、何考えているのか正直わからん。わからん俺らのほうが、おかしいんだろうけど」
「兄貴・・・」
「なんだ妹」
「何か、見てたら腹立ってきたんだけど」
「なんだ? 知り合いでも出てたのか?」
「死にますよ的な演出正直ウザい。何でもうちょっと明るく出来ないの?」
「まぁ、大人(親)視点だからじゃないの? ニーズって奴?」
「そんなん見てて面白くないんだけど」
妹は怒気を孕んだ口調だった。
「兄貴・・・」
「なんだ妹」
「親も悲観的ってより頑張ってますよ感がウザいんだけど。本当に子供のこと解ってるのかな?」
「俺ら親じゃ無いし、その辺は許してやれよ・・・少なくとも俺らがどうこう言う事じゃ無い」
「でもさ兄貴、腹立たない?」
「すまない妹・・・俺、そこまでヒートアップできない」
「結局、兄貴もそっち側か」
「うーん。強いて言うなら中間じゃね? 中途半端に悪くて中途半端に丈夫って感じかな?」
「うん。兄貴は私と比べて中途半端だよね。それに私もヤバすぎるから、お誘い来ないんだろうね」
「なぁ妹、お前、実は何度か撮影見てたのか?」
「内緒。でも、まあ、あそこに居た子達は結構元気にやってるんだけどね。あと、兄貴が昔鍵開けて病棟から脱走したのも聞いたよ」
「だって暇だったんだよ。正直、病室の仲間で一斉に脱走計画とか考えてた」
「うわ・・・メチャ怒られる奴じゃん。こりゃ絶対ブラックリスト乗ってるわ」
「まあ、大人が見ているよりも俺らは元気ってことでいいじゃん」
「むしろ、そういうとこ番組にして欲しいんだけどね」
「そりゃそうだ。暗い話しよりずっと面白い」
「うちの小児病棟の婦長達の苦労は、どっちかって言えば病気よりもそっちなんだろうけどね」
顔を合わせて堪えきれず、ついに私も妹も大爆笑。
他人から見たら、変な兄妹だと白い目で見られるか、親なら怒るかもしれない。
ただ、その時の私達には何故か自分達が言っていることがおかしかった。
医療ドキュメントの番組を否定するつもりは無い。
出演された当事者の方々も、必死で何かを残そうとしているのかもしれない。
ただ、子供の頃の私達にはそこまでの考えに至らなかったことと、どうしても自分の考えに偏ってしまい、一般的な考えとはズレているのか、何かが欠落しているのかもしれない。
人の気持ちになって、と言うのは本当に難しい。
そしてあの時、妹が冷めた目で怒気を孕んだような言い方。それを理解しがたいのは、私も未だに中途半端な人間なのだと思い知らされ、深い溜息を漏らすのだった。
思ったより長くなってしまったのが悔やまれる・・・・・・。