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初恋☆リベンジャーズ  作者: 遊馬友仁
第一部〜ドラ・ドラ・ドラ!我レ復讐ニ成功セリ〜
85/392

回想③〜白草四葉の場合その2〜玖

4月1日(金)


 伯父が熱心に掛け合ってくれたためなのか、母は、わたしのテレビ番組の出演に許可を出してくれた。自分が出演できない場合は、レッスンの教え子であるクロに、わたしの想いを託そうと考えていたのだけど――――――。

 二人揃って番組に出演できることになり、クロと同じステージ(と言ってもテレビ局のスタジオだけど)に立てることに、喜びを感じる。

 クロのレッスンも順調に進み、水曜日から始めた特訓は、確実に彼の披露するパフォーマンスを向上させる成果をあげていた。

 クロによると、前日(木曜日)の夜、司サンに『Twist and Shout』を披露したところ、


「竜司、スゴいじゃない! たった二日で、ここまで上達するモノなの? これなら、テレビに出ても問題ないレベルじゃない?」


と、誉めてもらうことができたらしい。

 彼の言葉から、クロ自身がこだわりを持って選んだ曲を披露できること、何より母親である司サンからお誉めの言葉をもらったことに喜びを感じていることが伝わってきて、わたし自身も嬉しく感じる気持ちでいっぱいだった。

 この日は、ビートルズや、クロのお気に入りの映画『フェリスはある朝突然に』の映像を参考に、収録時に披露するパフォーマンスの振り付けなどを研究し、実際の歌唱に合わせる練習を行った。

 歌いながらの振り付けを行うパフォーマンスは、最初の方こそぎこちなかったものの、何度も歌唱を重ねるうちに、クオリティーが上がっていく。

 月曜日には、休暇を取って付き添いに来てくれてる、という司サンに、さらに成長した(?)姿を本番で見せることが出来るだろう。

 夕方、この日のレッスンも終了という時間になって、わたしは、クロに声を掛ける。


「クロ、かなり良くなって来たよ! 土・日も確認のための練習をしておけば、歌も振り付けも、月曜日の収録日でも十分イケると思うよ!」


「あぁ、なんとか自分でも納得できるようなカタチになってきた。全部、シロのおかげだ! ありがとうな!」


 笑顔で感謝の言葉を返してくれた彼に、


「ううん……クロが頑張ったからだよ……」


と、返答しながら、わたしは、週明けの番組収録のことを想像しながら、期待に胸を膨らませていた……。


この時まで、そう感じていたのだけど――――――。


4月4日(月)


==============


我が家のことがまとまりました


状況が落ち着いたので、明後日

伯父さんの家に迎えに行きます


新学期には学校に戻れるから

安心してね


==============


 日曜日の深夜、LANEに母からのメッセージが入っていた。

 月曜日の朝、起きてすぐにメッセージを確認したわたしは、すぐに母と連絡を取り、水曜日に帰京することが決まった。

 ようやく、母親の待つ実家に戻れることになったけれど、不思議と、あまり嬉しいという気持ちは湧いて来なかった。

 むしろ――――――


(もうクロとは会えなくなるのかな……)


と、寂しく想う気持ちが強いことに気づく。

 そう感じたのは、週末の土曜と日曜に、クロの家には行かず、叔父夫婦の家で過ごして、彼に会えなかったということと、関係があるかも知れない。

 金曜日の段階で、クロのパフォーマンスは十分なレベルに達しているように感じていたし、あとは『Twist and Shout』の楽曲の持ち味が出るように、クロ本人が楽しみながら歌い上げるだけだ、とわたしは考えていた。

 そして、彼が完成させたパフォーマンスを確認するという《お楽しみ》は、本番まで取っておこうと、週末に黒田家にお邪魔するのは控えることにしたのだ。

 あとは、せっかく登録したSNSに自分が出演する番組のことを告知しておこうと考え、出掛ける前に、スマホから告知文を投稿しておいた。


====================

いいね!を見る

clover_field 今日は、テレビ局の春休み特別企画カラオケ大会に出場します。

わたしは、セリーヌ・ディオンの『トゥ・ラブ・ユー・モア』を歌わせてもらいます。

自分も、一緒に出場する友だちも、上手く歌えるといいな。

====================


 そんな想いで、本番当日を迎え、テレビ局に向かう際の集合場所である黒田家に到着したのだが……。

 待ち合わせの時間通り、午前九時ちょうどに、黒田家の玄関のチャイムを押すと、ドアが開かれ、見知らぬ女性があらわれた。

 年齢は、二十歳前後だろうか? 大学生くらいに見えるその女性は、


「あなたが、シロちゃん? 今日は、よろしくね」


と、ニッコリとした笑顔で語りかけてきた。


「は、はい! お邪魔します」


 なぜ、見知らぬ女性が黒田家の玄関で出迎えるのか、疑問に満ちた表情のまま、玄関前で固まっていると、フロアの奥からクロが顔を出した。

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