表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初恋☆リベンジャーズ  作者: 遊馬友仁
第六部~夏の夜空と彼女の想い~
447/451

第4楽章〜フィナーレ〜⑪

 8月13日(日)  午前6時すぎ〜


 合宿最後の長い夜は、オレに紅野アザミの気持ちを認識させると同時に、ほおの部分に幸福に感じられる感触と女子生徒二名による平手打ちという代価をもたらした。


 どう考えても、昨夜の()()()()()()()()は、完全に不可抗力であり、オレ自身が非難をされる筋合いなど無いと思うのだが……。


 ラブコメ漫画などで良く目にする光景ではあるが、こう言ったトラブルに遭遇したとき、理不尽な暴力にさらされるのは、いつも男子であると相場が決まっている。


 そのお約束に則ったシロと桃華のビンタは、紅野アザミによってもたらされた幸福な感触を上書きするのに十二分な破壊力で、いまもオレの右頬には、ヒリヒリとした痛みをともなう感触が残っている。


「右の頬を叩かれたら、左の頬を差し出せ」


 というのは、世界三大宗教の中でも、もっとも有名な教えのひとつだと記憶しているが、女子二名による不条理きわまりない暴力行為に対して、「非暴力と愛で応えよ」という救い主のありがたい言葉を実践する心の余裕は、オレにはなかった。


 ジンジンと痛むほおをさすりながら、ベッドからゆっくり起き上がったオレは、クラスメートと下級生によってもたらされた非合理的な行為を思い返して、ため息をつき、


(いったい、どんな顔をして、紅野や桃華に会ったものか……)


と頭をひねる。


 ちなみに、合宿参加メンバーではないシロと宮野は、肝だめし大会が終わったあと、彼女たちが宿泊しているペンションに戻っていき、合宿最終日となる今日は、完全に別行動になる。


 自分の最大の懸念事項であるその相手と、すぐに顔を合わせる必要が無くなったことは幸いではあったが、()()()()()()()()()()()()()()()、と紅野に宣言したことが、より困難になるのではないか、という不安を拭えないでいた。


 そんな悩みに頭を抱えながらも、火照ったほおを冷やすべく、室外にある洗面所で顔を洗っておこうと部屋の外に出ると、廊下の奥に上級生の女子生徒の姿が見えた。


「おはよう、黒田くん! 一夜明けて、調子はどうだい?」


 こちらが声をかけるより先に話しかけてきた寿先輩に、自分自身の身体に起こっている変化をありのままに答える。


「調子は良いとは言えないですね。右の頬は、まだヒリヒリ痛みますから」


「おやおや、それは災難だね〜。まあ、『選ばれし者の恍惚と不安、ふたつ我にあり』ってことで、受け入れるしかないね」


 カラカラと笑いながら答える上級生に、ため息をもらしながら返答する。


「いや、オレは誰かに()()()()なんて実感は、まったく無いんですけど?」


「いやいや、それは、いくらなんでも卑屈すぎるってもんでしょ? 実際、後輩ちゃんだけじゃなくて、白草さんや佐倉さんだって――――――いや、なんでもない……キミが、このまま朴念仁ムーブを続けてくれる方が、私たちにとっては都合が良いから。それより、朝食が始まる前に少し話せないかな?」


 そう言って、寿先輩は、人気(ひとけ)の無い施設の外を指差す。


「はあ、わかりました」


 オレの返事を聞いた先輩は、「ありがとう」と笑顔を返し、玄関を通って屋外に出る。


「それで、昨日は後輩ちゃんと、どんな話をしたの?」


 玄関のそばの駐車場に移動した上級生は、宿泊施設の壁に背中を預けながらたずねてきた。


「どんな話と言われても……寿先輩に言われたとおりですよ。紅野からは、来季の生徒会について話をされました」


「ふんふん……それで、キミはなんて答えたの?」


「それは――――――オレの中で、まだ答えが出ていない問題があるから、その問題に決着が出るまでは、生徒会の件に関する回答は、待ってくれないか? と答えました」


「ふ〜ん、なるほどね。で、ウチの後輩ちゃんは、キミの回答を受け入れた、と……」


「そうですね」


「う〜ん、後輩ちゃんも詰めがあまいな〜」


 寿先輩は、ヤレヤレと苦笑いを浮かべながらつぶやく。


「回答を引き伸ばされたときは、せめて、こちらから期限を切るべきだけど……そこまで求めるのは、まだ酷なのかな? まあ、自分の気持ちと今後の展望を伝えられただけでも、今回の目標はクリアってことにしとくか」


 続けて、独り言のようにそう言った彼女は、「ところで……」と、さらに言葉を紡ぐ。


「黒田くん自身の問題って、今回の合宿に顔を出したメンバーと関係あること? それは、いつ頃、決着をつけるつもり?」


 上級生の言葉を受けたオレは、少しだけ考える時間をもらったあとで、口を開いた。


「最初の質問は、プライベートなことなので、ノーコメントにさせて下さい。次の質問については、紅野にも伝えていますが、二学期が始まったら、そう遅くない時期に答えを出すつもりです」

 

 そう答えると、寿先輩はニコリと笑って、満足したように言葉を返してきた。


「そう言うことなら、私もキミの考えを尊重させてもらおうかな。黒田くん、キミたち広報部の協力のおかげで、今年の強化合宿は、実りの多いものになったよ。本当にありがとう。午前中は、最後の全体練習があるから、そこで、合宿の成果を見せてあげよう!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ