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初恋☆リベンジャーズ  作者: 遊馬友仁
第六部~夏の夜空と彼女の想い~
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第4楽章〜フィナーレ〜⑩

 同日 同時刻


 〜黒田竜司の見解〜


「クロ! ナニやってんの!?」


 展望台の手前にある広場の方から聞こえてきた叫び声にビクリと身体を震わせたオレと紅野は、同時にそちらの方向に身体を向ける。すると、何本もの懐中電灯の光がオレたち二人を照らしていることがわかった。


 まるで、夜中の屋外で追いつめられた逃亡犯のように、片手でまばゆい光を避けながら、なんとか広場の方に目をやると、いくつかの人影がこちらの方に向かって、やって来るのがわかる。


 その中でも、後方のメンバーに比べると、弱々しく光るライトを手に持ったひとつの影が、ふたたび声を上げた。


「ナニしてるのかって聞いてるの? わたしたちに言えないようなことなの?」


「シロか? 別に何もしてねぇよ! ただ、紅野と話し合ってただけだ!」


 大声で返答すると、


「ちょっと、そこに行くから待ってて!」


またも声が上がったが、「大事な話をしていたところなのに、とんだ妨害が入ったな……」と、紅野に目向けて、肩をすくめる。すると、オレの表情が可笑しかったのか、あるいは、彼女本人も困ったことになった、と感じているのかはわからないが、紅野もオレの顔を見て苦笑する。


(仕方ないな……)


 ため息をついたオレは、シロの言葉に反して、展望台の階段を下り、こちらを問い詰めようとしてくるクラスメートのもとに歩き出した。


「どうしたんだ、シロ? もうゴールしてたんだじゃないのか? 展望台のところには、御札は残ってなかったし、みんなミッションはクリアしたんじゃないか、と思ってたんだけど違ったのか?」


 オレが、シロに語りかけながら近寄ると、彼女は不服そうな表情で、


「わたしたちも、雪乃たちのペアも、とっくにゴールしてるよ! クロたちが、なかなか帰って来ないから、心配になって見に来たの!」


「そりゃ、申し訳ないが……そんなに長い時間が経ってたわけじゃないだろ?」


「そう……かも知れないけど――――――幽霊役をしている先輩たちをあまり待たせるのも失礼でしょ? クロたちが最後のペアだし、早く戻って来ないと先輩たちも帰って来れないじゃない?」


 良くわからない理由で突っかかって来るシロだが、その言動に困惑したようにオレの背後から声がする。


「心配させちゃってゴメンね、白草さん。でも、私たちは大丈夫だから気にしないで」


 オレのあとに続いて展望台から降りてきた紅野がそう言うと、今度は、シロの背後から「そうそう! もう心配する必要は無いんだな、コレが」という声が聞こえた。


 懐中電灯のまばゆい光の中から発せられた声は、この肝だめし大会を企画した吹奏楽部の副部長のものだということがわかった。


「心配する必要は無いって、どういうことですか? 寿先輩も、オレたちのことを心配して来てくれたんじゃないんですか?」


 なぜ、シロをはじめとする他のメンバーが、肝だめしの終了が間近な時間帯になって展望台までやってきたのか……そのあたりの事情をまったく飲み込めていないオレが上級生にたずねると、


「いや〜、佐倉さんと宮野さんと会ったとき、他の脅かし役のメンバーに、『もう、ほとんどのペアが通過したから、ゴール地点に戻ってイイよ』って、伝えちゃったんだよね〜。だから、白草さんの心配には及ばないってこと」


と、彼女はいつもの砕けた口調で内情を語った。


「そうだったんですか? でも、それじゃ、ボクたちが聞いた女子の悲鳴は―――?」


 懐中電灯の電源をオフにして、オレたちの会話に加わってきた壮馬がたずねると、寿先輩が口を開く前に、申し訳なさそうな声で謝罪する女子がいる。


「それは、きっと、わたすの声だべ。周りの人には、迷惑をかけてしまって、申し訳ないべ」


 壮馬とは違い、恐縮したように語る宮野は、懐中電灯を足元に向けて眩しさを抑えているようだ。


「そうね、宮野さんと佐倉さんが不安そうだったから、帰りは私のエスコート付きで戻って来ることにしたの。もちろん、もう脅かすのはナシにしてね」


 副部長の言葉に、今度は桃華が反応し、


「寿先輩、あらためてありがとうございました。おかげで、無事に御札を取ってゴールすることも出来たし……」


と感謝の言葉を述べると、上級生の女子生徒は、


「お礼なんてイイよ! 企画立案者として当然のフォローをしただけだからね」


と笑いながら、下級生に優しい言葉をかける。

 こんな感じで、とりあえず、シロが懸念していたことは、杞憂に終わったはずだったのだが……。


「それはわかりましたけど……そんなことより! わたしが気になってるのは、クロと紅野さんの距離がめちゃくちゃ近かったってこと! さっきは、『ただ、話し合ってただけだ!』って言ってたけど、話し合うだけで、二人が、あんなに近づくなんて不自然じゃないの!?」


 自分は、まったく納得していない、という感じで憤慨するように語るシロに対して、ふたたび困惑するような表情で、紅野が返答する。


「それは……私の目にゴミが入ったのを黒田くんが、確認しようとしてくれただけだから。こんな風に―――」


 そう言って、クラス委員ともに務める女子は、展望台での出来事を再現しようとオレの隣に立って、こちらの顔を見上げる。

 その仕草に、一瞬、息が詰まったような感覚を覚えながら、紅野の表情を確認しようとした瞬間、


「へぇ、後輩ちゃん、なかなかやるじゃん!」


と言った寿先輩が、紅野アザミの肩に軽くタッチした。


 ただ、そのボディタッチによって、身体のバランスを崩した紅野が、オレの方に倒れかかってきた。

 そして、平衡感覚を失いかけている彼女を支えようとしたオレは、その身体に触れる前にほおに柔らかい感触を感じたのだが――――――。


 その感覚が紅野の口唇であることに気がつく前に、周囲からの


「あ〜〜〜〜〜〜〜!」


という叫び声が、オレの鼓膜に到達したのだった。

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