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初恋☆リベンジャーズ  作者: 遊馬友仁
第五部~あるモキュメンタリー映像について~
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幕間〜うしおんなに関するウワサについて〜②

 高校を卒業してすぐの頃、バイトして貯めたお金で念願のバイクを買ったんや、友だちと一緒に。

 高校の頃から仲の良かった、そのメンバー六人で、山道を攻めるダウンヒルをすることにした。


 これは、その時に最後尾を走っていたAから聞いた話しや。

 カーブや道路の状況を確認するために、まずは六人が一列縦帯になって頂上を目指した。


 Aは、その時から異変を感じていたらしい。


 坂を登りきって、一度、平坦な道になる場所に出ると、上下二車線の道の真ん中に、突然、大きな岩が出現した。そう、夫婦岩(めおといわ)と呼ばれている、あの岩や。


 その岩を過ぎた辺りから、自分の後ろの方で妙な音が聞こえてきたらしい。


 バイクでも、乗用車でも、大型バスでもない音。

 そう、ちょうど、馬とか牛みたいな四つ足の動物が走るような音が――――――。


 引き離そうとスピードを上げても、その音はピタリと付いてくる。


 怖くなって、前を走るライダーを抜いてしまったら、その友だちは、「隊列を守れ」と怒るだけで、「音なんか、何も聞いてへん」という。


 ダウンヒルの本番の下りは、みんなで時計を合わせて、1分毎にスタートすることにした。


 ところが、Aは「俺は最後に走るのはイヤや!」って勝手なことを言ったかと思うと、四番目にスタートしたんや。残された自分とBが、「順番守れや!」という声も聞かんとな……。


 ただ、Aによると、走り出してすぐに、またあのヒヅメのような足音が聞こえてきた。


 ゾクリ――――――として、全速力で振り切ろうとアクセルを全開にする。


(今度は隊列なんかないから、全速力なら絶対に振り切れる……)


 そう思ったそうなんやけど、ヒヅメの音は大きくなるばかりや……。


 そして、いよいよ足音が近くなった瞬間――――――。


 横を見ると、オンナ物の和服を着た人間が走っていた!

 しかも、顔はツノが生えた牛のような恐ろしい面や。


 思わず、目をつぶりそうになるのをこらえながら、Aはなんとか、先にスタートした仲間がいる場所までたどり着いた。

 バイクから降りると、先にゴール地点に着いていた仲間は、


「スゴいやん!」

「めっちゃ速かったな!」

「これは、新記録ちゃうか!?」


と、その走りを称えて集まってきた。


 ただ、Aがヘルメットを脱いだ瞬間、みんな絶句したらしい。Aの顔が汗まみれやのに、表情は青ざめてガタガタ震えていたからや。Aは、その表情のまま、ずっと、つぶやいとったらしい……。


「なんでや、なんで、俺だけに見えるねん?」


 それから、しばらくして、Aはバイクの事故で亡くなってしもた。

  

(50代・県内在住・男性)

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