プロローグ〜ある少年の超常現象に関する考察について〜
〜黄瀬壮馬の見解〜
怪奇現象をいつまで信じていたかなんてことは、他愛のない世間話にもならないくらいのどうでもいい話だけど、それでも、ボクがいつまでオカルトなどという空想上の産物を信じていたかと言うと、これは確信をもって言えるが最初から信じてなどいなかった。
テレビに出てくる自称・超能力者が披露する催眠術などにはトリックがあると理解していたし、小学生のころ、幽霊が見えるというクラスメートの発言で大騒ぎする連中を冷ややかな目で見ていたボクだけど――――――。
さて、謎の謎の古代文明や宇宙人、異世界人や超能力者、悪の秘密結社などが、この世に存在しないのだということに気付いたのは、相当後になってからだった。
いや、本当は気付いていたのだと思う。ただ気付きたくなかっただけなのだろう。
ボクは、心の底から謎の古代文明や宇宙人、異世界人や超能力者、悪の秘密結社などが、目の前にあらわれてくれることを望んでいた。
ただ、当たり前だけど、世の中の現実ってのは、厳しいものだ。
世界の物理法則がよく出来ていることに感心しつつ、いつしか、ボクはテレビのUFO特番やミステリー特集を熱心に観なくなっていた。
「宇宙人、異世界人、超能力者? そんなのいるワケないよね!(でも、ちょっとはいて欲しい……)」
みたいな感じで、最大公約数的なことを考えるくらいにまで、ボクも成長していた。
小学校を卒業する頃には、もうそんな子どもっぽい夢を見ることからも卒業して、この世の平穏さにも慣れていた。
そうして、たいした感慨もなく、動画の撮影や放課後のクラブ活動に没頭するようになり、高校二年生の夏休みを迎え――――――。
ボクは、不思議な体験をすることになった。




