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初恋☆リベンジャーズ  作者: 遊馬友仁
第四部〜ラムネ瓶の中のガラス玉はとても綺麗に見える〜
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第3章〜最も長く続く愛は、報われない愛である〜⑧

「ちょっと待ってくれ! この三人どこかで見たことあるぞ……」


 画像を見た瞬間、声をあげると、山吹(やまぶき)緑川(みどりかわ)もオレの発した一言に反応する。

 

「えっ、そうなの!?」


「ど、どこで見かけたんだ、黒田!」


 二人の問いかけに対して、オレは、必死で記憶をたどる。


(あれは、たしか、シロやテルと一緒に居たときだから……)


「そうだ! テルたちと緑川の家に行く前にすれ違ったヤツらだ! シロ……白草を見て、品のなさそうな表情を浮かべてたから間違いないと思う」


 そう断言すると、クラスメートの男子が、即座に応じた。


「佐藤と黒田が、僕の家に来た日と言うと……先々週の木曜日あたりか?」


 つぶやくように言った男子生徒の言葉に、今度は山吹あかりが反応する。


「そうだ! たしか、政宗(まさむね)たちが、最初にアタシに絡んで来たのも、2週間前の木曜の練習終わりだったハズ……」


 どうやら、オレの目撃情報と山吹の体験談のふたつを合わせた状況証拠は、一致しつつあるようだ。

 山吹によれば、同じ中学出身の政宗(ファースト・ネームかと思っていたら苗字らしい)、永井(ながい)二又(ふたまた)の三人は、二週前の木曜日、偶然を装うように下校時の彼女に声をかけてきたらしい。


 その日以来、毎日……というわけではないが、山吹あかりの下校時を狙ったかのように、不規則にあらわれては、声をかけてきたり、あるいは、ニヤついた表情のまま、少し離れた後ろを()けてきたりと、不可解な行動を取っているという。


「暗くなる時間だし、なるべく、一人で歩かないようにはしてるんだけど……アイツらのことだから、いつ、他のコたちに絡んでくるか、わからなくて……」


 男子のオレですら、あの三人のような奴らにつきまとわれたら、かなりのストレスを感じる。コミュニケーション能力に長けて、多くの生徒と話すタイプであるとは言え、女子の山吹にとってみれば、その心理的な負担は、なおさらのモノだろう。

 さらに、彼女には、バスケ部のメンバーに対する配慮もあるようだ。


「女子はもちろん、男子だって、アイツらと関わるのは、面倒なことになると思うんだよね……そうすると、もうバスケ部のみんなとは、一緒に帰らない方が良いのかなって……」


 そう言って、声のトーンを落とす山吹に、オレは異議を唱える。


「いや、この状況で、山吹が一人で下校するのは避けた方がイイ。聞いた限りの話しだと、山吹が一人になったら、どんなことをしてくるかわからないしな」


 そう言って、説得を試みるが、彼女はうつむきながら答える。


「でも、こんなことになってしまったのは、アタシの責任でもあるんだ……」


 トーンを一段と下げ、声を絞り出すように語る山吹。

 そんな彼女のようすに、緑川は、何かを問いたそうな表情ではあるが、口を開けないでいる。


「自分の責任って……山吹、なにか、あの三人の行動に心当たりでもあるのか?」


 ストレートにぶつけたオレの問いかけに、山吹あかりは、ゆっくりと首をタテに振る。


「春休みの終わりだったかな? 久々に中学の時のメンバーと再会して、その中に、あの三人も居たんだけど……そのときに、政宗が残りの二人とつるんで、ねちっこく『オレと付き合え』って言ってきたから、『いい加減しつこいな、アンタら()()()よ』って言っちゃったんだよね。アイツらは、そのことを根に持ってるんだと思う。前から、地元の高校に進まなかったアタシを良く思ってなかったみたいだしね……」


 彼女の話しを聞きながら、チラリと男子生徒に目を向ける。

 山吹の言葉に、グッと唇を噛んだ緑川の心情を正確に察することはできないが、今度もナニかを言いたそうな素振りを見せながら、口を開けないでいるクラスメートに代わり、オレは答えた。


「仮に、そのときの言葉が相手を怒らせたのだとしても、それは、山吹のせいじゃねぇよ。告白がうまく行かなかったのは、告白する側のアプローチの仕方が悪かったか、告白される側にその気がなかっただけってシンプルな理由だ。そんなことを逆恨みして、相手に復讐してやろうなんて考えるのは、最低のオトコがすることだ」


 そこまで言ったあと、最近、ともに時間を過ごすことが多くなった男子生徒に同意を求める。


「なあ、そう思うよな、緑川?」


 いきなりの問いかけに、引きこもり状態を脱して十日あまりの男子生徒は、一瞬、面食らったようだが、オレが送るアイコンタクトを察して、


「う、うん! 僕もそう思う!」


と、大きな声で同意した。


 同じ学年の非モテ男子二名の言葉が、どこまで山吹あかりに響いたのかはわからないが、それでも、彼女は、


「そっか……アンタたちみたいに、男の子がそう言ってくれると、ちょっと、ホッとするよ」


と言って、ようやく、かすかな笑みを見せる。


「とりあえず、今日も一人で帰るのはやめておいた方が良いと思う。頼りになるかはわからないが、今日は、オレと緑川をボディ・ガードとして雇わないか? 今なら、初回無料の特典つきだぜ? 時間は大丈夫だよな、緑川?」


 女子には軽めの口調で、クラスメートの男子には同意を求める調子でたずねると、山吹あかりは、感謝を示すように目を細めてうなずき、緑川武志は、「もちろんだ!」と、力強く首をタテに振った。

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