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初恋☆リベンジャーズ  作者: 遊馬友仁
第四部〜ラムネ瓶の中のガラス玉はとても綺麗に見える〜
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第2章〜先ずその愛する所を奪わば、即ち聴かん〜⑫

 これまでの経験がモノを言ったのか、緑川の本命と言って良い山吹あかり相手のルーティーンも、予定どおり進み出している。このあとは、オレの心配のタネでもある『イジリ』のパートに入って行くのだが……。


 ルーティーンの本番は、これからだ。


 4.これまでに行ってきた『イジリ』のネタから、1つを使ってターゲットをイジる。「君の鼻、笑うとピクピク動いてカワイイね」などと言って、それに気づいた友人たちと一緒に笑うこと。


 ターゲットの身体的変化を見逃さなかった緑川は、シロのルーティーンを忠実に実行する。


「山吹さん、ゴメン。鼻がヒクヒク動いて、不満だったよね。でも……カワイイと思うよ」


 まるで、少女マンガに出てくるイケメンキャラのような緑川のセリフに、山吹あかりは思わず赤面し、鼻を両手で覆う。その姿に、そばにいたバスケ部員と同様、緑川も表情を崩して笑う。


 5.グループ全体に自分の個性を見せる。持ちネタ、ギャグ、ちょっとした手品など、得意なことがなければ、スマホに写真を用意しておくのがオススメ。ここでも、対話の比重は、本人より他人に、女子より男子に置いておくべし。


「そうだ! 引き取る犬の写真を親戚に送ってもらってたんだ! 良かったら、ちょっと見てくれませんか?」


 そう言って、緑川は、スマホを取り出して、画像フォルダから親戚から送ってもらったと主張する犬の写真を渡辺先輩と吉井に見せる。


「お〜、フレンチブルドッグって言うんだっけ? カワイイじゃないか?」


「ですね〜。写真を見ると、似合う名前が思いつきやすいかも」


 男子2名の会話に、


「どれどれ〜? ホントだ〜! 2匹ともカワイイ!」


と、林先輩も加わってきた。そして、予想どおり、


「ちょっと〜! アタシにも見せてよ!」


と、山吹あかりも食いついた。


 6.用意したネタ(この場合スマホの写真)にターゲットが食いついたら、ふたたび彼女をイジるべし。

「おいおい、欲張りだな。そんなに強引に見ようとしないでよ。彼女は、いつも、こんな感じなの?」とグループの他のメンバーに問いかける。


 ここまでシナリオどおりの展開に、おそらく緑川本人も手応えを感じているのだろう。ふたたび、シロのルーティーンを的確に実行する。


「おいおい……欲張りだな。そんなに強引に見ようとしないでよ。山吹さんって、クラブでも、こんな感じなんですか?」


 緑川の質問に、部活の先輩でもある林部長が応じる。


「まあ。あかりは、いつもこんな感じだよね。もちろん、私たち上級生にも物怖じしない性格には、試合(ゲーム)で助けられることも多いけど」


 苦笑しながら答える先輩に、山吹は、


「ちょっと、先輩! それって、ちゃんと誉めてます?」


と、ツッコミを入れる。

 

 7.グループに「ところで、みんなはどうやって仲良くなったの?」とたずねる。もし、ターゲットが、その中の男子と付き合っていることがわかったら、どれくらい交際期間があるのかたずねてみる。二人が真剣に付き合っているようなら、丁寧に「今日は話せて楽しかった」と言って引き下がるべし。


 和やかな雰囲気が伝わったところで、緑川は話題を変えるように質問した。


「バスケ部は、男女ともに仲が良さそうだなって感じるんですけど、どうやって仲良くなったんですか?」


「ん〜、練習の準備と片付けは、男女で一緒にやってるし、みんな自然に話すようになる感じかな? ただし、みんな真剣に部活に打ち込んでるからね! 誰かと誰かが付き合ってるとか、そういうことは無いよ! 今のところわね……」


 最後に少し含みを持たせた表情で、林先輩は答えるが、どうやら、ターゲットの山吹あかりをはじめ、現在のブスケ部員同士に、男女交際のニオイは、無いようだ。

 これで、問題なく、13段階のルーティーンを継続することができる。

 

 8.ここで彼女がグループのトークに入りそびれていたら、グループの他の生徒に、「少し、意地悪をしすぎたみたいだ。ちょっと、彼女と話して来て良いかな?」と言ってみる。たいていの場合、「もちろん、どうぞ」という反応が返ってくると思う。ここまでのステップを忠実に守っていれば、ターゲットの彼女も話しに応じてくれるハズ。

 

「すいません……去年まで同じクラスだったから、山吹さんには、ちょっと意地悪をしてしまいました。時間があれば、彼女にもスマホの写真を見せてあげて良いですか?」


 緑川が、林先輩に提案すると、上級生は、その申し出に快く応じる。


「オッケー! 私たちは、黒田くんの取材を受けるからね。それが終わるまでは、あかりの相手をしてあげてよ」


 こうして、狙いどおり、緑川武志は、ターゲットの隔離に成功した。

 しかし、オレは広報部の部員としての役割を果たさなければいけない。


 このあとは、後に聞き取った緑川の証言をもとに、今回の活動の結果をみてみよう。

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